給料のためだけ感動のイルカ(2/2 ページ)

» 2010年02月26日 23時00分 公開
[森川滋之,Business Media 誠]
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 「次は、いろいろと無駄な経費を削減するための手を打とうと思っていました。それが実現すれば、私の報酬の増加分なんかはすぐに元が取れると思いますが」

 「うーん。少し考えさせてください」

 「いや、考えるということは、私の評価がその程度ということでしょう。契約延長の話はなかったことに。これで失礼します」

 「いや、あの、ちょっと……」

 浩が言い終わる前に、浅田は部屋を出て行ってしまった。

 抜け殻のように一人ポツンと残された浩のそばに創業当時からの片腕である山口始がやってきた。

 「すみません。ちょっと立ち聞きしてしまいました。でも、これでよかったと思います」

 「なに! 何が良かったんだ! おまえに何が分かるんだ」

 しかし、分かっていないのは浩だったのだ。

 「後遺症」は、浅田が去ってからすぐに現れ始めた。浅田はたぶんこのことも予期していたのだろう。

 口コミやリピートが半分以下になった。残業による無理なローテーションで、サービスの質が落ちて、顧客満足度が下がったのが原因だった。

 さらに、強引なシェア拡大に競合他社は怒っていた。どの会社も申し合わせたように、アクティブ運送が競合だと分かると、赤字も辞さずに仕事を持っていってしまった。

 売上はみるみる落ちていき、そのうえ価格競争に巻き込まれて利益も目減りしていった。

 浅田にカモにされた。あいつは、最初からウチで無理やり実績を作って、他社に好条件で雇ってもらおうと思っていたんだ。浩がようやくこのことに気付いたのは、商店街がクリスマス一色になっていた頃だった。

 あとで分かったことだが、浅田はアクティブ運送での実績を上手くPRして、もっと大きな企業との契約を進めていたのだった。倍の報酬をふっかけたのは、すでにその企業との契約が決まったので、断るための口実であった。また、広告会社からもかなりのバックマージンを受け取っていたという噂も聞こえてきた。

 元々は社員を思って始めたことではあった。ただ、完全に方向を間違えていた。清美も中野税理士も始もみな分かっていたようだが、自分だけが良く分かっていなかった。それぐらい給料が少ないから辞めると言った社員の一言がショックだったのだ。

 間違いには気付いたが、これからどうすればいいのか、浩にはまったく分からなくなってしまった。

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著者紹介 森川滋之(もりかわ・しげゆき)

 ITブレークスルー代表取締役。1987年から2004年まで、大手システムインテグレーターにてSE、SEマネージャーを経験。20以上のプロジェクトのプロジェクトリーダー、マネージャーを歴任。最後の1年半は営業企画部でマーケティングや社内SFAの導入を経験。2004年転職し、PMツールの専門会社で営業を経験。2005年独立し、複数のユーザー企業でのITコンサルタントを歴任する。

 奇跡の無名人シリーズ「震えるひざを押さえつけ」「大口兄弟の伝説」の主人公のモデルである吉見範一氏と知り合ってからは、「多くの会社に虐げられている営業マンを救いたい」という彼のミッションに共鳴し、彼のセミナーのプロデュースも手がけるようになる。

 現在は、セミナーと執筆を主な仕事とし、すべてのビジネスパーソンが肩肘張らずに生きていける精神的に幸福な世の中の実現に貢献することを目指している。


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