さて、それでは最後に書籍をPDF化してiPadで読むまでの段取りを紹介しておきましょう。ちなみに実際にはこの作業は妻がやっています。大まかに言うと下記のような5ステップです。
まずは「異物除去」。本の中には紙のしおりが挟んであったり、ページの隅が折られていたりといった、スキャンの邪魔になるものがあるのでこれを取り除いておきます。
次に「分解」。裁断機の取扱説明書を見ると、裁断できる本の厚さは1センチ程度までと書かれているため、その範囲に収まるように1冊の本をごつめのカッターナイフを使って100ページ程度ずつに分解します。ハードカバー本の硬い表紙は裁断できないのでここで取り除きます。
続いては、いよいよ「裁断」。裁断機でざっくりいきます。非力な女性の力でも特に苦労はないようです。
のり付けされた「背」部分を切り落としてこんな風になります。
切り落とされた「背」部分の山……。
ちなみに実作業をしていた女房曰く「初めのうち、ギリギリのところで裁断していたら、のりが残っていてやり直さなければならないことが何度もあった」そうです。のりが残らないように少し余裕を持たせてカットしたほうがいいですね。
次にいよいよScanSnapにかけてスキャンニングをするわけですが、ここでも1冊をまるごとやるのは無理なので、何回かに分けてスキャンします。再び妻の証言によると「1度に入れる量が多すぎると、途中で詰まりやすいみたい」。ScanSnap S1500のADFに一度に載せられる枚数はA4コピー用紙で最大50枚までなので、ちょっと少な目にするといいかもしれません。
ちなみに、「表紙」は本文とはべつにスキャンします。というのもやはり妻が言うには「表紙はカラーのほうがいいでしょ? 本文もカラーだとファイルサイズが大きくなっちゃうから、別に読んで合成するの」だそうで。実際やってみるとこんな細かなノウハウが少々必要になってくるので、手順が固まるまでは少し試行錯誤が必要になることでしょう。誠 Biz.IDでも電子書籍化の詳細をレビューしていますので詳しくはそちらをご覧になるのもありです。
ところで、前述の妻の意見にもあるように「表紙はカラーのほうがいい」ですね。カラーになると何が違うかというと、満足度が違います。……ただそれだけなんですが、例えばiBooksで本棚形式で見た時です。
いかがでしょう。カラーで表紙が並んでいるのとそうでないのとではやっぱり印象が全然違います。表紙があると、「本を手元に残している」ような感がありますし、一度読んだ本であれば表紙が見えていると探しやすいです。
ちなみに、出版業界では「表紙の出来は本の売れ行きの5割を左右する」と言われることもあるほど、表紙というのは大事なもの。少々手間は増えますが、やはり表紙は特別扱いしたほうがよさそうです。
以上、30年間死蔵本に悩まされ続けた男の「書籍デジタル化大作戦」、情報系の体験記でした。私もやってみようかな? とお考えの読者の参考になれば幸いです。
あなたも、1千冊の本をiPadで持ち歩いてみませんか?
著者・開米瑞浩氏が講師となって「仕事を教える力」をテーマとするセミナーを開催します。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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