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» 2011年09月15日 15時10分 UPDATE

脱ガンジガラメの働き方:ハリー・ポッターのダイニングホールみたい!? IT企業でなくてもフリーアドレス実現 (1/3)

ハリー・ポッターに出てくるダイニングホール。奥行きがあって、縦に長いテーブルが置かれているアレだ。あんなテーブルをオフィスに設置して、フリーアドレスを実現した会社があった。JINSのメガネブランドで有名なジェイアイエヌのオフィスである。

[まつもとあつし,Business Media 誠]

 東日本大震災後の交通の混乱、計画停電の影響で「オフィスで働くこと」の意義を見直す動きが拡がっている。クラウドコンピューティングの一般化によって、どこに居ても仕事ができる、という考え方も浸透を見せているのはご存じの通りだ。

 一方で、事業環境が不確実性を増す中、機動的にプロジェクトチームを編成し、短期間で成果を上げるためにコロケーション(チームメンバーが1カ所に集まって働くこと)の重要性も指摘される。

 いずれにしても、従来の縦割り型組織をそのままレイアウトに反映した、固定的なオフィスのあり方では対応できない時代がやってきているのは間違いない。

 社員に特定の座席を与えず、場所を自由に選ぶことを前提としたオフィスのあり方は日本ではフリーアドレス制と呼ばれている。もともとは外勤中心のスタッフのスペースを内勤中心のスタッフと共有することで、オフィスコストの削減を狙ったものだったが、より積極的に働き方の変化に適応するためにこの仕組みを採用する企業が増えている。

 これまでIT企業での導入例が多かったフリーアドレスだが、この夏、メガネ販売チェーンのジェイアイエヌ(以下JINS)でも導入し生産性やコラボレーションの効果が上がっているという。

店舗と同じコンセプトでオフィスを設計

st_jins01.jpg 7月に引っ越したばかりのJINSの新オフィス。以前はmixiが入居していたフロアだ。ここで約100人の社員が働く。全国118店舗のスーパーバイザーや新製品の企画開発、マーケティングなどの拠点となっている
st_jins00.jpg こちらが旧オフィス。PCもデスクトップで席は完全に固定。なんとなく圧迫感を感じる

 JINSのオフィスに足を踏みいれると、私たちが普段良く目にしているオフィスとは異なる風景が目に飛び込んでくる。約140坪のオフィス中央に向かい合わせで座る長い机が2列に並び、窓際にさらに2列、こちらは窓の方を向いて、ビル20階からの眺望を楽しみながら仕事ができるように配置している。

 机の上にはノートPC、資料、文具が置かれているが、よく見かけるような資料棚や、袖机の類は一切ない。また、人が座っていないスペースにはものがまったく置かれていない。ベージュとホワイトで統一したオフィス什器(机やキャビネット)も相まって、まるで綺麗な食堂のような印象も受ける。まずはこれらの什器から見ていこう。

st_jins02.jpg フリーアドレスの肝とも言える机。幅1400ミリ×奥行700ミリの机を二人で使う想定になっている。これが6×2列で並び、1つの島には最大24人が座れる。机の下にはゴミ箱以外何も置かないルールになっていて、足下は広々

 これらの什器は、JINSが展開するメガネ販売チェーン店を構築するメーカーと同じメーカーに発注し、オフィスのデザインそのものも店舗設計を行っている事務所に依頼している。店舗同様にシンプルさや「目の高さよりも高いところにものを置かない」ことを徹底的に追及したそうだが、やはり目を引くのはこの長机だ。案内してくれたマーケティング室広報担当の中島英摩さん(写真)は「ハリー・ポッターに登場する食堂がコンセプトでした」と笑う。

st_jins03.jpg 天板の裏側に電源やLANケーブルを配線。机の上にはPC、書類入れ、文具だけで、とてもすっきりしている。出社時にこれらをロッカーやキャビネットから取り出し、帰宅時にはすべて元に戻すルールだ

