石川遼選手に学ぶ、部下や後輩を“プロ”に育てるヒント研修に行ってこい!

2009年も残りあとわずか。多くの企業は存続が厳しく、その危機感は2010年に向けて一層強まっています。新たな活路を切り開ける、人を引き付ける魅力ある人材の育成が急務。今回は、プロゴルファーの石川遼選手のエピソードから、部下や後輩をプロに育てるヒントを探しましょう。

» 2009年12月09日 19時15分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 師走に入り、2009年も残りわずかとなってきました。多くの企業は、現状維持では会社の存続が厳しく、その危機感は2010年に向けて一層強まっています。人材育成の側面から見ると、危機を乗り越えるためには、新たな活路を切り開ける、人を引き付ける魅力ある人材の育成が急務となっています。

 そのような時代の中で、先般世界史上最年少賞金王、最優秀選手賞などを含む9冠に輝いた石川遼選手は、人材育成の面からも学ぶべきものが多い選手として注目できます。今回は、石川遼選手のエピソードから、部下や後輩をプロに育てるヒントをご紹介しましょう。

リーダーとしても手本となる存在

 石川選手の特集記事や番組が多いので、石川選手の夢=世界一強くて、世界一好かれる選手になる、目標=マスターズで2度優勝する、などその時々に掲げているテーマや、日常心がけている行動習慣などについてもご存知なのではないでしょうか。

 ビジネスでも、成功するための法則にビジョンを掲げること、具体的な目標を持つこと、日常の思考と行動習慣を良質化することの重要性が説かれているので、多くのビジネスパーソンにとって、石川選手はゴルフという競技の面だけでなく、リーダーとしても手本となる存在かもしれません。

プロになるとは?

 『プロゴルファー 石川遼 夢をかなえる道 急がば回るな』(学習研究社)という子ども向けの書籍をご存知でしょうか? 小学生層を対象に、ゴルフ競技でプロになるとはどういうことか、プロになるための努力をするとはどういうことか、といった内容を石川選手のエピソードを通じて紹介しています。

 その書籍では次のようなエピソードを紹介していました。

 プロになると大変だぞ。だからやめておきなさい。

 これは石川選手のお父さんの言った言葉です。アマチュア選手としてプロの試合で活躍した2007年のシーズンが終わった時に、

 プロになったら、ゴルフだけをすればいいという状況じゃなくなる。ニッコリ笑いたくないときも、笑わなくちゃいけないこともある。お父さんくらいの年齢の人とゴルフをして、楽しんでもらわないといけない。すごく大変だ。だからやめなさい。

 とお父さんは伝えたそうです。

 しかし、「プロになる」という意思を変えない石川選手に対して、お父さんは、「お客さんと経済の話ができるか」「為替のレートはいくらか」など、どんどん質問していきます。高校1年生には難しいと思われることも、社会人になることの厳しさを教えることや本人の決意を知るために、何度も何度も話し合いを重ねていったそうです。

プロに必要な「覚悟」

 お父さんのこのエピソードは、プロを育てる上で最も大事な「覚悟を教える」という上で大変参考になります。まずは、今一度“プロ”とは何かを確認してみましょう。大辞林で調べて見ると、

 ある物事を職業として行い、それで生計を立てている人。本職。くろうと。

 とあります。

 どうやら、「職業として行い、それで生計を立てる=プロ」ということのようです。そのように考えてみるとわたしたち1人1人もプロと言えそうです。

 しかし、お父さんが石川選手に聞いたような「笑いたくないときでも、笑えるか」「お客さんと経済の話ができるか」という覚悟をして仕事に就いたかと問われると、そうでないかもしれません。

プロが育つ信頼関係

 部下や後輩にプロになってもらう「覚悟」をしてもらうためには、その前提として信頼関係が必要です。言葉でいえば簡単ですが、その難しさを痛感している人も多いのではないでしょうか?

 それでは部下や後輩が、上司や先輩を信頼するのはどのような時でしょうか? それについて、石川選手のお父さんからヒントを得たいと思います。

 石川選手がゴルフを始めたきっかけは、お父さんがゴルフ好きで、石川選手に遊び道具として大人用のパターを短く切り、空き缶をくりぬいて埋めたカップをつくってあげ、一緒に遊ぶところからスタートしたそうです。

 この点をヒントにすると、上司や先輩自身が仕事に楽しさや面白さを見いだしているかどうかが大事なようです。上司や先輩が仕事を嫌々やっているのに、部下や後輩がその仕事に楽しさや面白さを見いだすことは難しいですよね?

 しかし、組織の仕事というのは、自分がやりたい仕事ばかりができる訳ではありません。そこが、大好きなことでプロを目指せる石川選手とわたしたちの大きな違いになります。だからこそ、仕事に楽しさや面白さを見いだす想像力や工夫の余地があり、その差が個人の魅力につながっていくのです。

 部下や後輩にプロに育ってもらいたいという思いを持ち、育てていくためには、まず上司や先輩が仕事に対して楽しさ、面白さ、喜びを見出しているか、そこがスタートになります。もしすぐに思いつかないようであれば、次の点を自分自身に問いかけてみてください。

  1. この仕事は、誰の役に立っていますか?
  2. その相手に、どのようなメリット(利益や喜びなど)を提供できていますか?
  3. その相手から、どんな言葉を言ってもらえた時に喜びが感じられますか?
  4. 喜んでもらうために、どのような工夫をしていますか?
  5. 何に対して、「もっとこうしていきたい」「こうできないか?」と考えていますか?

 あまりにもシンプルな問いかけのため、頭の中ではイメージできるような気がしますが、意外にも言葉として表現しようと思うと出てこないものです。少し時間がかかるかもしれませんが、言語化できるまで、しっかり考えてみてください。

 これらを新しい手帳の1ページに書いておくのもいいでしょう。これが書けると、部下や後輩をプロに育てるための第一歩=信頼関係づくりのベースが完了です。

 自分たちの手で、新しい時代を切り開けるプロ人材の育成に向けて、取り組んでみてくださいね。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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