片付けや整理整頓が苦手な人は多いのではないでしょうか。頭の整理も同様で情報収集には意欲的なのに、それをコンパクトにまとめるのは難しいものです。さて今回は、こうした情報をどうやって整理するのか、考えてみましょう。
片付けや整理術に関する本が話題になっているらしいです。Amazonでも、こうしたジャンルの本が上位にランクインしており、知人の編集者によれば「片付け」というテーマは出版業界では鉄板だとか。潔癖性と言われる日本人ですが、意外に片付けが苦手な人が多いということの証なんでしょうか。
さらにリアルな片付けだけでなく、頭の整理が苦手な人も多いようです。情報収集には意欲的なのに、それをコンパクトにまとめるのが下手な人、情報があっちこっちに散らばっていて、収拾がつかなくなっている人は少なくありません。こういう人の話を聞くと、結局何がポイントなのか分からずイライラしてしまいます。
ここで、モノを片付けるのと情報を片付けることの共通点を考えてみたいと思います。
まず、整理の出発点は必要なものと不要なものに分別すること。モノが片付けられない人の多くが、不要なものを必要なものと混在させて、そのまま放置してあります。そのため、必要なものを取り出すときに余計な時間がかかり、無駄な労力を費やします。
「1シーズン着なかった洋服は容赦なく捨てるべき」というアドバイスをよく耳にします。実際に、これを行うとかなりの洋服が対象となったりするわけです。わたしたちは、ものすごい量の不要なものと暮らしているのであります。
必要なものと不要なものとの分別は、情報の整理においてはさらに困難な作業。なぜなら、今や情報の入手コストは限りなくゼロに近いため、誰にでも天文学的な量の情報を手にすることができるからです。テレビや新聞などのレガシー型マス媒体に加えて、ブログ、Wikipedia、Twitter、2ちゃんねる、YouTubeなど情報の入手先には際限がありません。そして、これらの情報をなんらかの目的のために整理するなんてことは、いくら時間があっても足りません。
もし、頑張って必要なものと不要なものとに分別できたとしましょう。しかし、これで終わりではありません。次に、同じ目的のもの、似たもの同士などをまとめて「グルーピング」する必要があります。モノであれば、工具類などをまとめて、工具箱の中にしまう、そんな片付けが必要です。そうしないと、いざ使おうとするときに、とても不便ですし、最悪どこかに散在して見つけられなくなるかもしれません。
情報においても同様。情報の大海の中から取り出した断片情報から、使えそうなものを残し、それを目的別にまとめてラベルをつけてしまいこむ作業は、大変骨の折れるものです。
ちなみにわたし自身は片付けがまったく得意ではありません。さらに言うと、片付けなくても、片付いたのと同じ効果が得られることを望むナマケモノです。片付いた状態と同じ効果……?
それは、必要なときに必要なものがすぐに取り出せるということです。
どういうことかと言うと、家の一部を修理するという目的には、工具箱さえあればよいということです。1から工具を整理することを考えるよりも、まず工具箱を買ってくるということが大事なんです。そして、工具箱におさまるべき工具を見つけて、入れていくのです。工具をいきなり整理するのではなく、工具箱におさまるべきものを探すという、逆のアプローチです。
箱に入らなかったものは、不要であるという考えです。多すぎるモノを1つ1つ取り上げて、要不要を判断する必要はありません。工具箱があらかじめ必要なものを要求してくれるからです。
情報の整理においての工具箱、それは「フレームワーク」です。フレームワークは、思考の型ですが、経済学者や有能なコンサルタント、経営者が長年の経験や英知をつぎこんで完成させた「究極の金型」です。知のマスターたちが作りあげた、この金型は、素人でも効率よく、高い品質のものを作ることができます。しかも無料です。
別の言い方をすれば、フレームワークは黄金の工具箱です。つまり、わたしたちは、この黄金の工具箱に合う工具や部品を拾い集めるだけで、ベストなチョイスができるということになるんです。
フレームワークは、企業戦略、業務改善、商品開発、マーケティングなどさまざまな目的に合わせたものが、誰でも無料で使えるます。フレームワークは、数百ありますが、別に覚える必要はありません。どのようなものがあるのかをざっと把握しておけば、後は必要なときに取り出せるようにしておくだけ。わたしもわたし自身のために、フレームワーク辞典を作ろうとしたのが、わたしの最初の本『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』の出版につながりました。
そうすることで、不要な情報で頭がもやもやしたり、無駄な情報整理に労力を費やすことはなくなり、一番大事な創造性を発揮するプロセスに全力投球できることでしょう。
本連載は、6月26日発売の書籍『結果を出して定時に帰る時短仕事術』(ソフトバンククリエイティブ刊)から抜粋・再編集したものです。
残業ゼロで成果を倍増する仕事効率化術――。と言っても、単に効率化だけではダメ。人生の価値マネジメントから始めるタスク管理としくみ作りを実践しましょう。「ワークライフバランス」と言っても単に時間バランスだけとっても意味はありません。
ビジネスパーソンは、顧客の要望を上回る成果を出しながらも、自分の時間をしっかり確保して、プライベートの充実と自分の付加価値を高めるための将来に向けた事故投資を両立する必要があります。
本書は、しっかり結果を出しながらも、将来の自分価値を高めるための「時短仕事術」を紹介しています。人生の価値感管理から日常生活のタスク管理まで、生産性戦争に打ち勝つためのテクニック満載です。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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