ここで挙げた構造化というのは、冒頭の「ごまかし勉強」の例で挙げた原理原則を考えることなわけです。ある文書を「素材→加工→用途」という形に整理することは、「素材→加工→用途」の形で理解できる問題がある、という原理原則を発見することです。その原理原則を考えることを、自分が書く1つ1つの文書ごとに3分でいいからやってみましょう。ゼロは何回繰り返してもゼロですが、3分だけでも考えてみれば、10回に1回ぐらいはふとひらめくことがあります。
「あれ? ひょっとして『○○→○○→○○』という構造でいけるのかな?」と、ひらめいたら、その構造で文書を整理し直してください。見違えるように分かりやすくなっているはずです。
実は、そうして一度自分で考えて気がついた構造というのは、強く記憶に残るので、似たパターンが次に出てきた時は非常に短時間で分かるようになります。初めて気付くまでは「3分考えてみるのを10回繰り返してやっと分かった」ようなパターンでも、一度分かってしまえば二度目からは10秒で分かる。そんなものなんです。同じ仕事をしていると同じパターンの文書に何度も出会うので、これを繰り返していると短時間で構造を把握できる文書がどんどん増えていきます。
何ごとも最初のうちはうまくいかないものですが、それは当たり前のことです。1日に3分だけでも構いませんから、自分が書いた文書について構造化を考える時間を取ってみてください。
もう一度書きますが、ゼロは何度繰り返してもゼロです。(A)のところで止まっていたら、(C)の力はまったく身につきません。でも、3分だけでも繰り返していけば10回に1回ぐらいはひらめくことがあります。それはちょっとした気付きかもしれませんが、誰に教えられたわけでもない、自分で考えて自分で見つけた自分の武器になります。それを大事にしてほしい。
企業研修をするときも、原稿を書くときも、私はそう願っています。
当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」というご相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp)。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。
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著者・開米瑞浩氏が講師となって「アイデア・思考を見える化」をテーマとするセミナーを開催します。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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