ネットでの振る舞い方を定めるソーシャルブランディングの時代(2/3 ページ)

» 2011年08月10日 12時38分 公開
[大元隆志,Business Media 誠]

自分の分身を作り出す――ペルソナマーケティングをパーソナルブランディングに

 「ペルソナ」には「仮面」という意味があり、心理学用語では、外界へ適応するために必要な表向きの人格を指します。この言葉はマーケティング用語としても使われています。顧客の年齢層や性別、年収、趣味を想定して架空の人物像(ペルソナ)を作り出し、商品開発やプロモーションにつなげていく手法を「ペルソナマーケティング」と呼びます。

 ソーシャルコミュニケーションでは、情報発信者の側にこのペルソナマーケティングの手法を用いることで、コミュニケーションを円滑にする方法がよく利用されています。ソーシャルメディアを通じてパーソナルブランディングを実践した場合、大半の人々は生身のあなたに会うのではなく、オンライン上のあなたの仮面と接することになります。ペルソナの振る舞い次第で、あなたが周囲に与える印象は大きく違ってくるのです。

ペルソナを適用するメリット

 現実社会で誰かから好感を持たれるかどうかは、外見や話し方で大きく違ってきます。『人は見た目が9割』という本が話題を集めたくらいです。しかしソーシャルメディアでは、文字によるコミュニケーションが中心となります。そうしたメディアで人に好印象を与える要素は、持って生まれた性格ばかりではなく、スキルで補完できるということです。このことを理解しておきましょう。

 例えば、どんなに陰気な性格の持ち主だったとしても、Twitterで毎日「おはようございます!」「おやすみなさい!」とつぶやいていれば、明るい人と思われるでしょう。反対に、実際にはとても気さくで明るい人柄の持ち主なのに、ITが苦手だという理由で、Twitterではあまり発言もなく、誰かに話かけられても、言葉少なめに返事をしていては、冷たい人だと思われるかもしれません。

 このように、ソーシャルメディア上のコミュニケーションは、ある程度自分を演出する、そう、ペルソナの仮面を被って接することが可能なのです。この仮面を上手に使うことで、あなたをより良く見せることができます。ただし、被ることのできる仮面は1つだけです。2つも3つも被ると信頼を失います。仮面を被ることで現実世界のあなたの弱味を補完する、そんな風に考えて下さい。

 あなたがソーシャルコミュニケーションを行うにあたっての、おおまかな行動パターンがペルソナです。それを作っておくことで、しっかり「評判を管理」するようにしましょう。

自分の強味と弱味を知る

 まずは、自分の強味と弱味を考えてみましょう。強味と思われる所はもっと伸ばして、弱味と考えられる点については、後述する「能力を補完するためのヒント」を使って、あなたのペルソナの能力値を伸ばしてあげましょう。

 前回述べたとおり、ソーシャルメディアで活躍する上で重要な個人の能力には、キュレーション能力とコミュニケーション能力があります。そこで各々の能力について、自分の「強味」を知るところから始めましょう。

キュレーション能力における自分の強味を知る

 ソーシャルメディア上でキュレーションを行い、有益な情報発信者となって尊敬を集めている人のコンピテンシー(個人の能力に基づく行動特性)を表にまとめました。キュレーションに必要な三種の能力がもたらす行動特性を列挙しました。それぞれの能力について該当する項目(行動特性)が5つ以上あれば、その能力があなたの強味だと言えます。もし5つ以下なら、後述する「ペルソナ能力アッププラン」を参考にして、能力アップに努めましょう。

コミュニケーション能力における自分の強味を知る

 同様にこちらの表は、ソーシャルメディア上で人望を集める人のコミュニケーション能力とコンピテンシーをまとめたものです。こちらもそれぞれ能力について、該当する項目に○を付けてください。○が5つ以上あれば、本来持っているあなた自身の強味です。○の付かない能力については、後述する「ペルソナ能力アッププラン」を参考にして、能力アップに努めましょう。

仮面に本当の顔を近づける

 自分の強味と弱味を知ることは、あなた自身がインフルエンサーに「なる」ための第1歩です。「ソーシャルメディアでは仮面を被ったり自分を演出したりできる」と述べましたが、嘘を演じて視聴者を騙そうとしても、いずれ必ず見破られてしまいます。そして、あなたの嘘はインターネット上に永遠に記録されます。

 にもかかわらずペルソナを描くのは、スキルアップの努力を通じて「なりたい自分になれる」可能性がソーシャルメディア上には開かれているからです。こんな風に考えてみて下さい。ペルソナとは、現実の自分よりもちょっと先を行く自分の姿であり、努力目標だと。現実の世界の顔を、仮面に近づける努力を続けることで、やがてその仮面は、あなたの本当の顔になっていきます。そして、あなたは本物のインフルエンサーになっていくでしょう。

 そうなるための具体的方法を紹介していきます。

キュレーション能力を高めるプロセス

 キュレーションに関連する個々の能力を向上させる方法を説明します。キュレーション能力は左に挙げた5つのプロセスを継続することで、向上させることができます。

 まずは情報に気づく力を養い「どんな情報を集めるか」といったアンテナを磨き、次に、情報を収集するテクニックを向上させます。そして集めた情報を分析し、1つのアウトプットを作り出します。そのアウトプットに対するフィードバックを得ることで、新たに収集すべき情報のヒントを得ます。この一連のサイクルを繰り返し回すことで、あなたのキュレーション能力は少しずつですが、確実に向上します。

情報感度を高める方法

 「情報感度を高める」とは、言わばレーダーを設置して、情報収集の方向性を定めることです。ミサイルの飛んで来そうな方向にレーダーを向ける様子をイメージして下さい。どんなに精度の優れたレーダーでも、設置場所や探索する方向が間違っていては、ミサイルを捕捉することはできません。正しい方向にレーダーを向けるには、自分自身のアンテナを向けるべき方向を十分考える必要があります。そしてその方向は「人の欲しがる情報」に向けるのが効果的です。

 こちらの表に、一般的に人々が興味を持つ情報の種類をピックアップしました。この条件に一致する情報に対して、常日頃アンテナを張っておくとよいでしょう。

 次に、あなたの専門性を高めるために、アンテナを張っておくと効果的な情報の例を以下の表に列挙しました。あなたのターゲット層が興味を持っている業界について、この種の情報を集めることで、あなたの専門性は高まり、あなたはターゲット層から必要とされる人間になるでしょう。

 一般の人々が興味を持つ情報、あなたが対象とするターゲット層の欲しがる情報、この2つに対してバランスよくアンテナを張ることで、あなたの情報に対する感度は高まり、良質な情報を収集するという行動特性(コンピテンシー)が身に付いていくことでしょう。

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