新規事業を起こす時に考えたいことがいくつかあります。その1つが商品やサービスのライフサイクル。今は投資の時期なのか、それとももうかる時期なのか、はたまた事業撤退の時期なのか――。
このところ、新規事業にからむさまざまな図解を書いています。前々回が「採算性を『図解思考』で実感する」、前回が「新商品のプロモーション活動を図解で整理してみる」でした。そして今回は「商品の一生を分析する」です。
製品がどのように売れ、衰退していくのか……。これを「製品のライフサイクル」と呼びます。上記3つのライフサイクルは、縦軸を売れ行き、横軸を時間にして曲線で表わしたものです。(A)は最初は売れなかったが少しずつ規模が大きくなってきたもの、(B)は一定サイクルでヒットと衰退を繰り返すもの、(C)はいったんヒットした後、売れ行きが安定しロングランになったものです。
もちろん、商品の一生は商品ごとにすべて違います。しかし、規模やタイミングの違いはさておき、多くの製品は、なかなか売れない「導入期」、急に売れ始めた「成長期」、安定して売れ続ける「成熟期」、じょじょに売れ行きが落ちてくる「衰退期」にわけることができます。
そういったライフサイクルの全般にわたって永続的に売れ続ける商品というのはまれです。特に、陳腐化の激しい技術オリエンテッドな世界においてはなおさら。ですから、自分の商品やサービスが「商品の一生において、どのポジションにあるのか?」を理解しておかないといけません。
さて、新規事業(商品やサービス)をやらねばならない背景には、一生続く事業や商品はないということがあります。現在の各事業(商品)が、自社にとってのどのようなポジションにあるのかを客観的に理解し、適切に対応しなければなりません。こうした事業のポジショニングを分析するフレームワークとして、「プロダクトポートフォリオ」は、大変便利ですので紹介しておきます。
「プロダクトポートフォリオ」は米ボストン・コンサルティングが開発した経営分析ツール。縦軸に市場成長率、横軸に相対マーケットシェアをとり、事業を4つの象限のどこに位置するかを客観的に見るものであります。
プロダクトポートフォリオ分析では、新規事業はほとんどの場合「問題児」。新商品や新サービスは、市場の伸びが期待できる分野に展開するわけですが、すぐにシェアを取れるわけではないからです。この時期、さらに追加投資を行い、シェアを取りにいきます。
がんばってシェアが取れるようになると「問題児」から「スター」「花形」に昇格です。成長市場においてシェアもそれなりにとっている状態。売上も上がり、それがどんどん拡大する状態です。それにつれて、追加の投資も必要です。つまり、お金になるが、コストもそれなりにかかる状態といえます。残念ながら、ここでシェアがとれないと撤退を検討しないといけません。
やがて市場成長がおさまると、新たな投資は不要となります。コストは減り、売上が安定しているので、一番もうかる時期です。そのため、「金のなる木」と呼ばれます。この時期が長ければ長いほど、利益が取れます。
市場の成長もなければ、マーケットシェアももたない事業になると、基本的には「斜陽化」で売上は右肩下がりになります。しだいに採算は合わなくなり、市場が縮小してくると追加投資もできません。基本的にはどこかのタイミングで撤退しなければならない、そうした衰退期の事業は「負け犬」と呼ばれます。
どんな事業も、この4つの象限のどれかにあてはまります。そして、問題児はスターを目指し、スターはしだいに金のなる木に変わります。そして、負け犬になった事業は撤退を検討するということです。自社の事業にスターや金のなる木があるうちに、問題児を育てなければいけません。それが新規事業の役目です。
うちの会社では、新人でも、経理の女性でも誰でも参加できる「新規事業提案制度」があります。そうしたしくみのない会社では、ぜひ、今の事業のプロダクトポートフォリオを示して、上司に新規事業提案のしくみを提案してはどうでしょうか?
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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