PDFをスリム化するソフト3種を比較する3分LifeHacking

PDFのファイルサイズを削減できるソフトは、実際どれくらいのスリム化が可能なのか。3種類のPDFファイルを用意してテストを行ってみた。

» 2010年07月26日 12時47分 公開
[kizuki,Business Media 誠]

 手元にあるPDFファイルのファイルサイズが大きすぎて、メールで送ったりWeb上で公開するのに差し支えることはよくある。しかしオリジナルのOffice文書がすでに破棄されてしまっていたり、あるいはドキュメントスキャナから直接取り込んだデータで原本はすでに存在しなかったりと、設定を変更して原本から再出力するのは困難なことがほとんどだ。せめてZIP圧縮して容量を減らそうにも、たいていの場合はファイルサイズに変化はない。

 こうした場合は、PDFファイルをスリム化するソフトを使って、余計なオブジェクトを削除したり、画像データを圧縮することによって、ファイルサイズを削減するとよい。原本ファイルがなくとも手持ちのPDFファイルをそのまま加工できるので、他人から渡されたデータであってもその場ですぐ加工できる。

 PDFをスリム化する機能を持ったソフトはいくつもあるが、実際に使ってみると特性がかなり異なる。今回は代表的なソフト3種類について、3種類のPDFファイルを用いてテストした。

サンプルPDFについて

 今回サンプルとして用意したPDFファイルは以下の通り。なお、サイズについてはいずれもNTFSでフォーマットしたWindowsのエクスプローラで表示されるサイズである。

  1. テキストのみ
  2. テキスト&画像
  3. 画像のみ

 (1)は、日本語のダミーテキストを貼り付けたWordファイルを、Acrobatの印刷機能を用いてPDF出力したデータだ。画像は一切含まれておらず、純粋にテキストのみのデータということになる。ビジネスシーンでは議事録のデータの形式に近いと思われる。サイズは217Kバイトだ。

 (2)は、テキストのほか図版やグラフを含んだPowerPointファイルから、Acrobatの印刷機能を用いてPDF出力したデータだ。プレゼン資料などに多い形式で、ビジネスユースで用いられるPDFの多くがこのタイプだろう。サイズは801Kバイトある。

 (3)は、印刷して配布したプレゼン資料をドキュメントスキャナで取り込んだPDFだ。透明化テキストなどは含まず、すべて画像データということになる。電子書籍の「自炊」データとも近い形式だ。サイズは16.482Kバイトある。

「PDF Cleaner」を使う

「PDF Cleaner」。ドラッグ&ドロップして「実行」を選択することでスリム化できる。具体的な処理内容も表示するので安心だ

 1本目のソフトは「PDF Cleaner」。ソフト添付の説明書によると、ファイルの内部から不要なゴミを除去して最適化を行うソフトとのこと。具体的には未使用および重複オブジェクトの削除、コメントやメタデータの削除といった項目が挙げられている。画像データの圧縮については言及がない。

実際に使ってみたところ、オリジナルファイルからの容量削減率は最大で2%で、あまり大きな効果が見られなかった。特に(3)はバイト単位では減っているものの実質ほとんど変化がなく、画像に対しては効果がないことが分かる。また、このソフトではAcrobat6.0以降の形式に対応しないため、現行のAcrobatの標準設定で出力したPDFデータでは利用できない可能性が高い(今回はこの制限にあわせてPDFを再作成し、テストを行っている)。

PDF Cleanerの結果
(1)テキストのみ 2%削減
(2)テキスト&画像 1%削減
(3)画像のみ 容量変化なし

本日のレシピ(その1)
ソフト名 対応OS 利用料 開発者
PDF Cleaner Windows XP/2000/Me/98 無料 papy氏

「PDF Slim」を使う

「PDF Slim」。ドラッグ&ドロップによってスリム化を行う。画質は4段階から選べるほか、モノクロ化のオプションも用意

 2本目は「PDF Slim」。マグノリアが無償で提供しているソフトだ。添付の説明書によると「PDFに含まれる高画質な画像を圧縮してPDFファイルのサイズを小さくする」とあり、前述のPDF Cleanerとはかなり性格が異なるようだ。

