ゴールはどこだ!? 話が本題からそれる会議に対策は?マグロ船会議術(2/2 ページ)

» 2010年07月28日 19時00分 公開
[齊藤正明,Business Media 誠]
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会議の前に資料を配る――90点

 会議の直前でも構いませんので、「今日の会議は、何についての結論を得たいのか?」ということを、紙にして配りましょう。紙にしておけば見返すことができますので、メンバーの1人1人が気をつけるようになります。

 これはサッカーでたとえるならば、“ゴール”の場所をみんなに見せること。サッカーはゴールにボールを入れるために、みんなで球を蹴り合っています。どこにゴールがあるのか分からないまま、サッカーをするなんてありえまえせん。

 でも会議ではなぜか、“ゴール(何が決定すれば会議が終了するのか)”を設置しないで試合を始めているサッカーになりがち。会議の始まりに口頭で伝えることもいいですが、会議の参加者はビックリするほど早く忘れ去ります。会議中、話している内容に気をとられてしまうからでしょう。

 うまく舵取りをせず放置してしまうと、参加者はその瞬間に気になったことを次々と議題にしてしまうため、「色々話し合ったけど、結局何も決まらなかったね」という事態になりがちです。ですからこうした課題設定は、紙に書いて渡しておくほうがよいでしょう。

 ある企業の会議をオブザーブしていたときの会議のテーマは、「フランス人にどうやったら自社の商品を買ってもらえるか?」でした。だんだん話が脱線してきたのですが、オブザーバーだったので、黙って聞いていました。

 すると最後の方は、「俺の前世はフランス人だった」という話になってしまい、何の会議だか、さっぱり分からなくなってしまいました。……さすがにこの事例はかなり極端ではありますが、似たようなことは往々にして起きています。

本筋からそれたらいったん止めるか、そしらぬ顔で議題に戻す――50点

 話が本当に議題にしたいものより逸れてきたら、「それは今回の会議とは別の話ですよね?」と言って、議論を戻すことは正しいです。しかし、この方法は失敗する確率が高いと思います。会議の場で、いったんノッてきてしまった話を戻そうとすると、周りにとっては水をさされた気分になることがあるからです。

 参加者の中での立場が上のほうの場合は有効かもしれませんが、若い人がやった場合は、「んなこたあ、おまえに言われなくても分かっとる!」という目で見られる可能性があります(でも、実際には分かってないと思うのですが……)。

挙手制にして、関係のない発言はすべて禁止する――20点

 挙手制にすれば、確かに会議は脱線しにくくなります。発言をするまでにハードルがありますから、メンバー1人1人が自分の発言を吟味して発言するからです。しかし、このハードルが逆に仇となり、盛り上がりに欠ける会議になりがちです。

 会社員時代、わたしも挙手制の会議を試したことがあるのですが、手を挙げてから指されるのまでの時間は、体感的にはとても長いものです。それに、せっかく盛り上がりそうな雰囲気になったときも、その勢いを殺してしまうために、イライラしました。

ゴールを決めた上でほかの議題に変更するのは?

 「何についての結論を出す会議なのかを会議前に決めるのはいいけど、話し合っている最中に、もっと大事な議題を見つけたらどうするの?」と聞かれることがあります。その場合は会議中に思いついた「もっと大事な議題」について話し合って下さい。

 「勝手に話があらぬ方向に飛んでしまう」のと、「あらかじめ“ゴール”を決めた上で違う議題に変更する」のはまったく違います。「勝手に話があらぬ方向に飛んでしまう」のは、単なるフーテンです。

 しかし、「あらかじめゴールを決めた上で違う議題に変更する」というのは、「最初に決めたゴールより、今思いついた議題の方が大事だよね」という“比較”があった上でのことですから、変更をしてもいいのです。

 ですから、まずは1行だけでも構いませんので、「今日の会議は何が決まったらいいのか?」というのを書いた紙を参加者に配っておきましょう。

編集部からのお知らせ

 この連載は、「@nifty ビジネス」で連載中の「今日からなれるファシリテーター 〜荒波を乗り越えるマグロ船会議術〜」から抜粋、再編集したものです。


筆者紹介:齊藤正明(さいとう・まさあき)

 ネクストスタンダード代表。1976年東京生まれ。北里大学水産学部卒。大学卒業後、民間企業の研究所に入社し、「マグロの保存剤」の開発に携わる。

 入社2年目のとき、上司から「マグロの保存剤の開発を成功させるには、お前は一回マグロ船に乗ってこい」と理不尽な命令をされるも、断りきれずマグロ船に乗せられる。

 嫌々乗ったマグロ船であったが、人間関係がギスギスしやすい閉ざされた空間だからこそ、素晴らしいコミュニケーション術がたくさんあり、笑顔で働く漁師たちに感銘を受ける。

 マグロ船を降りたあと、漁船での体験を元にファシリテーション術を自社に導入し成功。その後独立し今に至る。代表著書に『活きのいい案がとれる!とれる!マグロ船式会議ドリル』(こう書房)『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイコミ新書)がある。雑誌などの掲載多数。


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