全文公開! Ustream初出演、池上彰さんの仕事術(前編)Real Time Webな働き方(2/4 ページ)

» 2010年11月11日 15時10分 公開
[鷹木創Business Media 誠]

たくさんの仕事、どうさばいている?【6分31秒前後〜】

津田 皆さんとても知りたいと思うんですけど、普段からお忙しくて、どういうタイムスケジュールとか……。あ、そもそも根本的なことなんですけど、NHKを辞めて、フリーになって、事務所とかそういったところが(池上さんのスケジュールを)マネジメントしているんですか?

池上 本当にどこにも所属していません。

津田 本当に1人でフリーランスなんですか。

池上 ただまあ、家の近くに仕事場を借りて、そこで原稿を書いています。仕事場って言っても、要するに本の置き場なんですけれど。家に本を置くスペースがなくなっちゃったんで、本を置く場所として仕事場を借りて、そこで原稿を書いていますね。

津田 普段そのじゃあスケジュールで、テレビに出てくださいとか、こういう新しい本を書いてくださいとか、いろいろな依頼が来ると思うんですけれども、どうやって日常的に処理をするものなんですか?

池上 まずはですね、わたしの連絡先を明らかにしていないんですよ。

津田 おおー、なるほど!

池上 ええ。だからほら、なまじ事務所に入ったりすると、わたしの連絡先が分かっちゃうでしょ。そうするといろいろと仕事が来て、面倒くさいので。

津田 ははは! 面倒くさいんですね。

池上 はい。なので、まあ今回この番組にでることになったのは、どうしてもわたしのメールアドレスを知っている人から「出てよ」って言われたから。

津田 (その人が)メールアドレスを漏らした?

池上 漏らしたんじゃなくて、ちゃんと知っている人がいて、頼まれたから出たんですけど。基本的にまずそこ(連絡先を教えないこと)で、淘汰できるんです。そうすると、どうしてもいろんな手練手管を使って、わたしの連絡先を知った人から連絡が来ると「あ、何としても仕事をやりたい人なんだな」と、そこである程度分かりますし。

津田 最初にそういう壁を作っておくことで、(その壁を)乗り越えた人だけと仕事の話をしようという。

池上 そういうことですね。

コンビニおにぎり、駅そば――ランチが庶民派の理由【8分05秒前後〜】

津田 普段日常的なスケジュールの管理はどうしているんですか?

池上 あの、手帳です。

津田 アナログな。

池上 極めてアナログな、この手帳です。(手帳を2冊取り出して)これが今年の手帳、これが来年の手帳。

津田 なんかちょっと問題ないところを見せてもらえますか?

池上 いえ、問題あるところばっかりです。

津田 そうですか、ははは!! 手帳にはスケジュールばかりなんですか?

池上 それじゃあ問題ないところは(2010年の手帳を見ながら)……ないよな。来年の空白のところを出しましょうか。ええと来年の4月下旬はまだ何も書いてないんですが、(2011年の手帳を見開きで見せながら、向かって左側から)こういう風に日付がありましてね、右側が空いているでしょ。そうすると左側にまずそれぞれの時間に合わせてスケジュールを組んでいくわけですよ。(左側のページを指でなぞりながら)何時にどこで、どこそこの出版社の編集者と会うとか。どこのテレビ局との打ち合わせをするというのはこっち(左側)に書いておくわけですね。(続いて、右側のページをなぞりながら)こちら側はそれ以外のプライベートな予定だったり、後は連載の締め切りだったりを書いておく。この日が締め切りだよって。という感じで、(左側と右側のページ)両方を見ていく。

津田 それで忘れないようにするという感じですね。

池上 はい。

津田 一日のサイクルってどうなってますか? 朝から寝るまでの過ごし方とか。

池上 ええと、だいたい通常の場合は、昼前に起き出して、のそのそと仕事場の近くのタリーズに行って。

津田 タリーズがお好きなんですね。

池上 いや仕事場の近くには、あの、タリーズしかない。

津田 あ、そうなんですか。

池上 スタバは隣の駅に行かないとない。それだけのことなんですが。そこ(タリーズ)で、ラテとアメリカンのそれぞれトール(サイズ)を買って仕事場に入り、さあネットを開き、メールを見、チェックをし、おもむろに原稿を書き始めると。

津田 午後ぐらいからという感じでしょうか。

池上 そうですね。で、だいたい明け方に執筆仕事を終えると。明け方の午前3時ぐらいにふらふらと仕事場から家まで歩いて帰るという、怪しい生活ですね。

津田 まあ、執筆仕事の合間合間にこういう出演があって、それをこなすという感じですかね。

池上 ですね。

津田 移動はどうしているんですか?

