「即興で謎かけ」の秘密――アドリブトーク力の身に付け方人を動かす話し方講座

最近わたしが関心を寄せている芸人さんは、Wコロンのねづっちさんです。彼はなぜ、あれほどまでに短時間で謎かけができるのか――その秘密を知れば、あなたのアドリブトーク力も大幅にアップするでしょう。

» 2010年02月02日 12時45分 公開
[水野浩志,Business Media 誠]

 今回は、最近テレビで目にするようになってきた、ある芸人さんのスゴ技を分析してみたいと思います。では、早速参りましょう!

謎かけ量産芸人・ねづっち

 最近わたしが関心を寄せている芸人さんは、Wコロンのねづっちさんです。人気番組の「爆笑レッドカーペット」や「アメトーーク!」などにも出てくるようになりました。

 この人のウリは、その場でお題を頂き、即興で謎かけをする、というもの。

 その場で誰かが

 「○○と掛けまして」


 と振ると、ほんの数秒で

 「整いました」


といい、すぐに

 「○○と掛けまして××と解く、その心は〜」


 と言うわけです。

 この、お題を出されてから“整う”までの時間の短さは、目を見張るものがあります。あまりに早いため、

 「もしかしたらテレビ局側でなんか仕込んでいるのかも?」

 と疑う人もいるかもしれませんが、彼らの活動のメインである、浅草の演芸場ではテレビのような仕込みはできません。そんな中で鍛えられている芸人さんですから、あの力は本物でしょう。

 では、なぜあそこまで素早く、アドリブで謎かけを整えてしまうのでしょうか。

 その秘密をわたしなりに紐解いてみると、おそらくは以下のようなことが彼の頭の中で起きているのではないかと思われるのです。

瞬時に謎かけを解く思考の秘密

 笑いの素人が謎かけを考える場合、おそらく多くの人は、

  • お題をもらったあとに、なんと解くか

 という事を、真っ先に考えてしまうのではないでしょうか。

 しかし、ねづっちさんはじめ、笑いのプロが謎かけをやっているところを観察していると、どうも、

 ・オチである「その心は〜」から考えている

 ように見えるんですね。

 つまり、「振られたお題に対して、オチをまず決めてしまう」わけです。その上で、そのオチにつながるようなものを「□□と解く」に持ってきて、謎かけを素早く完成させてしまうわけです。

 要訳すると、「Aと掛けてBと解く、その心はC」という謎かけを考えるとき、

  1. AにつながるCのオチをまず決める
  2. Cと関連のあるBを決める

 という考え方で謎かけを作っている、というわけです。

 この思考プロセスの方が、普通の人が考える「Aを振られたら、まずBを考え、オチのCをさらに考える」という思考プロセスと比べて格段に素早く、謎かけを完成できるのですね。

 しかし、ねづっちさんの謎かけを解くスピードには、おそらくはさらに秘密があります。

それは何かというと、

  • BとCの組み合わせストックを膨大に持っている

 ということ。

 彼の謎かけを見ていると、その場で考えているように見えますが、実はそうではなく、

  1. お題で振られたAのオチに使えるCをサーチする
  2. Cに紐付けされたBを引き出して謎かけを完成させる

 という事をやっているように私には思えるのです。だからあれだけ短時間で、振られたお題に対しての謎かけができあがる、というわけなんですよね。

アドリブトークは「思考プロセス」と「情報のストック量」が勝負

 こういったアドリブトークを見て感心する人の中には、「あれはきっと発想力が豊かな人なのだ」と思っていて、とても自分にはまねできないと考えてしまう人も多いのではないかと思います。

 でも、実はアドリブトークとは、上にも書いたとおり、あらかじめいくつか持っている思考プロセスと、情報のストック量で生まれるものであり、決して発想力のみで勝負しているわけではないんですよね。

 私自身も人前で話をする仕事に就いている関係で、アドリブで話すことも多々あります。でも、そのときに発想力に頼ってしゃべることはまずありません。

 頭の中に既に用意してある情報のストックから、目の前で起きている出来事に関連するものを選び、いくつかの思考プロセスを基につなぎ合わせて使っている、という感じです。

 このように、アドリブトーク力というものは「思考プロセスの習得」と「情報のストック」を持ってそれらを使いこなす訓練をすれば、誰でも身に付けられるものなんですよね。

 ですから、アドリブトークの力を身に付けたいのであれば、まずはその一歩目として、今回の謎かけトークの訓練をしてみてはいかがでしょうか。

 きっと、その訓練の中で身に付けたストックは、ほかのパターンのアドリブトークにも有効に使えますし、ひとつの思考プロセスを身に付けることができたら、それを足がかりに新たな思考プロセスも見つけられるようになりますから。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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