以降、本連載で述べるタイムマネジメントは「タイムマネジメント 4.0」と呼ぶこととします。タイムマネジメント 4.0の特徴は、自分1人だけ成功すればいいという考え方ではなく、周囲の人たち、あるいは社会の人たちとの豊かな人間関係を築くことを重視している点です。
私たちは、1人で生きているわけではありません。生活においても仕事においても、さまざまな役割を果たしながら日々の活動を行っています。自分自身の役割を見つめ、その役割の中で責任を果たし、貢献することで、豊かな人間関係を生み、充実した生活につながっていきます。
そもそも時間管理とは、貴重な時間を無駄にしないことですが、無駄にしてはいけないのは自分の時間だけではありません。ビジネスやプライベートにおける人間関係において、大切な周囲の人たちの時間まで無駄にしてしまうのが、最も罪深きことではないでしょうか。
一般的なタイムマネジメントの手法は、そのほとんどが自己完結型です。つまり、時間管理は自分の問題であり、管理する出来事のほとんどが自分で着手するべきものとなっています。目標を立案し、行動計画を立てそれをスケジュールに落とし込むまではいいのですが、実際の毎日の時間軸の中では1人でできるものは限られており、多くの場合は他の人と協働、もしくは調整して行うものです。
そういった他人とのやりとりやバランスといったものを視野に入れておかないと、計画が遂行できる確率は低くなり、かつそれが絵に描いた通りに遂行できたとしても、独りよがりになってしまう傾向がでてきます。
そのため、他の人とのかかわりとなる自分が担っている役割のバランスや、他の人とどのように効果性を発揮し、最大限の結果を求めていくかということも考慮する必要が出てくるのです。私の時間から私たちの時間を考えなければ、最大の効果を得ることはできません。
ハーバード大学医学部の心理学者であるスティーブン・バーグラスが、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューの2011年7月号の「時間を有効活用できない人たち」の中で、時間の有効活用ができるかどうかは、当人のみならず、周囲の人たち、部門の生産性、事業の収益性に大きく影響を及ぼすと紹介しています。
その中で、時間浪費癖には4タイプあるとして次のようにまとめています。
このような人は自分の時間を無駄にしているだけでなく、周囲の人たちの時間を浪費している問題であるとしています。
こうした、周囲の人との関係を考えたタイムマネジメントを行うときに、鍵となる考えた方が役割です。私たちは会社の中、家族、地域において、さまざまな役割を担って生活をしています。その役割を通して、周囲の人に貢献することで人間関係を築いていきます。
役割というのは、コヴィー博士も指摘するように、ある役割が他の役割の代わりとなることはできません。会社でいくら課長としての役割を果たしたところで、それが家族における役割の代わりにはなりません。
つまり、役割と役割のバランスを取りながら「この役割の中で、何を果たすべきなのか」を毎週、毎日、考えることが重要となります。
また、役割を考えることは、まさに効率ではなく効果を考えることになります。人間関係において、「手っ取り早く」「10分だけ……」「面倒だから取りあえず……」といった効率だけを考えたアプローチでは、信頼関係を築くどころか、むしろマイナスになってしまうことさえあります。効率を考えるのではなく、「本当にこの人にとって効果的なことは何か」を考えることで、より深い人間関係を築くことに近づくのです。
タイムマネジメント 4.0では、自分1人よがりの時間管理ではなく、役割を考えた上での貢献、そして信頼関係を築くことを志向します。
本連載の内容は、2011年12月に発売された『タイム・マネジメント4.0―ソーシャル時代の時間管理術』(竹村富士徳・著、プレジデント社・刊、255ページ、1680円)をもとに作成しています。
フランクリン・プランナー・ジャパンは、この「タイム・マネジメント4.0」を実践するための、第4世代時間管理ツール「フランクリン・プランナー」を提供しています。
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