青色申告ソフトを画像で解説、確定申告マニュアル個人事業主もサラリーマンも読める「税金の話」(2/4 ページ)

» 2010年02月24日 09時02分 公開
[奥川浩彦,Business Media 誠]

個人事業主の確定申告

 個人事業主の確定申告も、国税庁のホームページにある「電子申告(e-Tax)」と「書面提出」で行える。

 「電子申告(e-Tax)」に関しては、2年前に書いた記事で、「普及率は2006年度(平成18年度)でたった2%。今後は、19年度3%、20年度8%、21年度22%、22年度50%と急激な普及を狙っているようだ。」と書いたのだが、現在どこまで普及したのかよく分からない。利用者へのインセンティブの5000円は、当初2年間で終了するはずだったが、現在も継続しているので、まだまだ普及が進んでいないのかもしれない。

 ネットで利用者の声を調べると、「e-Taxに挑戦したけど(処理が面倒過ぎて)挫折した」など、どちらかというと不満の声が多いようだ。電子申告には電子証明書が必要で、それを読み込ませるのにICカードリーダー/ライターを買う必要があったりする。証明書となる住基ネットカードの発行は有料で、かつ期限付きだ。地域によっては2回役所に行く必要があるなど、事前準備に手間がかかる。

 「書面提出」の場合はどうだろうか。試しに国税庁のWebサイトから「書面提出」のページを開いてみると、いきなり損益計算書の画面が登場する。これを見てすぐに記入できる人なら、同サイト内の「書面提出」(あるいは「電子申告(e-Tax)」)を利用すればいいだろう。

国税庁のWebサイトにある「書面提出」の画面

 筆者は何年か青色申告をしてきたので、とりあえず記入はできる。だが実際には、1000枚を超える領収書を仕訳し、入力して、車や水道光熱費など、仕事と家の経費が混在するものを振り分け(按分し)、この表に記入する数値を計算するまでが作業全体の9割以上だ。損益計算書に転記するのは大した労力ではない。

 つまり、ある程度の知識がなければ、そもそもここまでたどり着けないだろうということだ。国税庁のWebサイトにある「書面提出」は、税を理解して、入力、集計を自力で行った後、ここに結果を入力するだけの人が利用すればいいだろう。

 ということで、筆者のお勧めは市販の青色申告(確定申告)ソフトだ。サラリーマンの副業を申告するなら、ほかに方法もあると思うが、独立、起業したなら、市販ソフトを購入することが一番楽で確実だと思っている。

 青色申告ソフトは多数あるが、2年前の記事では市場シェアの高い「やよいの青色申告08」「みんなの青色申告9」「やるぞ!青色申告2008」の3製品を比較した。当時の最終的な評価は以下のようになっている。

  「やよいの青色申告08」 「みんなの青色申告9」 「やるぞ!青色申告2008」
購入価格 ★★★ ★★★★★ ★★★
無償サポート期間 ★★ ★★ ★★★★★
有償サポート料金 ★★★★ ★★★★★
初期設定のしやすさ ★★★★★ ★★★★ ★★
伝票入力 ★★★★★ ★★★★ ★★★
ヘルプ機能 ★★★★★ ★★★ ★★
決算処理 ★★★★ ★★ ★★★
初心者に親切 ★★★★ ★★★ ★★
サポート対応 ★★★ ★★★ ★★★★

 当時の3製品をざっくり評価すると、初心者向けは「やよいの青色申告」(弥生)、ランニングコストが安いのは「みんなの青色申告」(ソリマチ)サポートコストが安いのは「やるぞ!青色申告」(リオ)となる。

 現在各製品は「やよいの青色申告10」「みんなの青色申告2010」「やるぞ!青色申告2010」にバージョンアップしている。今回は「やよいの青色申告10」「みんなの青色申告2010」の2製品を紹介してみたい。

やよいの青色申告10(左)。実売価格8000円で、対応OSはWindows XP/Vista/7。みんなの青色申告2010(右)。実売価格7000円で、対応OSはWindows 2000/XP/Vista/7。

 「やるぞ!青色申告」は、筆者としてはお勧めできない理由がある。筆者は普段1920×1200ドットの画面で仕事をしているが、「やるぞ!青色申告」の操作画面は800×600ドットに固定されていて使いづらい。1024×768ドットで仕事している人なら問題ないかもしれない。

 では「やよいの青色申告10」と「みんなの青色申告2010」の価格やサポートを比較してみよう。

メーカー 製品名 実売価格 バージョンアップ 無償サポート
弥生 やよいの青色申告10 8000円 9450円 2カ月。電話不可、メール対応
ソリマチ みんなの青色申告2010 7000円 6300円 保守に加入で1カ月。電話、FAX、メール対応
みんなの青色申告2010(年間保守付きパック) 1万円 0円 保守付。電話、FAX、メール対応

 価格は「みんなの青色申告2010」の方が安い。特に年間保守付きパックは、翌年のバージョンアップを含んで実売価格1万円前後なので、1年分は実質5000円程度だ。青色申告ソフトは基本的に毎年バージョンアップをする必要がある。ほかのアプリのように、古いバージョンのまま使い続けることはお勧めできない。

 理由は毎年税制が変わるからだ。前回の記事で評価したときには、税率の変更、定率減税の廃止、減価償却制度の改正など、大きな変更があった。自分が関係するところに変更があると、古いバージョンでは計算結果が異なってしまう。表計算ソフトのように、どこかのセルの項目名やパーセントを自分で変更するようなことはできないため、各年度に対応したバージョンが必要となるわけだ。政権交代により、これから数年は税制が大きく変わる可能性もある。そうなると古いバージョンではそのまま確定申告はできなくなる。

 青色申告ソフトはサポート期間が1カ月、2カ月と短いのも特徴だ。サポートや保守の必要性は人それぞれだろうが、筆者自身はあまり必要とは考えていない。と言うのはサポートには制約があり、メーカーが回答できるのはあくまでソフトの使い方で、税務に関する質問には答えられないからだ。勘定科目や仕訳が分からない場合は税務署か税理士に聞くべきで、税務を理解した上でソフトの使い方が分からない場合だけ、メーカーサポートに質問できる。幸い、ネット上で検索すればほとんどの税務処理は回答が出てくる時代だ。たまに間違った回答も見られるが、自分で調べて解決できれば、サポートなしでも大丈夫だと思っている。

 ただし、「やよいの青色申告10」のトータルサポートでは、税理士・会計士事務所の協力による「仕訳相談サービス」を利用できる。さらにエクセルなど他ソフトへの対応や、PCハードウェアのトラブルにも対応するなど、従来にない踏み込んだサポートを展開している。価格は2万1000円と高めだが、PCに詳しくない方は、検討してみる価値があるかもしれない。

消費税8%時代の確定申告

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