教育改革は“外”から――『教育×破壊的イノベーション』藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

「標準化」がキーワードであった従来の教育に対して、現代ではほかとの違い(付加価値)が求められ、人により学ぶべき内容は異なってくる。教育の「個別化」である。こうした教育の革命について描いたのが、クレイトン・クリステンセンの『教育×破壊的イノベーション』だ。

» 2010年04月16日 12時27分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 伝統的な大型コンピュータがパソコンに駆逐されたように、既存ではなく新規プレイヤーによって革命は実現する。この現実を理論化した名著が『イノベーションのジレンマ』。その著者であるクレイトン・クリステンセン教授(ハーバード大)が、教育の革命について描いたのが『教育×破壊的イノベーション』である。

教育におこる変化

 従来の教育のキーワードは「標準化」であった。同じ教育内容を、同じ年齢の子供に対して、同じ教室で同じ時期に行う。工場での大量生産に適した人材を育てるためだ。

 しかし、現代ではほかとの違い(付加価値)が求められ、人により学ぶべき内容は異なってくる。そもそも学び方や学ぶ時期も、最適な方法は人により違う。そこで必要になったのが教育の「個別化」である。


イノベーションルール

 従来の教育の延長線上では、教育の変化は起こらないという。教材作成、教師養成、指導、テストといった教育のプロセス(バリューチェーン)が確立されすぎており、その改善に止まってしまうからだ。

 クリステンセン教授によれば、世界中の人々はネットを介して共同学習ライブラリを作り始める。そうしたユーザーネットワークが公教育の蓄積をやがて超えた時に個別化教育が実現するという。

 父親母親から見れば、はじめ共同学習ライブラリは陳腐に見えたり、そもそも教育的に見えなかったりする。そのため学校側による取り込みは遅れてしまう。そのために、教育におけるイノベーションも公教育側から広がりづらい。教育の革命は、外側から近づいている。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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