 キャビネットにも工夫がある。ワークスペースにあるキャビネットや間仕切りの高さは統一していて、座れば作業に集中できる一方、立ち上がればオフィスを一望できる。これはこのあと紹介するオフィスの風通しの良さにも一役買っているのだ。

st_jins04.jpg ワークスペースに置かれたキャビネット。一見キャビネットに見えないが、扉を開けると収納スペースが現れる。高さは1100ミリ

どこでもすぐにミーティング

st_jins05.jpg 打ち合わせを行うJINSのスタッフ。手元に必要な書類もPCもあり、スムースにやり取りができる。会議スペースの合理的な利用や紙資源の削減にもつながっているという

 通常のオフィスではスタッフ同士の打ち合わせでも、ミーティングスペースに集まるまでに時間が掛かってしまったり、必要な資料をまとめて持って行くだけでも手間だったりするが、そんな無駄から解放されるのもフリーアドレスの魅力の一つだ。

 平日の午後に行った取材中も、オフィスのあちこちで打ち合わせが行われている。フリーアドレスなので、その日の業務内容に応じて、やり取りが多そうなスタッフ同士は予め近くに座っておけば、必要に応じてさっと打ち合わせをして、すぐに作業に戻れるというわけだ。

 先ほど紹介したキャビネットも、収納だけでなく、立ったまま打ち合わせを行うのに丁度良い高さに設計している。

 ここまでの写真で机の上に固定電話が一切ないことにも気づかれただろうか? 社員1人1人に1台ずつPHSを支給し、内線番号を割り当てている。当然外部からの電話も着信できるようになっており、万が一多忙で電話に出れない場合でも、部署毎の代表電話に転送する仕組み。オフィスの日常風景である「電話を回す」風景がほとんどみられないのも、仕事の能率アップにはつながっているはずだ。


st_jins06.jpgst_jins07.jpg (左)キャビネットが会議スペースに。立ったまま行う事で、短時間で打ち合わせを済ませる効果も。オフィス内には無線LANも用意しているので、ノートPCを持って移動し、そのまま作業や打ち合わせができる。(右)キャビネットと同じ高さで設計した間仕切り兼収納スペース。座れば作業に集中でき、立っている人とコミュニケーションも取りやすい。写真奥に並ぶのは部署毎にスペースが割り振られたキャビネットだ

ロッカーにも一工夫

st_jins08.jpg ずらりと並んだ個人用ロッカー。出社時にはここに個人の荷物はすべて収納し、仕事に必要なPCや文房具類だけをワークスペースに持ってはいる。鞄も持ち込み不可。上着も用意されたコートハンガーへ。椅子にかけたりするのは厳禁だ

 フリーアドレスを支えるのが、部署毎に割り当てられた書類キャビネットと個人ロッカーだ。多くのフリーアドレスを採用する会社と同様、JINSでもワークスペースには個人の鞄や上着を持って入らない、というルールを定めている。そのため、オフィスの手前には個人ロッカーが用意されているのだが、そこにもちょっとした工夫を施している。

 「フリー」アドレスだからといって、なんでも「自由」という訳にはいかない。中島さんは「そのメリットを十二分に発揮するためには、一定のルールを守ってもらうことが、とても大切です」と話す。出社時、帰宅時に荷物の移動の手間は発生するが、ワークスペースの快適さ、効率アップはそれを上回って余りある――ということのようだ。「明文化したルールというのはなく、実際にこのオフィスを使いながら、改善を加えています」と中島さんは言う。


st_jins09.jpgst_jins10.jpg (左)中には電源も用意されており、出社時に携帯電話をここで充電したり、帰宅時にノートPCを充電しておくことも。(右)ロッカーはポストも兼ねており、郵便物・宅配便などはここに投函される。これならフリーアドレスでも確実に届けることができる。ネームプレートはマグネットで簡単に移動が可能だ

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