Webサービス発ラジコン経由――iPhoneアプリ「TwitCasting」にたどり着いた赤松さんひとりで作るネットサービス【最終回】(2/2 ページ)

» 2010年05月14日 19時40分 公開
[田口元,Business Media 誠]
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 フレッシュミーティングでは「メールで招待する」といった機能をつけてユーザーを増やす仕組みを組み入れていたが、今はメールに頼る時代ではない。「Twitterのプラットフォームで広げればいい」と割り切ることにした。そのためにTwitterクライアント機能をつけてみるか、と思いついたのがTwitCasting誕生の瞬間だった。

TwitCasting
TwitCasting Viewer

 「実はこんなに流行るとは思っていませんでした」。リリース後の反響を見た赤松さんはそう教えてくれた。Ustreamに追いつければ、と考えていたが、日本語のインタフェース、Twitterとの連携、Joker Racerで培った遅延が少ない映像配信技術などが好評だった。トータルな使いやすさが話題を呼び、芸能人にまで使われるほどの人気となった。

「ライブ配信を開始するとTwitterに配信される『モイ!』というあいさつがうざい、などの苦情はあったものの(笑)、ユーザーの声を取り入れつつ着々とバージョンアップを重ねています」。当初配信時に強制的に投稿していた「モイ! TwitCastingでライブ配信しています」は自分で変更できるようになり(ちなみに「モイ!」はフィンランド語で「こんにちは!」の意味)、合言葉を知っている人だけにプライベート配信もできるようになった。さらにブラウザ経由でiPhoneからもTwitCastingの映像を視聴することも可能だ(Ustreamでは一部の認可済みチャンネルしか視聴できない)。

 今のTwitCastingの課題は「配信直後にいかに人を呼ぶか」という点だという。「TwitCastingで配信していることをTwitterに流したとしても、リアルタイムで見ている人は驚くほど少ないのです」。これまでのデータを見ながら赤松さんはそう気がついた。Twitterのフォロアーが100人いるからといって、100人がリアルタイムに見ているわけではない。「実際のところ、100人のうち80人はTwitterをすでにやめていて、20人は1日に数回しか見ないことも多いでしょう」、そう赤松さんは考えている。

 そこで先日リリースしたのが「TwitCasting Viewer(ツイキャス・ビュワー)」(iTunes)だ。このアプリを使えば、自分がTwitterでフォローしているユーザーがライブ配信を始めるとプッシュ通知で教えてくれるのだ。こうすることで「友達のライブ配信を見逃した!」ということがぐっと減り、リアルタイムのコミュニケーションがさらに活性化されるだろうと赤松さんは考えている。


 リアルタイムのコミュニケーションにこだわりつつ、映像配信のプラットフォームで足場を築いていくことがTwitCastingの当面の目標だという。フレッシュミーティング、Joker Racer、TwitCastingと、一見大きな方向転換をしつつも、すべての経験を現在の試行錯誤に活かしているのが赤松さんの強みである。幅広い知識と経験に裏打ちされた赤松さんのこれからに期待したい。

iPadにしか見えないが、もしかしてkindle?(なわけないよなあ)

オフィスの風景。いろいろなものがたくさんある
自作のサーバとラック。上にはゲルググなどの模型が
野望ポスター。数多くの野望を記していた……

「ひとりで作るネットサービス」について

 5年近く続いたこの「ひとりで作るネットサービス」連載も、今回で一旦終了となる。番外編も含め、50人以上のエンジニアを紹介させていただいた。連載途中から「いつかこの連載に出るのが目標です!」という声もいただき、多少なりともものづくりをする人を応援してこれたのではないかと思う。この連載は終了するが、これからもなんらかのカタチで何かを作り出す個人を応援していきたいと思う。


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