ユダヤ人の思考法――地球上の0.02%がノーベル賞の40%を占める理由最強フレームワーカーへの道(2/2 ページ)

» 2010年05月10日 16時00分 公開
[永田豊志Business Media 誠]
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 また、日本人のように、同じ文化背景で生きてきた人間同士のコミュニケーションと違い、非常に細かくすべてのことを、論理的に確認し、議論を徹底的に行うという習性も独特のものです。以心伝心という名のもとに、ろくに確認もせずにプロジェクトを進めることなどありえません。1つ1つをしっかり確認し、「なぜ、そのようになったのか」を理解するまでゴーサインは出さないのです。

 日本人にとっては「そんなこといちいち確認しなくても分かってるだろ」と思うかもしれません。しかし、ユダヤ人は「知らないことはすべて聞く」というマインドが備えています。これは多言語多文化において国際取引を行う場合は、必須の姿勢とも言えるでしょう。

ロジカルシンキングと文書化が深く根付いている

 ユダヤ教の開祖とされるアブラハムも非常に論理的思考の強い人だったようです。

 ユダヤ教の経典は、古くから文書化されていました。タルムードと呼ばれる聖典は、単なる教えを伝えるのではなく、日常生活の細々とした規則について、なんと「議事録」的に記しており、参加者の討論を文書化しているのです。

 つまり、ユダヤ人は開祖から始まって、基本的にロジカルシンキング、議論(ブレインストーミング)が大好きな民族と言えるのです。わざわざ論理的に考える勉強をしなくても、それが当たり前になっているということなのかもしれません。

 これらを総合すると、英語を含む多言語に対応でき、ロジカルに物事を分析でき、チャンスをつかみ、リスクを管理しながら、顧客満足度を上げる方法……、つまりはMBAで学ぶようなことが民族の習慣なっていると言っても過言ではないでしょう。

マイノリティを強く意識することで、思考力がさえてくる?

 つまるところ、ユダヤ人に今日のような活躍をもたらした思考力の根底にあるものは、「マイノリティ」ということです。常に少数派であるから、多数派の言語や文化を学びつつも、交渉事において自分の主張を通す場合は、論理的かつ徹底的に議論し、主張を通そうとします。

 少数派であるからこそ、大局を観察し続け、変化やリスクを他人よりも早く察知し、時にチャンスをつかんで大きく勝負に出ますが、リスクを感じたらいの一番に、損切りしてでも手を引く大胆さ。世の中が短時間で大きく動く、現代にとって、どれも大切な能力ばかりです。

 日本人は幸運なことに、中途半端に大きな内需があり、それで商売をすればよかったのでこれまでマイノリティを感じる必要はありませんでした。しかし、世界から見ればやはり日本もマイノリティの1つでしかありえません。実際、欧米から見ているのは日本ではなく、中国や新興国です。これからは日本人も、もっとマイノリティ的な危機意識とロジカル思考に基づいた交渉力を身につけないと、世界に太刀打ちできないかもしれません。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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