朝から逆算して1日を丸ごと前倒しする朝シフト仕事術

朝シフトのポイントは、睡眠時間を削るのではなく、起きている時間帯を丸ごと数時間前倒しすること。そのため朝起きる時間から夜寝る時間を逆算し、さらに退社時間を決めます。目標は定時退社にしましょう!

» 2011年08月02日 10時22分 公開
[永井孝尚,Business Media 誠]

 朝シフトは睡眠時間を削って早起きするのではなく、起きている時間帯を丸ごと数時間前倒しすることです。そのため朝起きる時間を決めて、そこから逆算する形で夜寝る時間を決め、さらに退社する時間を決めていきます

午後10時に寝て早朝5時に起きる生活リズム

 まずは1日のスタート、起床時間を前倒しするところからいきましょう。

 朝の時間をうまく活用しようという話ですから、今よりも数時間早く起きなければいけません。毎朝8時に起床していた人が2時間前倒しすれば6時起き、3時間前倒しすれば5時起きです。正直、辛そうですね。

 でも朝起きるのが辛いのは、早朝の5時だからというわけではありません。就寝時間を変えずに5時起きをイメージするから「辛そうだ」と思ってしまうのです。3時間早く起きるために3時間早く寝る。深夜1時に寝て朝8時に起きている人(7時間睡眠)なら、午後10時に寝て5時に起きればいいのです(同じ7時間睡眠)。そう考えると、心理的な抵抗感もいくぶん薄まるのではないでしょうか。

 同じ睡眠時間なら、朝早いから辛いとか、遅いから辛くないということはないはずです。同じ睡眠時間なら、早く寝て早く起きるほうが熟睡でき、起きるのは楽だと私は実感しています。

「満員電車に乗りたくない!」も立派な動機

 朝起きるのが辛いとき、ベッドや布団から出られないとき、私たちはつい言い訳探しを始めます。

  • 「昨日夜遅くまで頑張ったから、今朝はもうちょっと寝ていていいよね……」
  • 「このまま起きても、体調が悪くなるに決まっている」
  • 「今日は午前中に予定が入っていないから、誰にも迷惑がかからないし……」
  • 「二日酔いで頭が痛い」
  • 「あと30分だけ……、お願い!」

 まどろんでいる状態なので、論理的な言い訳は出てきません。しかし、自分に対する言い訳ですから、これくらいでも十分なのです。1分でも1秒でも長く眠っていたいという誘惑を打ち負かすには、“起きたほうがもっと楽”と思える状態をつくってしまうのが一番です

 私の場合「あの超満員電車に乗りたくない」「座って通勤したい」というのが、早く起きたい最大の理由。ギュウギュウ詰めの満員電車を想像しただけで、布団から跳ね起きます。

 人間は結局、楽なほうを選びたいから、ベッドや布団から出たくない、そのまま寝ていたいと思うのです。ですから、逆に「早起きしたほうが楽だ」「早起きしたほうが楽しい」と思える状態をつくってしまえばよいのです。とにかく頑張らない、楽して続けることが、朝シフトを実現するコツです。

 どうしても早起きする理由が見つからない人は、強制的に朝に予定を入れてしまうという手もあります。例えば、朝8時からの社内会議。時差のある海外との電話会議は早朝や深夜に行われることが多いはずです。あるいは、早朝からビジネス街などで開催されている各種の勉強会に参加する――。予定を入れてしまえば、それに間に合わせるために「7時半出社→6時半自宅を出る→5時半起床」という具合に起きる時間を決めることができます。

 早起きの習慣が身につくまでは、こういう方法もよいのではないでしょうか。

早く起きるために早く寝る

 朝シフトを始めて、ひとつ気がついたことがあります。昼間、全然眠くならないのです。私自身、午前10時出社をしていた頃は、睡眠時間を十分とったつもりでも、午後に眠くなる時間帯がありました。これはどういうことでしょうか?

 朝シフトは起きている時間帯を数時間前倒しするだけですから、睡眠時間はシフト前とシフト後で変わるわけではありません。早起きするために早く寝る。当たり前のことですね。

 ところが、不思議なことに、同じ睡眠時間でも早く寝ることで睡眠の質がよくなるようなのです。これは私だけでなく、早朝から活動している多くの方々がおっしゃっています。

 就寝・起床時間と健康との関係についてはさまざまな説があるようですが、できるだけ早く、日付が変わる深夜0時前には就寝する生活をしていると、成長ホルモン分泌や副交感神経の活性化、免疫力強化など、身体によい影響があるそうです。

 考えてみると、太古の昔から、人間にとって夜は真っ暗なものでした。東日本大震災の影響で、計画停電が実施された地域の人たちは、電気が消えた街がいかに暗いか、そして、真っ暗な夜には月明かりがいかに明るいものなのか、あらためて気づいた人も多かったのではないでしょうか。

