スライドのラフを描かずに、いきなりPowerPointやWordで提案書を作っていませんか? 何事も、アウトラインを固めてから作業に移ったほうが、最終的な効率はよくなるものなのです。後編は「スケジュール」「予算」「体制」のラフを紹介します。
ラフスケッチ(下描き)は、ハイクオリティな提案資料づくりに欠かせないスライドの設計図。前編は、基本的なスライドレイアウトのラフを紹介しました。今回は、ビジネスの提案に欠かせない「スケジュール」「予算」「体制」のラフを紹介したいと思います。
どこまで細部を詰めてスケジュールを提示するかはプロジェクト次第ですが、細かいレベルに応じて最適な表現方法も当然変わります。開始日と終了日だけでなく、所要時間や担当者などの項目を入れるとなると、マトリックスなど2軸情報を持つ表現が必要になります。1枚のスライドの中で、複雑になりがちなスケジュールをどうシンプルに表現するか――。そこがポイントです。
全体のプロセスを切り口に大分類し、それに要する日数などを示すざっくりスケジュール。詳細タスクが不要な場合は、これで間に合います。
単にスケジュールだけでなく、手続きが複雑だったり、条件によって処理方法が変わったりする場合には、こうしたフローチャート型が便利です。
プロジェクトに必要なプロセスやタスクを所要日数とスタート日、完了日に分けて管理できるので、大変便利です。複数の人間や組織がからむプロジェクトでは役割分担も明確になるのでオススメです。
重要なマイルストーン(中間目標)の日と完了日だけを個条書きで列記するものです。手間のかからない点がメリットですが、所要日数が妥当であるかどうか、イメージしにくいのが難点。
上の個条書きスケジュールの問題点を解決したもの。土日や祝祭日などを考慮した所要日数が一目で分かるので便利。ただし、役割分担などは把握しにくいです。
お金にからむ部分は誤解を招くと大きなトラブルに発展しかねません。従って「どこに、いくらかかっているのか」が一目で理解できないスライドは失格です。
細目とならんで重要なのは、一時費用とランニング費用の区分け。企業においては、全体予算とのからみもありますから、トータル予算だけでなく、費用項目の性格によって分類することも重要です。
総予算を構成する大きなブロックに分けて、その明細を示す方法。「総予算=初期+ランニング費用」や「総予算=単価×利用数」などを示す場合に有効。
条件によって予算が目まぐるしく変化するような場合に有効。例えば、同じ日数でも出発日によって大きく料金が変わる「旅行代金」です。利用条件と利用したいプランの組み合わせで料金が変わる場合に使ってみましょう。
見積もり書と同様に、必要予算の内訳を詳細に示すパターン。基本は「単価×数量」となります。単価は「利用量単位」「人数単位」「一式」などさまざまです。項目が多くなると複雑になり、見づらくなるのが難点。
提案書の中で推進体制をしっかり書き入れているケースはまれです。しかし、提案内容や予算が合致したとしても、プロジェクトを実際に遂行していく組織や体制がなければ絵に描いた餅。提案内容に人がリンクすることで、責任も明確になり、プロジェクトのリアリティも増すことでしょう。
体制図を示す場合に一番分かりやすいのがこうした縦割りの組織図。担当だけでなく、上下関係が把握できるので、誰が一番責任を持っているのかが一目瞭然です。
プロジェクトやパートによって担当が変わるような場合は、このようなマトリックス型組織図のほうが、表現しやすいでしょう。
一番シンプルなのは、個条書きで担当を示す方法。ただし、記載した担当の責任範囲や上下関係が不明瞭なのが難点です。
さて、前回と今回はスライド作成前の「ラフ描き」を紹介しました。いかがでしたか? 私の場合はさらに、グラフなどもラフを作っています。次回は、番外編として、グラフなどのラフ例も紹介したいと思います。
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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