ふたたび“遊び人”の時代へ――労働価値観が変革する今だから読みたい『ホモ・ルーデンス』藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

オランダの歴史家ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』で、人間とは本質的に“遊び人”であると見なした。「遊び」は人間の本質的な機能で、“真面目”に人類が生産性を向上させたことで、多くの人にとっては労働が必然でなくなりつつあるという。

» 2010年04月28日 12時27分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 オランダの歴史家ホイジンガによれば、「遊び」は人間の本質的な機能であるという。そうした人間観を示すためには彼は本著『ホモ・ルーデンス』を書いた。労働への価値観が変わりつつある現代において、再読するべき1冊だ。

「遊び」とは何か

 「非日常性」「無目的」「競争と表現」が遊びの特徴だという。ゲームを考えてみよう。

 日常とは異なる空間や時間を設定され、特殊な規則の中でゲームは行われる。ゲームそのものに目的はない。競争と表現によって喜びが得られるものだ。

遊びから真面目になった近代

 人間の文化的な営みの大半は、この「遊び」が原因であるという。

 裁判、戦争、哲学、芸術――。いずれも限られた空間や時間で執り行い、独特なルールに基づいて実行する。ホイジンガの歴史考察によれば、こうした営みは実行すること自体が目的であったという。人間の活動が合目的になってしまったのは、近代に入ってからだ。経済が社会を動かしているとの勘違いが起こり、真面目な市民的幸福が世界を覆ってしまった。

ふたたび遊び人の時代になるか

 “真面目”に人類が生産性を向上させたことで、多くの人にとっては労働が必然でなくなりつつある。ホイジンガは、人間とは本質的に“遊び人”(ホモ・ルーデンス)であると見なした。人生の目標なんて取り下げて、人の根源にあったはずの「遊び」を思い出す時期なのかもしれない。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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