増税は消費税だけじゃない。大増税時代の税金を理解しよう大増税時代(2/6 ページ)

» 2012年01月30日 10時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

気になる消費税、実際の増税額は

 まだ決定ではないが、2014年4月に消費税が現行の5%から8%に、さらに1年半後の2015年10月に10%に上がる可能性が高い。日本が消費税を導入したのは1989年4月で、当時の税率は3%だった。バブル絶頂期、株価が最高値となった年だ。それから23年が経過。当時の小学生が今では30代なので、若い人は消費税は当たり前という感覚だろう。歳をとると記憶力も衰えるので、筆者なども消費税がなかったころの記憶は薄い。消費税導入前に駆け込みで住宅を購入する人が多かったことを思い出す程度だ。そして8年後の1997年4月に、消費税4%と地方消費税の1%を足して現在の5%になった。

 消費税には非課税、不課税(※)の品目がある。住宅用の家賃は非課税、土地も非課税、生命保険は非課税、罰金、反則金は不課税、所得税、住民税などの税金も不課税だ。天引き前の給与の内、所得税、住民税といった税金、健康保険、雇用保険といった保険関係は消費税の対象ではない。手取りから家賃を払っている場合はその部分も非課税となる。

(※)非課税の対象は、初めから課税対象ではない品目。不課税の対象は出資者の目的が事業などの対価で得るものではない、つまり企業や事業主の出資ではないものを示す。

 消費税をどれくらい払って(納めて)いるのかを考えてみよう。単純には100円の物を買えば消費税は5円、1万円なら500円だ。1カ月、手取り20万円で貯蓄するゆとりがなく、カツカツの生活をしてる場合を考えてみよう。もし家賃を支払っているならその部分は非課税、消費税が増税しても影響がない部分だ。仮に8万円の家賃を払い、スピード違反などの反則金もなく、残りの12万円を飲食代、交通費、買い物、携帯代、水道光熱費などに使ったとすれば、11万4286円を使って5714円の消費税を払ったことになる。消費税が10%になると使える金額は10万9091円、消費税は1万909円。5195円の増税、逆にいうと5195円分の買い物ができなくなる。

 年間で計算すると年収400万円のうち、税金、保険関係が年間で約80万円が天引きされ、毎月の手取りが20万円、ボーナス1回が40万円。手取り320万円から家賃を引いた224万円を全て消費したとすると、消費税5%の場合納税額は10万6666円、これが10%になると20万3636円。つまり、9万6970円の増税となる。1年間で10万円近い物が買えなくなると思うと、かなり大きな増税だ。

 もし貯蓄をすれば、その分はその時点では消費税を払わないので年間の消費税額は減る。100円の物を購入して5円、あるいは10円の消費税を納めるのは誰でも平等で、一般的に高収入の人ほど消費額が増えるので納める消費税は増える。しかし、高収入の人ほど貯蓄する率も増えるので、収入に対する消費税率は少なくなり、カツカツの生活をしている人の方が実質の消費税率が高くなるといわれている。

 もちろん貯蓄でいつか高額な物を購入すれば、その時点で多くの消費税を払うこととなる。貯蓄をしてもいつか使うから長期的には同じという考えもあるが、消費税の増税は収入の少ない人ほど、実質的な増税になるという「逆累進性」の問題があるという指摘もある。

 高額な買い物を考えている人は消費税の影響が大きい。代表的なのは住宅だろう。4000万円の5%は200万円、10%は400万円。5%の増税で、200万円納税額が増えることになる。家を買う、家を建てるとなれば時間がかかるので予定がある人は増税前に検討を始めるべきだろう。次は所得税の増税をみてみよう。

インフレ時代の確定申告

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