 実際に試した結果、(1)(2)ではバイト単位の変化しかなかったものの、画像中心の(3)においてはファイルサイズが半分以下にまで激減。画像の圧縮率を変えているようだが、見比べてもそれほど変化があるようには思えない。かなり使えるソフトという印象である。

PDF Slimの結果(普通モード)
(1)テキストのみ 容量変化なし
(2)テキスト&画像 容量変化なし
(3)画像のみ 54%削減

 また、上記は「普通」のモードだが、さらにファイルサイズの削減が見込める「低画質(高圧縮)」モードでも試してみたところ、(1)(2)はやはり変化はなかったものの、(3)ではなんと80%近い容量が圧縮できた。ただし画質はかなり低下するため、せいぜい自分用、もしくは社内など身内での閲覧にしか使えそうにない。対外公開を前提にするなら、上の「普通」にとどめておいたほうがよさそうだ。

PDF Slimの結果(低画質モード)
(1)テキストのみ 容量変化なし
(2)テキスト&画像 容量変化なし
(3)画像のみ 79%削減

「PDF Slim」の標準モードでスリム化したPDF(左)と、低画質(高圧縮)モードでスリム化したPDF(右)。低画質(高圧縮)モードでは元ファイルの80%ものスリム化が可能だが、色数が大幅に減るなど、対外公開にはあまり向かない

本日のレシピ(その2)
ソフト名 対応OS 利用料 提供元
PDF Slim Windows 7/Vista/XP 無料 マグノリア

「Adobe Acrobat」の「ファイルサイズを縮小」機能を使う

「Adobe Acrobat 9 STANDARD」。「ファイルサイズを縮小」機能を使うことによってPDFのスリム化が可能。複数ファイルの一括変換も行える

 最後に紹介するのは本家の「Adobe Acrobat」。単体で買うと3万円台と高価だが、PFUのドキュメントスキャナ「ScanSnap」などにスタンダード版が標準添付されているのはご存知のとおりだ。

 「Adobe Acrobat 9 STANDARD」には「ファイルサイズを縮小」という機能があり、この機能を使ってPDFの容量を削減できる。実際に試したところ、前述のソフト2本ではほとんど変化のなかった(1)(2)でそれぞれ11%と43%のファイル削減、さらに(3)に至っては80%近い容量が削減できた。さすが本家、と言っていいのかどうかは分からないが、効果は絶大だ。

Adobe Acrobatの結果(低画質モード)
(1)テキストのみ 11%削減
(2)テキスト&画像 43%削減
(3)画像のみ 79%削減

 ちなみにこの(3)については、奇しくも削減後のファイルサイズが「PDF Slim」の低画質(高圧縮)モードとほぼ同じなのだが、画質を比較すると「Adobe Acrobat」経由のほうが圧倒的に美しい。「PDF Slim」の標準モードとほぼ同等にみえる。こちらであれば対外公開にも使えそうだ。


「ファイルサイズを縮小」機能でスリム化したPDF(左)と、「PDF Slim」の標準モードでスリム化したPDF(右)。画質はほぼ同等だが、ファイルサイズは左のほうが半分以下で、Acrobatを使ったほうが効果が高いことが分かる

本日のレシピ(その3)
ソフト名 対応OS 利用料 提供元
Adobe Acrobat 9 STANDARD Windows Vista/XP 3万6540円 アドビシステムズ

まとめ

 以上ざっと見てきたが、Adobe Acrobatを持っていれば、迷わずAdobe Acrobatの機能を利用すべきだろう。持っていない場合はフリーで使えるPDF Slimの標準モードがおすすめだが、テキスト主体のファイルには効果が見込めないようなので、その場合はPDF Cleanerも試してみるとよさそうだ。PDF Cleanerは今回のテストではあまり芳しい結果ではなかったが、あるテストでは30%前後ファイルサイズを削減できたという話もあり、試す価値はありそうだ。

 なお今回は、JPG圧縮やフォント埋め込みなど詳細なパラメータの変更を行わず、デフォルトのメニューを中心にテストを行った。またテキスト系がことごとく文字化けした海外製ツールの結果は除外している。もっといい方法やツールをご存じの読者ははてなブックマークTwitterなどでお教えいただきたい。

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