なぜ“無料”だと最高品質になり得るのか――国内ネットビジネスのフリーミアム戦略とはFREEMIUM HACKS!!(2/2 ページ)

» 2009年11月24日 18時45分 公開
[杉本吏,Business Media 誠]
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PCソフトは「Googleがお店」 フリーミアム戦略は検索結果に好影響

 IPAの未踏ビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞し、天才プログラマー/スーパークリエイターにも認定された杉山氏が解説したのは、無料の映像編集ソフト「LoiLoScope」。無料体験版を用意している最新ソフト「LoiLoTouch」は、Windows 7が標準でサポートするマルチタッチに対応しており、指を使って直感的な動画編集が可能だという。

LoiLoTouchのデモ。指を使って動画を切り貼りし、エフェクトも付けられる

LoiLoの杉山竜太郎氏

 一般に、ソフトウェアビジネスは「製品の新バージョンが出るたびに、ユーザーにお金をもらう」もの。しかしLoiLoでは、「最初に製品にお金を払ってもらったら、その後のアップデートは無料」という料金体系を採用している。

 「例えばWebサービスって、知らない間にどんどん機能が追加されていって、久しぶりにログインしたら『あ、なんか変わったな』って感じじゃないですか。それが当然というか、そういう考え方に自分自身慣れてしまったというのがありますね」(杉山氏)

 「PCのソフトって、iPhoneでいうApp Storeのような(世界規模で売買できる)お店がない。Googleがお店なんですよ。そして、ユーザーはググるときに絶対『フリー 動画編集』って入力して検索するんですよ。じゃあそこでLoiLoが一番になればいいのでは、と思って(ソフトの無償提供を)始めた」

無料だからこそ最高品質になり得る

ライブドアの田端信太郎氏

 ライブドアのメディア事業全体を統括する田端氏は、livedoor Blogの現状を解説。現在310万人のユーザーがいるというlivedoor Blogだが、有償プランのユーザー数は全体の1〜2%ほどだという。「ユーザーにとって無料で使えるというのはもはや当然のこと」と話す田端氏は、フリーミアムの考え方について「フリーというと一見“ただ働き”みたいな気がするが、ユーザーの意識はそうではない」と指摘。

 「例えばWikipediaとかブログとかって、ユーザーが自発的に書いているもの。ニコニコ動画の職人文化なんかもそうで、1円の得にもならないのによくやるなあと思うけれど、彼らはお金ではなくて、純粋に(その行為自体を)楽しんでいる。我々はそれを――『活用して』っていう言い方は嫌なんで、『おこぼれにあずかって』――ビジネスにしている」

 田端氏は前職のリクルート時代に、フリーペーパー「R25」の立ち上げにも関わっている。R25創刊の際に、田端氏が考えていたというビジネスプランの一端はこうだ(詳細は田端氏のブログで解説されている)。

  • 面白い雑誌を作るためには「編集コンテンツ費」(コンテンツの企画や作成のための費用)がかかる
  • 編集コンテンツ費は、どれだけ発行部数を増やしても(1部でも100万部でも)変わらない
  • ならば、思いきり大量に配布することで、1部当たりの編集コンテンツ費を薄めてやればいい

 大量に配布し、大量の人に届けるために、雑誌自体は無料にした。多くの人に読んでもらえれば、それだけ広告効果が上がり、広告単価が上がり、広告収入を上げられる。増えた広告収入を編集コンテンツ費に回せば、さらにコンテンツのクオリティを上げられる――というわけだ。

 「実際には、青二才が描いためちゃくちゃなモデルだった」(田端氏)。配布部数(リーチ)と広告価値が正比例する、というのが「机上の空論」だったからだ。しかし、現在のネットビジネスでは、「Googleの提供する検索エンジンやWebメールなど、無料“だからこそ”最高品質になり得る」。

(左)イベント参加者に配布するため、livedoor Blog PRO(有償プラン)の1年間利用無料クーポンを持参したという田端氏。気付けば壇上でも配布が始まっていた。(右)フリーペーパー創刊のために田端氏が考えたというプランの説明。左のグラフは通常の有償雑誌(田端氏曰く、「ありえないほどうまくいっている例」)を、右のグラフはフリーペーパー(「R25ではなく、あくまでも当時モデルとして想定したもの」)の収益構造を表している


 後編では引き続き、フリーミアムと相性がいいという「最大化戦略」や、無料の時代にも確実に存在するという「お金を払いたがるユーザー」についてのトーク内容をリポートする。

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