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» 2010年10月14日 19時20分 公開

手帳2010:iPhone時代の手帳の姿が見えた!? 若越印刷のPLAYOFF

いつでもどこでも情報を参照できる携帯電話やiPhoneに代表されるスマートフォン。当然手帳の役割も変わってくるはず。iPhone時代の手帳はどうあるべきだろうか――。

[舘神龍彦,Business Media 誠]
若越印刷が手掛けてきた手帳(同社Webページより)

 いつでもどこでも情報を参照できる携帯電話やiPhoneに代表されるスマートフォン。当然手帳の役割も変わってくるはず。iPhone時代の手帳はどうあるべきだろうか――。

 そんな問いの回答の1つが若越(じゃくえつ)印刷の新しい手帳「PLAYOFF」シリーズだ。

 若越印刷と聞いてピンとくる人はかなりの手帳通だろう。国内の大手手帳メーカー各社の手帳製作を請け負っており、その歴史は長く、創業は昭和22年(1947年)にさかのぼる。今までは、他社ブランドの手帳製作を行ってきたが、2011年からは満を持してオリジナルの手帳を発売する。それが新しい手帳ブランドのPLAYOFFなのだ。

大人向けのシックな手帳

スクエアな「across」、A6版の「Seagull」、横長の「dinon」の3サイズで展開

 PLAYOFFは3サイズで展開する。詳しくは下表を見ていただくとして、ここではシリーズ全体に共通する特徴を挙げていこう。まず目を引くのが「D-emboss」と呼ばれる、光沢のあるカバーだ。これは2つのビニールを重ねあわせて作られたもので、華やかさの中にもシックな印象だ。

 手帳を開くと記入欄のすっきりした面があらわれる。重視したのは「書くスペースの確保」だという。罫線の太さを調整したほか、スケジュールの欄外に記入できるスペースを取っている。

PLAYOFF
タイプ 判型 サイズ(ミリ) 記入欄バリエーション(週間) 価格
Seagull A6縦型 148×105 バーチカル、レフト、ボックス 1260円
dinon B6横型 128×182 バーチカル、レフトバーチカル 1680円
across スクエア 160×148 バーチカル 1575円

 顕著なのは、B6横型のdinonシリーズだ。レフトバーチカルと呼ばれるタイプでは、見開き1週間なのだが、バーチカルは左ページのみ。右ページはなんと白紙ページなのである。スケジュール欄以外の記入面を最大化したわけだ。このほか、文庫サイズのA6縦型のSeagullでは、ボックス型と呼ばれるレイアウトを採用。これは、見開きページを上下縦横のブロックに8分割。上段左上のブロックをメモ欄に、続く上段左から月、火、水を配置。下段左から残りの曜日を右へ木、金、土、日と配置した。


(左)写真はSeagullシリーズ。新加工技術、D-embossによる独特の光沢が確認できる。色バリエーションによって表情が変わる。(右)Seagullのボックス型レイアウト

 フォントは「フルティガー」を採用した、Adrian Frutigerという著名な書体デザイナーが制作した書体。現在は世界中のサイン書体として使われてたり、国内でもJRの番線表示の数字がフルティガーを使っている。元は1960年代にフランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港のサイン用書体として制作したという。

 また刷り色はオレンジとスミを採用。色覚の弱い方にも判読性の高いことからオレンジが使われたという。ページの紙は目に優しいオフホワイトの紙が使われている。

iPhone時代の手帳

 このすっきりした感じは、シリーズ全体に通じる。週間予定欄には、日付の数字と英字の曜日表記、それに国民の祝日のみ。月齢や旧暦といった情報は含まれていない。月間ブロックページに六曜がある程度だ。

 また、普通の手帳によくある巻末の便覧を割り切ってなくしたのも特徴の1つだ。明治時代の懐中日記から現代のビジネス手帳に至るまで、巻末の路線図や度量衡一覧、年齢早見表などがついていた。これら巻末の便覧を“参照して調べる”ためにも手帳は使われていたのである。

 ところが現代では、スマートフォンや携帯電話で知りたい情報をカンタンに探せる。路線図や度量衡はもちろん、月齢や旧暦などの暦関連の情報をフォローするiPhoneアプリもある。だから手帳巻末の便覧の必要性は相対的に低くなっているわけだ。

 そしてPLAYOFFでは、こうした便覧の代わりに方眼とドットのメモページを増やした。つまりPLAYOFFシリーズは手帳を情報の参照手段ではなく、予定やメモを記入するためのもの、いわば情報の記録に特化させたものとしてとらえている。

 情報の参照ではなく、記録に特化する傾向は以前からあった。例えば、大手手帳メーカーでも、別冊のアドレス帳を廃する例は増えている。これは電話番号や住所といった情報が、手帳に記録するものから、PCや携帯電話に入力して参照、場合によっては印刷するものに変わってきていることの反映である。

 PLAYOFFはこの傾向をさらに進め、アドレス帳はもちろん、便覧をなくした。さらにスケジュール欄も曜日や祝日など最低限の情報に押さえることで、手帳を“書く道具”に特化させている。それはまた、情報の参照と入力の手段が、手帳だけだった時代からスマートフォンや携帯電話も併用することになったことの反映の結果としての必然である。

 PLAYOFFのシリーズは、iPhoneに代表されるスマートフォンの時代に手帳とはどうあるべきかという問いに対する1つの回答だと言えそうだ。

著者紹介 舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。


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