「新卒採用」はしない――安易なリストラはしたくないから堀江貴文に聞く【採用編】

社員の採用で重視していたことは「新卒採用」をしないこと。即戦力でもない人間に、卒業の1年前から内定を出すことはリスキー。最悪リストラを宣告せざるを得なくなることもあるからです。

» 2010年06月03日 22時32分 公開
[堀江貴文,Business Media 誠]
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まな板の上の鯉、正論を吐く ホリエモン108のメッセージ

この連載は書籍『まな板の上の鯉、正論を吐く』から抜粋、再編集したものです。最高裁の判決を待つ身ながらも活発に発言を続ける彼の頭の中に去来する思い。「クビにしないように採るのも企業の責任」「僕の経験上、返済できる金利の上限は5%」「今の日本は国家が借金したお金でGDPを支えている」「核武装して周囲に摩擦を生むくらいなら今のままで十分」――。その一部をご紹介します。堀江流思考のストレッチをお楽しみください。


社員を採用する上で、重視していたポイントは?

 まず、「新卒採用」を行わないこと。即戦力でもない人間に、卒業の1年前から内定を出すことはリスキーだし、どうしてもフレッシュな人材が欲しいのならば、18歳からでも十分働けます。新卒を大量採用するようなやり方では、後に企業の側からリストラを宣告せざるを得なくなることもあります。企業・被雇用者の双方のためにも安易な新卒採用は避けるべきです。

 膨大な選択肢の中から僕の会社を選んでくれて、採用したのだから、本当はすべての社員にできる限り辞めないでほしい。そう考え、遅刻が多すぎるとか、ミスで大きな損失を出してしまったとか、特別な理由がある社員に関しては、基本的に給料を下げることで反省を促していました。不祥事などでやむなく解雇した人もいましたが、それでもトータルで10人未満だと思います。希望退職を募ったこともありません。「クビにしないように採る」のも、企業の責任でしょう。

ゆとり教育について思うことは?

 最近、「ゆとり教育」の弊害が顕著に出始めているなと感じています。ゆとり教育は、従来の教育が詰め込み型で知識偏重のものであるとして橋本政権時に推進されました。キーワードは「笑顔」や「助け合い」です。いわば競争社会を否定し、小学校の運動会でかけっこをしても順位をつけないで、みんな仲良く一斉にゴールをしたりする。

 でも、競争を否定するゆとり教育で育った世代は、企業にとってはやっかいな扱いづらい存在になりえます。しかも人口はどんどん減っていますから、比較的簡単にすっと入社してきたりもする。競争を積極的に拒否した生き方は、草食系男子の出現やフリーターの増加とも少なからず関わっていると思います。もっとベンチャーのスターや起業のカリスマが出てくれば、子供たちも憧れるだろうし、努力して起業する文化も根付くと思うのですが。

 国としても「簡単に商売を始められちゃ困る」と考えて、システム的にもベンチャーをしづらい設計にしているんじゃないか、と勘繰りたくもなります。僕は、ゆとり教育が生んだ「なれ合い」のぬるま湯的社会ではなく、皆が切磋琢磨する「チャレンジしやすい」世の中をつくりたい。


文系/理系という区分をどう捉えていますか? 文系脳/理系脳という適性はあると思いますか?

 文系/理系という区分はナンセンスです。少なくとも大学の学部時代であれば一般教養的にいろんな学問に触れるべきだし、各種学問はいわゆる理系・文系の区別なく様々なスキルが必要になっています。

 例えば、考古学での年代測定には炭素等の同位体が用いられており、化学や物理の知識も必要になってきます。また人体の仕組みを知る必要もあります。それは医学の分野です。心理学では、精神医学や脳科学の知識が必要になってきます。コンピュータサイエンスなどは論理学的素養も必要でしょう。

 文系脳/理系脳という分類は、トンデモ科学に属すると思います。つまり、従来の分類は時代遅れで非科学的とさえいえる。これからの学問は専門化していくときに、より深くその分野の知識を総合的に吸収する必要が出てきます。東大はその点、日本の大学にしては珍しく一般教養課程が充実していますし、どの学類に入学しても各学部に進学するルートが用意されています。ナンセンスな文系/理系の区別をしていないため、入学できたら便利でしょう。

著者紹介:堀江貴文(ほりえ・たかふみ)

 1972年、福岡県生まれ。1991年、東京大学教養学部文科三類入学。1996年、東京大学在学中に資本金600万円で「有限会社オン・ザ・エッヂ」を設立。2002年、経営破綻した旧ライブドアから営業権を取得し、2004年、「株式会社ライブドア」に社名変更。同年6月、経営難に陥っていた大阪近鉄バファローズ(現・オリックスバファローズ)の買収を申し出たことにより、ライブドアとホリエモンの名前は一躍全国区に。2005年2月、ライブドアがニッポン放送の株主となり、フジテレビとの間でニッポン放送の経営権争奪戦が起こるが、4月には両者で和解。フジテレビはライブドアから1400億円でニッポン放送株を買い取った。2005年8月、広島六区から衆議院選挙に出馬し、亀井静香と一騎打ちになるも落選。2006年1月、証券取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕・起訴される。2007年3月、東京地裁で2年6カ月の実刑判決を受け、即日控訴。2008年7月、東京高裁は控訴を棄却。即日上告し、現在最高裁判決を待つ。現在、ロケット開発を手がけるSNS株式会社のファウンダー。


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