アンケートの返信がメルマガを発行したその日だけで5通、翌週は20通の返事が返ってきた。調子にのって、教材の販売も始めた金田だったが……。
この物語は、マイルストーンの水野浩志代表取締役の実話を基に再構成したビジネスフィクションです。事実がベースですが、主人公を含むすべての登場人物は作者森川滋之の想像による架空の人物です。
会計事務所の事務員だった主人公の金田貴男。辞職して起業したが倒産して、1500万円の借金を負う。酒とパチンコだけの引きこもりだったが、一念発起して禁煙に“成功”。友人の禁煙も手助けしたところ、意外なビジネスチャンスを感じた。メルマガを発行して見込み顧客を獲得しようと、アンケートを実施するが……。
何でもやってみるもんだよ。アンケートの告知を書いたメルマガを発行したのが1月6日。むちゃくちゃ緊張したんだけど、その日だけで5通アンケートが返ってきた。翌週も、その翌週も、アンケートの回答をお願いしたら、なんとか20通の返信がきた。
誰も読んでないのかと思っていた俺のメルマガだったけど、実践してくれる人もいたんだ。こういうアンケートは実践している人の10分の1だけでも回答してくれたらいいほうなんだそうだ。そうすると、少なくとも200人ぐらいは実践してくれているんだということになる。
3500部のメルマガで200人の実践。多いのか少ないのか、それはよく分からないけど、こんな俺の書いたことで、200人もの人が何らかの行動をしてくれているなんて、すごいことじゃないだろうか。ちょっと感動した。
20通の内訳だけど、19人が節煙効果あり、そのうち6人が禁煙に成功ということだった。これも多いのか少ないのかよく分からないが、95%が節煙に成功したというのは、すごいんじゃないだろうか?
少なくとも節煙効果があることが分かったし、禁煙に成功した人がいたということも分かった。意見も、ほとんどの人が熱心に書いてくれていた。効果が出なかった人は、そもそも面倒くさくて試す気もなかったと書いてあった。
以前の俺なら、これだけでへこみまくっていたと思う。でも、今は違う。どこが面倒なのか知りたいと思った。また、それなのになぜ読み続けているのかも知りたかった。今回はメールアドレスをもらわなかったので、直接メールで聞くことはできないが、今度アンケートをとるときは聞いてみたいと思った。
禁煙に成功した人からは、感謝の言葉をもらった。人の役に立ちたい、役に立って感謝されたい、というのが始めたきっかけだったが、それを改めて思い出させてくれた。
節煙はできたが、禁煙はできなかったという人からこんな意見もあった。「たばこを吸うのは自分のライフスタイルの一部だと改めて気づいたが、これからは本当に吸いたいときだけ吸おうと思った」。
なるほど。この人は、たばこを吸うことが悪習慣だとは思っていないということだ。ただ、人前で吸ったり、吸いすぎたりすることは、たぶんこの人の美学に反することなのだろう。つまり、悪習慣をなくしたいという、どちらかというと消極的な考え方をする人だけでなく、よりよい人生を生きたいという積極的な人にも響いているということだ。
自分自身、本当にネガティブな人間だったから、そのような読者がいることは思いもよらぬことだった。
メルマガの読者は確かに「ストレスなしでラクラク禁煙・タバコをやめて人生に成功する法則」という前向きなものだけど、実はそんな読者は想定していなかった。もっとチャラい生き方を目指している人に響くのだと思っていた。どうやらそれだけではないようだ。もしかしたら、俺は読者を馬鹿にしていたのかもしれない。反省した。
しかし、俺も変わったな、と思った。以前は、人に意見を聞くということが無理だった。メルマガ読者などという会ったこともない人ならなおさらだっただろう。そして、全面肯定してくれない意見には耳を貸さないどころか、へこみまくっていた。(たまに心がざわつくにしても)それもなくなった。人の意見を取り入れられるようになっている。我ながら驚きだ。
よし、やろう! と思った。教材販売のことだ。20通という数はけっして多くないけれど、この気持ちならやれそうな気がした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.