チンプンカンプンの業界専門用語は「ジャーゴン(訳の分からない言葉)」と呼ばれ、多くのプレゼン指南書では「使わないように」と解説しています。ですが、こうした専門用語もメリットがあるんです。
今回は、図解思考とちょっと離れて「略号」について考えてみたいと思います。少しとっつきにくいものの、マスターすればコミュニケーション効率を飛躍的に向上させることもできるのです。
「EFO」という言葉をご存知でしょうか? ネット業界の人なら「ああ、エントリーフォーム最適化のことだね」と理解できる人もいるかもしれません。「EFO」は「Entry Form Optimization」の略と分かれば類推もできるでしょうが、しかしそうでない人には、まったく宇宙語のように聞こえるでしょう。
チンプンカンプンの業界専門用語を相手かまわずふりかざす人を揶揄(やゆ)するために、このような言葉は「ジャーゴン(jargon、訳の分からない言葉)」と呼ばれることもあります。多くのプレゼン指南書では「プレゼンでジャーゴンは使わないように」と解説しています。
一方で、こうした専門用語も「時短」という面では非常に意味があります。私は図解思考を推進しており、なるべく図や絵文字によって情報を可視化することをおすすめしていますが、複雑なコンセプトや識別の難しい情報は、こうした略号を使うメリットがあります。
例えば、FAQ(Frequently Asked Questions)はもはや誰もが「よくある質問」と理解しているので、Webサイトでも頻繁に見受けられるようになりました。同様のコンセプトを絵記号や図解で示すのはかえって時間がかかります。
また、大量の情報から識別が難しいものにも略号は便利です。例を挙げれば世界の空港は3桁、航空会社は2桁のアルファベット略号が決められており、世界のどこにいっても共通です。海外のインターネット航空券サイトなどでは、正式な名称を検索するより、こうした3桁コードを入力するほうがはるかにスピーディーで正確だったりします。
同じようなものに、通貨記号(米ドルならUSD、豪ドルならAUDみたいなもの)や国別コードなどもあります。とっつきにくいですが、覚えてしまうと大変スピーディーで楽しいですよ。
また、ネットのチャットなどではなるべく少ないタイプ数で、より多くの情報をやりとりしたいので、頻繁に略号が使われます。
――こうした略号はチャットスラングなどと呼ばれ、数多くのチャットスラングが存在します。しっかり覚えたい人はこちらを参考にしてみては?
つまり、略号というものはそれを知らない人にとっては宇宙語ですが、いったん知ってしまえば、非常に時短効果の高いコミュニケーションであると言えます。ですから、私は図解思考によるメモをとる場合も「すべてを絵にする」よりも「なるべく手間をかけずに意図が分かるように」するため、こうした略号は積極的に使っています。
例えば、Pという1文字であっても、○にPだと駐車場、□にPだとパワポのスライド、人型のアイコンにPを入れるとプロデューサ、<>にPを入れると段落、Pに数字だとページ番号……といった具合に組み合わせで意味を変えています。
こうした略号は自分のためのメモであれば、他人に理解してもらう必要はありません。自分専用ジャーゴンであっても、まったく問題ないわけです。
まずは自分のメモを見て、頻繁に使われている用語をチェックしましょう。そして自分なりのルールさえ確立してしまえば、略号は大変知的生産を高めるためのツールとして使えるのです。
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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