名著『知的生産の技術』でおなじみ、2010年に90歳で亡くなった梅棹忠夫氏の神髄をのぞける展示「ウメサオタダオ展―未来を探検する知の道具―」に、アイドルユニット「Feam」と訪れたみた。
梅棹忠夫という人物をご存じだろうか?
民族学者、文明学者として活躍し、国立民俗学博物館初代館長を勤めた人物だ。誠 Biz.IDの読者には、京大式カードを一躍有名にした名著『知的生産の技術』でおなじみかもしれない。2010年に90歳で亡くなり、生涯を通じて7000冊以上の著作を遺した「知の巨人」。その足跡と、実際に梅棹氏が使っていた「知的生産の道具たち」に触れ、その神髄を知ることができる展示「ウメサオ タダオ展―未来を探検する知の道具―」が、東京お台場の日本科学未来館で開催されている。
筆者のような「梅棹ファン」にとって、この展示は必見なのは当然なのだが、震災があり経済と政治の混乱の中にある今、梅棹忠夫氏を知らない人にもこの展示を見てもらいたい。物事について深く考えを巡らし、それを他者と共有することは難しい時代を生き抜く術でもある――そんな思いで、今回アイドルユニット「Feam」(Officialサイト)と未来館を訪れた。
事情があり活動ができなくなった2010年に「未来の作り方」という歌詞をアメブロに書き残したリーダーのYukiさん。その歌が再始動のきっかけとなり再び活動中のFeamだが、二十歳そこそこの彼女達にとって、今日は「うめさおただお」という「知らないおじさん」についてはじめて触れる機会だ。果たして、何かをつかんでくれるのだろうか? 一抹の不安を覚えつつ、会場に入る。
京大式カードで知られる梅棹氏も、最初は研究やフィールドワークの記録は大学ノートに書き留めていた(この後紹介する氏の足跡を知る展示では、戦後、物資が不足する中で紙の入手に苦労したり、海外の調査で地図を持ち帰る際、スパイ嫌疑を逃れるためにバラバラにした地図の裏側にスケッチをしたといったエピソードも、実際の資料と共に知ることができる)。
しかし、ノートでは情報の共有や、検索性には限界がある。それを高めるためにその内容をカードに転記するスタイルに転じていき、やがて、最初からカードに情報を記入するワークフローができ上がっていく。
キャビネットにびっしりと格納されたカード、そして、さまざまなサイズの資料も定型サイズのオリジナルフォルダーに収められている。氏は65歳のときに失明しているが、その後より精力的に執筆(口述筆記)の速度が上がっていく。それを可能にしたのが、この膨大なデータベースなのだ。
「知的生産の技術」が上梓されてから40年以上がたつが、その考え方、情報との向き合い方は、現代の私たちにとっても刺激的で有益なものばかりだ。Evernoteのように、カード形式でクラウド上に情報を記録するサービスを利用する際にも、役に立つことは言うまでもない。
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