 人類は、太陽が出ると目覚めて活動を開始し、太陽が沈むと家に帰って寝る、という生活パターンを数百万年も続けてきました。文明が発展して夜が明るくなり、日が沈んでから8時間経った深夜2時になっても、コンビニの明かりがこうこうと灯り、そこで買物ができるようになったのは、ここ20年くらいの出来事。人間にとって、夜早く寝て、朝早く起きることは、自然でムリのない状態なのではないでしょうか。

 ふだん深夜1時、2時まで起きている人は、試しに今晩だけでも午後10時過ぎに寝てみてはいかがでしょうか? 翌朝起きたときの熟睡感がまるで違うはずです。朝シフトにより、午前0時前の睡眠時間をできるだけ多く確保することで、健康にもよい影響が出ます。

早く寝るために定時退社する

 毎日早く寝るためには、何が必要でしょうか。それは、早く帰宅することです。そして、早く帰宅するためには、早く会社を出なければいけません。毎日午後10時まで残業している人は3時間前倒しすれば7時退社、終電間際まで働いている人は3時間前倒しすれば9時退社になります。それだけでも大きな進歩ですが、ここでは思い切って定時退社を目指すことをおすすめします。

 実は、朝シフトの最大の敵は“ダラダラ残業”です。朝シフトをはばむ3つの誘惑、テレビ、インターネット、飲み会は、確かに早く寝ることの障害にはなりますが、いずれも娯楽です。別の楽しみ(朝の快適な通勤、朝時間を活用したライフワークの充実など)があれば、克服できるはずです。

 ところが、残業はあくまで仕事ですから、罪悪感がそもそも希薄です。就業時間後も集中できる気力と環境があればいいですが、連絡待ちの暇つぶしも、気晴らしのネットサーフィンも、周囲との雑談も、すべて残業でひとくくりにされてしまうところが問題です。そういう環境に染まってしまうと、1時間のつもりが2時間になり、3時間になって“ダラダラ残業”が常態化してしまうのです。ですから、朝シフトを実現するためには、就業時間は仕事に集中し、可能なかぎり定時に会社を出ることを目指してください。

 「そんなことを言われても、仕事は忙しいし、なかなか定時には終わらない」という人も多いでしょう。しかし、本当にそうでしょうか?

 夜に大事な飲み会やデートの約束があれば、どんなに仕事が忙しくても、ふだんの何倍も集中して、何としてでも時間内に終わらせる――。そういう経験がある人は多いのではないかと思います。

 恐らくその日は、何時までに何を終えるという段取りを真剣に考え、ムダ話をほとんどせずに、その時間に間に合わせるように集中していたのではないでしょうか。

 大事なその日にできたことは、他の日にもできるはずです。一度そういう経験があれば、毎日同じことができないはずはないのです。それを可能にするための仕事術は、次の章でくわしく紹介します。

連載「朝シフト仕事術」について

本連載は7月16日発売の書籍『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』から抜粋したもの。“朝活"が大ブームの今、医者、起業家、脳科学者が書く朝活の本も売れているが、本書は日本IBMに勤務する現役ビジネスパーソンが現在進行形で朝時間を有効活用していることが特徴だ。その成果・効果を大公開。実体験を元に、朝は夜の6倍生産性があがる理由を分析した。

著者自身も20代30代のころは、仕事の忙しさが残業に反映されていると思い込み、“残業自慢者"でもあった。しかし、残業 → ストレス → 飲む → 寝坊 → 満員電車 → ぎりぎり出社 → 仕事の山という負のサイクルにどっぷりとはまっていたことに気づく。それをきっかけに、時間の使い方、仕事のやり方を研究しはじめ、朝時間にシフト。家族と過ごす時間、自分のための時間が増え、ライフワークをしっかりと楽しんでいる。そんな朝時間の有効性を共有する「朝カフェ次世代研究会」を主宰し、朝時間仲間をどんどん増やし、仕事とプライベートを充実させる啓蒙書。生活を見直したいと考えるビジネスパーソンにおすすめの1冊だ。


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著者紹介 永井孝尚(ながい・たかひさ)

日本IBMソフトウエア事業部マーケティング・マネージャー。1984年3月、慶應義塾大学工学部卒業後、日本IBM入社。製品開発マネージャーを担当した後、現在、同社ソフトウエア事業部で事業戦略を担当。2002 年には社会人大学院の多摩大学大学院経営情報研究科を修了。朝時間を活用することで、多忙な事業戦略マーケティング・マネージャーとして大きな成果を挙げる。一方で、ビジネス書籍の執筆や出版、早朝勉強会「朝カフェ次世代研究会」の主宰、毎日のブログ執筆でさまざまな情報を発信。さらに写真の個展開催、合唱団の事務局長として演奏会を開催するなど、アート分野でも幅広いライフワークを実現している。主な著書に『バリュープロポジション戦略50の作法 - 顧客中心主義を徹底し、本当のご満足を提供するために』などがある。


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