エアコンの設定温度を上げると本当に節電できるのか節電DIY(2/3 ページ)

» 2011年08月11日 12時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

 ここまでのデータを見ると設定温度を2度上げると消費電力量はおよそ半減、ピークの電力も29度で548ワット、27度で1139ワットと約半分となっている。数値だけ見ると節電は楽勝とも思えるが、実際にはそうでもない。

 今回の設定温度は27度と29度。世の中で言われている26度と28度にしなかったのは、6月末の猛暑日の予備実験の結果からだ。猛暑の際、安定状態に入るまでにかなりの時間がかかることが分かったのである。恐らく28度の設定で1時間半、26度にすると2時間半から3時間かかったと思われる。というわけで、測定条件を同じにするには外気温が同じ時間帯に行う必要があったため27度と29度で実験を行った。

 設定温度29度の消費電力を見るとピークで548ワット、安定状態で160ワットとそこそこ省エネとなっているが、あくまで外気温が32度、元々の室温が31度という条件での話しだ。もし外気温が34度、室温が33度になれば27度設定と同じ動作をすると思われるので消費電力は一気に倍増する。さらに昨年のように外気温が37度まで上昇すれば、フルパワーの状態を何時間も維持することになりそうだ。1000ワット以上で連続運転が続けば消費電力は数倍に達することになる。

 予備実験を行った日は外気温35.6度、室温33度だった。エアコンの設定温度を26度にすると消費電力は1257ワットに達したので、この値がこのエアコンのMAXだと思われる。仮に温度設定を24度にしてもこれ以上消費電力は増えないだろう。逆に外気温が2度上がると設定温度を26度から28度にしてもフルパワーで稼働する可能性が高い。

 機種によるが、多くのエアコンは外気温を計って動作するわけではなく、計った室温と設定温度によって消費電力が決まるはずだ。外気温と室温の関係は、日照条件や建物の構造によって異なってくる。車の室温が外気温より高くなるように、ガラス張りのオフィスビルはかなり室温が高くなる可能性が高い。そうなると酷暑の日には設定温度を26度から28度にしても消費電力が1%も下がらない事態も起こり得るだろう。

 これまでの検証と考察でエアコンの温度設定を2度上げると10%、1度上げると10%など表記のバラツキがある理由が分かってきたと思う。室温と設定温度の差が小さければ温度設定による節電効果は高く、差が大きければ節電効果は低くなる。実情を反映すると気温が低ければ温度設定による節電効果は高く、気温が高くなると節電効果は低くなる。2度で10%の節電というのは、一つの目安程度に考えた方がいいだろう。

設定温度を徐々に下げると愛が冷める!?

 さてエアコンの動作を理解した上で節電(節約)とピークシフトについて考えてみたい。節電を重視する方はスタート時点の設定温度をできるだけ高くすることだ。室温と設定温度の差が小さければエアコンはゆっくりと動作を開始する。30分から1時間で設定温度に達したら、さらに設定温度を1度下げることを繰り返し、最終的な設定温度まで徐々に下げれば消費電力は最小となる。最終的な設定温度は高ければ高いほど節電だ。この方法なら最大消費電力も低く抑えることができる。

 ピークシフトを重視する場合は、エアコンをオンにする瞬間が、電力需要のピーク時間の前なのか、最中なのか、後なのかで異なってくる。昼間の需要が多い時間帯ならピークを作らないように設定温度をできるだけ高くし数時間かけて徐々に下げることが望ましい。

 早朝でまだ電力にゆとりのある時間なら、思い切って設定温度を下げ一気に室温を下げ20〜30分したところで設定温度を高めに設定し低電力で安定動作させた方がピーク時の電力消費を抑えられる。2つの実験のデータを合成し設定温度を27度から29度に変更した場合を推定してみた。開始18分で室温が29度まで下がったところで設定温度を29度に変更すれば35分くらいには安定状態に入る可能性はある。

 企業の場合、お昼は会社全体の電力消費が下がるので、エアコンは切らずにそのまま稼働を続けた方が、13時以降にエアコンを再稼働するよりも13時台の消費電力を下げられる可能性もある。

 ピークを過ぎた時間に帰宅した場合は比較的自由に設定すればいいだろう。もし彼女を連れて帰宅した場合は見栄を張って設定温度を下げ急速に部屋を冷やし、30分くらいしたところで最終的な設定温度に上げれば快適さと節電を両立できる。徐々に設定温度を下げたりすると、部屋はなかなか冷えないのに、愛は一気に冷める危険性もあるから要注意だ。

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