「無料サンプルを差し上げます」で客をつかむ方法売り込まず、お客をファンにする方法(2/3 ページ)

» 2011年02月15日 08時00分 公開
[安東邦彦(ブレインマークス),Business Media 誠]

 基本的な考え方として、顧客を「集めて」「育てて」「契約する」。そして、契約した顧客を「ファン化」するという4つに分割して考えます。さらに、それぞれが違う役割を担うのです。

 従来の営業のプロセスは、見込み客の発掘から契約までが一足飛びで行われてきました。将来的に商品やサービスを検討する見込み客を「育てる」という視点がないので、常に新規案件を発掘し続けてきました。

 しかし営業プロセスを細分化して、継続的にフォローすれば、いずれニーズが生まれるかもしれない人を囲い込み、育てていくことができるかもしれません。さらに、各プロセスの役割を明確化することで、基本性能が高まり、活動に対する発想が広がるかもしれません。理屈だと分かりにくいので、ここからは通信販売業界の事例でご紹介したいと思います。

通信販売業界の事例に当てはめると

 化粧品などの通信販売のCMで「無料のサンプルを差し上げます! お申し込みはフリーダイアルで!」というフレーズをご覧になったことがあるのではないでしょうか。

 このように通信販売の広告は「無料のサンプル」や「お試しセット」をプレゼントしていることが多いですね。このプレゼントが営業活動の中でどのような役割を担い、どのような効果をもたらしているのか? といったことを考えたことがありますか。

 私は、この広告の中に「これからの時代に求められる営業方法が隠れている」と考えています。化粧品の通信販売を事例にもう少し詳しくご紹介しましょう。

 この通販会社は「無料のサンプルを差し上げます!」というフレーズで、将来的に商品を購入する可能性のある「見込み客」を集めているのです。たとえ無料であっても、わざわざ化粧品の無料サンプルを注文するのは、多少なりとも興味のある顧客。例えば「現在の化粧品に不満がある」「もっと自分にあった化粧品を探している」などを考えている“顧客候補”なのです。

 逆に知名度のない健康食品を、テレビCMでいきなり「素晴らしい商品ですからぜひ、買ってください。注文はコチラ!」と宣伝しても、それほど多くの販売には結びつかないでしょう。

 このことを理解している通信販売会社は、いきなり商品を売り込むのではなく、「商品に興味があり、将来的に購入の可能性がある見込み客」へのアプローチを効果的に行っているのです。また無料サンプルを申し込んだ顧客の家を訪問して、無理に販売したりはしません。継続的にフォローしていくことが、キモなのです。

 見込み客には、実際にその商品を利用したユーザーの声を掲載した冊子などを送付します。そして「いかにこの化粧品が素晴らしいものか」ということをじっくりと伝えていきます。こうすることにより、顧客との信頼関係は深まり、顧客のニーズが顕在化したタイミングで契約になるのです。

 もちろん、無料サンプルを申し込んだすべての人が、契約するわけではありません。しかし直接的な売り込みでは集めることのできない「将来的なニーズをもった見込み客」を囲い込むことで、結果的に販売数を増やしていっているのです。そして、この見込み客リストは、たとえその商品を購入しなかったとしても、新商品などを継続的に案内していくことにより、新たな顧客となる可能性を秘めているのです。

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