あなたの仕事にデジタルペンを導入したら?デジペン・ビフォーアフター(2/3 ページ)

» 2010年03月29日 00時00分 公開
[Business Media 誠]

「紙に書く」に特化したTegakiPAD

こちらは「手書きダイレクト」

 「書くことに特化した」と言うのがゼブラが11月に発売した「TegakiPAD」だ。ゼブラというとボールペンで有名なペンメーカー。好きな芯を選べる「シャーボX」などが有名だ。そんなゼブラでも実は数年前からデジタルペンを開発している。

 ゼブラではこれまで「手書きダイレクト」というデジタルペンでPCの画面に直接書き込むという製品を販売していた。airpenなどと同じ超音波・赤外線方式で、画面の端に受信機を付けて利用するというものだった。

 超音波・赤外線方式は、デジタルペンと受信機があればどこでも利用できるが、欠点もあった。それは電波などのノイズによる干渉に弱いことと位置精度の問題だ。簡単なメモであれば、ちょっとした干渉や位置のずれは気にならないが、決まったマスにコメントを書くような業務用途では、こうしたポイントが大きな差になる。

 そこで新たに開発したのがTegakiPADだ。TegakiPADは、ゼブラがそれまで開発してきたデジタルペンとはコンセプトからして異なっている。手書きダイレクトは手書きのデータを直接PC上に表示していたが、TegakiPADではまず手元の書類に書き込むのことがポイントなのである。


ゼブラウイング事業部でTegakiPADの企画・開発を担当した中田さん

 ゼブラの中田裕二郎さん(ウイング事業部企画・販売課リーダー)はこう言う。「ユーザーにデジタルペンを使ってもらって分かったのは、利用する環境がいろいろあるということ。オーディオのようなノイズだけでなく、机にかぶさるように書いたりすると腕で受信機をさえぎってしまうこともある。オフィスだったら気をつけることで修正できるかもしれないが、自宅の環境だと牛乳をこぼしたり、ふんづけちゃったり(苦笑)。どんな環境であっても使えるデジタルペンじゃないと業務用に使っていくのは難しいですよ」

 そこでTegakiPADに採用したのが、ノイズに強く、位置精度が高いタブレットを使った電磁誘導タイプなのである。


「書くこと」にこだわり

タブレットとデジタルペン。USBケーブルでPCと接続
デジタルペン本体を同じゼブラのマルチペン「SARASA(サラサ)3+S」(手前)との比較

 利用は簡単。専用アプリ「TegakiPAD NOTE」(Windows 7/Vista/XP対応。要.NET Framework 3.5)とドライバをインストールしたら、タブレットをUSBケーブルでPCにつなげて、TegakiPAD NOTEを起動して使う。デジタルペンの大きさは、15.8×138ミリ(最大径×全長)と一般的な多機能ペンと同じくらい。重さは約28.3グラム(電池込み)と若干重めだが、握った感じはちょっと高級感のあるマルチペンといったところだ。ほかのデジタルペンでありがちな握りにくい形状だったり、ペン先が隠れてしまったりすることもなくスムーズに書き込めるのが印象的だった。

 デジタルペンに利用する電池は、単四形でeneloopなどの充電池も利用可能。電池寿命はアルカリ乾電池の場合、約6000時間駆動する。タブレットの大きさは、251×349×11.5ミリ(幅×奥行き×高さ)、重さは約576グラム。インタフェースはUSB 1.1。認識エリアは最大A4サイズで、一般的なリポート用紙やコピー用紙がそのまま使用可能。専用紙が不要なため、ランニングコストを抑えられる。金属製バインダーを付属し、厚み5ミリまでの用紙に書き込める。

 書き込みがなめらかなのは、解像度とサンプリングレートが高いため。解像度は2000lpi(line per inch)、サンプリングレートは秒間125回だ。価格は通常のA4タブレットと比べると半額以下の1万9950円に収めた。ただし、筆圧感知などの機能は搭載していない。なめらかに書けることにこだわったが、多機能ではなく、書くことに特化したシンプルな製品にしたのだ。

 「機能をいろいろ増やすと、ボタンなども増えてユーザーが思わず触っちゃう。そのため、書きたいときに書けなくなったとなりかねません」と中田さん。専用アプリのTegakiPAD NOTEでは、いわゆるペンタブレットの機能で代表的な機能である「ホバリング」(ペン先をタブレットから浮かせて画面のポインターだけを動かす機能)などを意図的に外したという(もちろん単体のペンタブレットとしても使用可能で、その際はホバリングも利用できる)。

PCの周辺機器ではなく、筆記具としてデジタルペン

TegakiPAD NOTEの画面

 TegakiPADはPCに接続したままでないと利用できないため、ついついタブレットのような使い方をしてしまいがち。つまり、手元ではなくPCの画面を凝視してしまうのだ。「アプリの画面は見ないで、紙を見て下さい」と中田さん。「普通に紙に書いてくれれば、しっかりPCにデジタル化されますよ」とデジタルペンとしての精度に自信を見せる。

 業務で利用する場合、紙のシートそのものが重要なことが多い。そうした場合、画面を見ながらでは肝心の紙のシートにしっかり書き込めない。「紙に集中させることが大事なので、視線が下に落ちなきゃいけない。だからPCと接続したタブレットの形を選んだんです」

 紙に書き込むというと、アノト方式も精度が高い。「アノトの良さは確かにあるけど、紙にアノトパターンが印刷されていなくてはならない。特殊な印刷でも問題ない用途は確かにあるが、TegakiPADは普通紙でも利用できることを選択しました」


筆圧は検知しないが、描線の太さは5段階で調整できる。色も選択可能。初期設定では白/黒/赤/緑/青/黄の6色を用意。保存形式は独自形式(TPN)か、JPG/TIF/BMPといった画像ファイル

デジタル化した画面(左)と、実際に書いた紙(右)を比較。紙は黒一色だが、軌跡の再現性は高い

書き込んだデータに、PCのスクリーンショットを組み合わせることも可能だ。PDFファイルの読み込みもできる

 PCの周辺機器というより、筆記具としてデジタルペンを目指したTegakiPAD。「デジタルペンという新しい商品にはシンプルさが必要です。営業マンに必要なのは新しい機械を使いこなすことではなく、営業力なのですから」

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