iPhoneユーザーは男っぽい? Touch the Numbersのテクノードに聞くiPhoneアプリビジネス最前線(1/2 ページ)

拡大を続けるiPhoneアプリ市場。連載「iPhoneアプリビジネス最前線」では、世界を相手に戦うiPhoneアプリビジネスの旗手たちに話を聞く。聞き手は、iPhoneアプリ向けの広告配信サービスなどを手がけるノボットの小林清剛社長。第2回は「Touch the Numbers」などを手がけるテクノードの水野代表取締役に聞いた。

» 2009年12月28日 12時00分 公開
[小林清剛(聞き手),Business Media 誠]

 iPhoneiPod touch向けアプリケーション配信サービス「App Store」は、サービス開始以来App Storeでリリースしたアプリが10万を超え、1カ月で6000万ダウンロード、3000万ドル(約33億円)の売り上げを達成したという。現在、さらに加速度的に広がりを見せるiPhoneアプリ市場。これまでの携帯電話向けアプリやコンテンツは国内がメインだったが、iPhoneアプリは全世界が対象だ。

 連載「iPhoneアプリビジネス最前線」では、戦いの舞台を世界に移した開発者やビジネスプランナーたちがどのような発想で、どのような仕事の仕方をしているかに迫る。聞き手は、iPhoneアプリ向けの広告配信サービスなどを手がけるノボットの小林清剛社長。



Touch the Numbers。番号順にタイルにタッチし、消していくだけの単純なゲーム。だがタイムトライアルには熱くなる。下部に表示しているのがGoogle AdSenseによるiPhone向け広告

 第2回となる今回は、日本にとどまらず、世界中のユーザーから愛されるiPhoneアプリ「Touch the Numbers」をはじめ、リリースするアプリのほとんどがランキング上位というtekunodo.(テクノード)の水野和寛代表取締役に聞いた。(以下敬称略)

小林 どうしてiPhoneアプリに参入しようと思われたのですか。

水野 もともと新しいもの好きで、新しいガジェットも好きという個人的な思いと、携帯事業を行っている立場としてスマートフォン事業に対して何かしらの感度がなくてはいけないという会社的な理由からです。社内的にも面白いものに積極的に取り組むことをバックアップするような風土はあり、コンテンツ事業として誰かがスマートフォンの分野をやらなきゃということで始まったんです。そして、気がついたらゲーム制作チームを束ねていて、現在に至る感じです。

 いちユーザーとしてもiPhoneアプリ市場は「どんどん新しいアプリが出てきて、新しい機能が追加されていく」ことが魅力です。昔のPCの盛り上がりに近い面白さがありますがありますよね。新しいWebサイトがどんどん出てきて、新しいサービスも増え、それが口コミで広がってみんなで盛り上がっていった――あんな感じです。仕事じゃない部分でも毎日アプリをダウンロードして使っています。ここ数年こんなことはなかったなあ。


テクノードの水野代表取締役

小林 携帯電話とiPhoneの違いをどう考えてますか。

水野 ユーザーが全然違いますね。携帯電話は女性がメインユーザーでメールが主力。コンテンツも口コミでバイラルが広がって人気が出ます。一方、iPhoneはPCのブログYouTubeの動画によってバイラルが広がっていく。口コミというよりはITリテラシーの高い人たちが「こんなの知ってるよ」と教え合うというところが最初の火付け役となった印象です。どちらかと言うとモバイルよりは元々PCでインターネットのサービスを利用していたような人たちが現在のiPhoneユーザーに近い気がします。携帯が女性だとするとiPhoneは“男っぽい”のかもしれませんね。

 ただ今後は、女性のiPhoneユーザーも増えてくると思います。現在、電車の中などで見かける女性のユーザーはどちらかと言うとスマートでクールな女性が多いと思いますが、それが、中高生のあこがれのモデルやタレントなどがテレビドラマなどで使ったりしてくると、一気に女性のユーザーも増えるのではないでしょうか。iPodがそうだったように、ファッションアイテムとして定着し、持ちたいと思われるようになるとユーザー層は変化してくるでしょう。そのときに女性向けにどのようにアプローチするか、どのように見せるかが大事ですね。

小林 Touch the Numbersなどのアプリがヒットしていますが。

水野 Touch the Numbersに関してはテクノードとしてリリースした最初のアプリで、正直プロモーションは一切しませんでした。このアプリでやろうとしたことは、シンプルなアプリを作ってみようということと、AdMobのアドネットワークを入れてみようという実験的な要素が大きかったので、売れる売れないといったことは考えていませんでした。リリースしたことすら忘れてたくらいなんです。

 リリースしてから1週間くらいして、App Storeのランキングを見たら上位に入っていたので、僕らが逆に驚きました。恐らく、ダウンロードしてプレイした人が口コミで広げてくれたり、ブログで紹介してくれたり、YouTubeでも3秒台というとてつもない記録の動画がアップされたりして人気が出たようです。それにAppBankなどのiPhone情報サイトに取り上げられたことで輪をかけて広がっていきました。


FreeDrumPad2。こちらは右上にAdMobによる広告配信

 Touch the Numbersのような無料アプリはまだまだ収益化できると思っています。現状、日本ですと広告を出稿するクライアントが少なく、難しい状況ではありますが、仮に広告出稿が十分にあるとすると、115円や0.99ドルといった有料アプリを販売するよりは、無料アプリでも継続的に収益をあげられるのではないでしょうか。例えば、「FreeDrumPad2」は米国向けに作ったアプリです。米国は日本と違い、広告枠もほぼ埋まっていますし、広告単価も日本国内の3〜4倍ですので十分な広告収入は得ることができていると感じています。

 豊富な資金力のある会社は別として、小さな会社や個人の方は、開発コストを抑えて、シンプルだけど継続的に遊んでもらえるアプリを考えるのがいいと思います。最初に無料で配って、ある程度長期間で回収していく方がリスクは少ないですからね。

 あと、これは僕のやり方になってしまうんですけど、少しでも収益につながりそうな会社とは積極的に会う努力をすることにしています。iPhoneアプリ用のGoogle AdSenseは、国内企業向けには窓口がなかったのですが、ぜひ導入してみたかったので、Googleの問い合わせフォームに「こんな会社をやっていて、このくらいPVがあって、興味があったら連絡ください」と入力しました。そうしたら、数日後、Googleからメールが来たんです。そこから話が進んで、国内で初めてGoogle AdSenseを導入したアプリを11月にリリースできました。

 広告モデルはまだ黎明(れいめい)期なので、どの広告ネットワークをどのアプリに導入するかというのが、収益化の上では、非常に重要な判断になるでしょう。いずれにしても、新しいことを早くやるのが得だとは思います。

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