新・ぶら下がり社員が増えたとはいえ、ぶら下がらずにしっかりとした目的・目標を持ち、生き生きと働く社員もいる。前述したように、新・ぶら下がり社員はとりあえず上司の指示には従うし、与えられた仕事はきちんとこなすので、見抜くのは容易ではない。
新・ぶら下がり社員を見抜くには、次のような兆候に注意するべきである。
あてはまる項目が多ければ多いほど、ぶら下がり度も高いと考えられる。
「今、ほかの仕事で手一杯で、そこまで手が回りません」
「自分なりにやってはいるんですけど、先方が納得してくれなくて」
「これからやろうと思っていたところです」
「魅力的な商品がうちにはないから売れない」
「売れないのは不景気だから」
このように、いつも何かのせいにして言い訳ばかりするようになったら、新・ぶら下がり社員に染まりつつある。口ぐせは「そうですね、でも」「分かってはいるんですけど」という感じで、否定形から入るのである。
30歳前後を対象とした育成プログラムでも、グループで話し合ってもらうと、建設的な意見がいろいろ出てくる。けれども、すぐに「でもさ、それって」と打ち消す意見が飛び出すのである。否定するのが習慣化してしまっているのだろう。
ぶら下がり度は普段の態度をよく観察していれば分かるが、分かりやすいのは会議やミーティングの席での態度である。
「何か意見は?」「質問は?」と聞かれても、黙り込んでいる。指名したら意見は述べるが、自分から手を挙げて発言しようとしないのである。
終始うつむき加減で何も反応せず、話を聞いているのか聞いていないのか分からない新・ぶら下がり社員に向かって話すのは珍しい光景ではなくなった。
ここまで覇気がなければ、普段の仕事ぶりも大体予想はつく。積極的に情報を仕入れて仕事に生かそうとしないだろうし、異業種交流などに出かけて人脈を広げようともしない。社内で小さく小さくまとまり、「おとなしく言われたとおりに座っています、30歳」という感じだろう。
小さな兆候でも、放置していたら悪化する。
私は新・ぶら下がり社員が5年後や10年後に自然とやる気を出し、リーダーとしての自覚も生まれ、チームをグイグイ引っ張っていく存在になるとは思えない。
「そのうち元気になるだろう」と問題を先送りするのではなく、今すぐにでも対処するべきである。
辞めません。でも、頑張りません。会社を辞める気はない。でも、会社のために貢献するつもりもない。そんな30歳前後の社員が増えている。彼らのことを「新・ぶらさがり社員」と呼ぶ。
新・ぶらさがり社員は目的を持たない。目的がないゆえに、会社では時間を「潰す」ことに明け暮れ、常に70%の力で仕事に取り組む。本書では、彼らのマインド低下を表すデータを豊富に紹介している。その一部を紹介しよう。
「周囲の人に主体的に関われている」(社会人1〜3年目:8.4%、社会人7〜9年目:4.5%)、「重要な業務を担っていると思う」(社会人1〜3年目:10.3%、社会人7〜9年目:8.4%)、「仕事で自分らしさを発揮できている」(社会人1〜3年目:9.7%、社会人7〜9年目:5.8%)。
新人よりも仕事ができないと思いこんでいるのは、いったいなぜなのだろうか?
本書では、企業研修の講師として6000人以上の人材育成を手がけてきた筆者が新・ぶらさがり社員の実態に迫るとともに、30歳社員の「目の色」を変えてやる気にさせる方法を詳しく解説する。
株式会社シェイク代表取締役社長。大阪大学基礎工学部卒業後、住友商事株式会社に入社。通信・放送局向けコンサルティング、設備機器の輸入販売を担当。新事業の立ち上げなどにもかかわる。2003年、創業者森田英一の想いに共感し、株式会社シェイクに入社。営業統括責任者として、大手企業を中心に営業を展開する。2009年9月より現職。
現在は、代表取締役として経営に携わるとともに、新入社員からマネジャー育成プログラムまで、ファシリテーターとして幅広く活躍する。ファシリテートは年間100回を数え、育成に携わった人数は6000人に上る
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