池上 そりゃもちろん電車で。今日もね、山手線の某ターミナル駅で、立ち食いそば屋でお昼ご飯を食べていたんです。

津田 そんな庶民派な。

池上 そばを食べててね、食べ終わってフッと目を上げたら、目の前の向かい側で食べていた人もフッと目を上げて「あ、池上さんだ! うちの娘がファンなんです」と言われて、「ああ、ありがとうございます」――みたいなことをね(したんです)。(食べたそばは)「かき揚げ卵そば」でした。

津田 そうなんですか(笑)。じゃあもうご飯とかは、軽く済ませちゃうことが多いんですか?

池上 コンビニのおにぎりを食べながら原稿を書くということがよくある、というか普通ですね。

津田 なんかもっと、お気に入りのそば屋さんとかがあって、そこでゆっくり時間をかけておそばを食べるという勝手なイメージがあったんですけど。

池上 そんな時間がまったくないんですよ。この会場にも編集者が複数来てますけど、うるさい編集者がいるわけですよ。早く(原稿を)出せとか、打ち合わせのスケジュールをあわせろとかね。

津田 そんな時にはどう対処するんですか? どうにも間に合わない時とか。

池上 うん、ごめんなさいって。ああ、連載は違いますよ。連載の締め切りはこれ守らなければいけないものですよね。

津田 そうですね、(連載のコーナーが)落ちてしまいますから。

池上 書き下ろしの締め切りが切羽詰ってくると、かつて井上ひさしさんが逃げ出したとかね、ああいう気持ちがよく分かりますよ。本当に追い詰められてきますよね。

津田 追い詰められてでもやっぱり力が発揮できるタイプですか?

池上 うーん、最後はなんだろうね、火事場の馬鹿力みたいな。

津田 おー。

池上 そういう(切羽詰った状況で)わーっとなると、よくほら、作家の人って「降りてくる」という言い方をするんですよ。どうしても原稿が書けないなって思っているんですけれど、ある時突然フッと思いつくと書き始めるんですね。そうすると、食べることも、飲むことも、トイレに行くことも忘れて、ふと気づくと5時間ひたすらパソコンに向かって原稿を書いていた、なんてことがあってですね。以前400字詰原稿用紙で50枚を1日で書いたのが最高記録ですが、そのあと腰痛で苦しんだんですけどね。

津田 (笑)

池上 この時って、なんだろう、とにかく頭の中に浮かぶことをただそれを書きうつすだけなんです。

津田 自動書記みたいになってますね。

池上 なってます。で、数日たってそれを読むと「ええ、オレこんなことを書いたのか。どうしてこんなこと書けたのだろう」って思うことがあるんです。

津田 でも確かにそういう風にノッている時の原稿って、後で読み返すと意外なことを書いていることってありますよね。

池上 ありますよね。最近なかなか「降りてこない」もので。

津田 僕も「降りてくる」ことを感じたことが、かつては若干だけあったんです。ですけど今はもう、なんかカーッって集中するじゃないですか。20分ぐらいカーッってやってると「ああ疲れた。Twitter見よう」ってTwitterを見ているとそのまま2時間が経過していたみたいな。そんな毎日なんですよね。

池上 でしょう? だからTwitterは仕事の敵ですよね。(会場笑い)

津田 でも、僕は一応言いたいんですけれども、僕が主張するのも何なんですけれども、Twitterをやっているという時は、パソコンの前にいる時が多いわけですから、仕事をしているんですよ、だいたい。何かの仕事をしていて、その場でTwitterをやっているわけで、Twitterをやっていると遊んでいると思われるのは結構心外なんです。(会場笑い)

池上 なるほどね。まあ、確かに遊んでいるわけじゃない。

津田 そうなんです。

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