人を第1に考え、1+1=3以上の効果を得るソーシャル時代の時間管理術

長期的な成果を得続けるには、自分1人だけ成功すればいいという考え方ではなく、周囲の人たちと豊かな人間関係を築くことが重要です。前回に続いて、タイムマネジメント 4.0を実現するためのポイントを紹介します。

» 2012年02月10日 11時00分 公開
[竹村富士徳,フランクリン・コヴィー]

 本連載「ソーシャル時代の時間管理術」では、知識労働者の生産性を上げる鍵となるものとして、従来の能率や効率を求めるタイムマネジメントではなく、効果的であることを求める「タイムマネジメント 4.0」を提唱しています。

 前回「1人よがりの時間管理から脱却するには」に続いて、タイム・マネジメント 4.0を実現するためのポイントを紹介します。

協業、協力による相乗効果

 言うまでもなく、タイムマネジメントの目的は生産性を高めることです。そして仕事においても、普段の生活においても、生産性を高めようとするならば、自分1人だけで成し遂げられることはほとんどありません。

 あなたのビジネスを考えても、必ずチームメンバーや他部門の人々、あるいは顧客やパートナーなど、あらゆる人たちとの協業、チームワークが必要となるはずです。自分にとってだけのメリットを得たとしても、それがチーム全体のメリットとなっていなければ、組織として意味がないものになってしまいます。

 集合知や学習研究で著名なキース・ソーヤーは著書『凡才の集団は孤高の天才に勝る』(ダイヤモンド社)の中で、画期的なイノベーションを生み出すのは、いわゆる天才と呼ばれるような1人の人間が生み出したものではなく、グループに生まれる天才的発想「グループ・ジーニアス」だとし、フランス・ヨハンソンの『メディチ・インパクト』(ランダムハウス講談社)を紹介しながら、異なるものが出会うことで、意外性に満ちた革新的なアイデアが生まれると解いています。

 またイノベーションの多くは、ユーザーの提案やユーザー自身が考案したものであるというデータもあると著書の中で紹介しています。つまり、異なる知見や価値観、パラダイムを持つ人同士が交流し、協力しないながら、よりよいものを求めていくプロセスに、イノベーションや大きな成果は生まれるものなのです。タイムマネジメントにおける最も発揮しなければならないのは、相乗効果に他なりません。

1+1=3以上の効果を得る

 相乗効果を発揮するとは、あなたの力と他の人の力を合わせることで、2人の力の和よりさらに大きな力を発揮することです。つまりあなたの力が1で、他の人の力も1とすれば、1と1を合わせて2以上の成果を生み出すことです。

 しかし、相乗効果を生み出すことは簡単ではありません。あなたと他の人の意見が同じならば、他人か自分はどちらか余分ということになるでしょうし、また他人との違い故に対立してしまったら、1+1が1以下になり得る可能性もあります。

 相乗効果とは、1+1を1以下にしてしまうことではありません。会社においては、大きなプロジェクトから小さな日常業務まで、このような機会は数多くあるでしょう。そのときに、自己完結を狙ってしまってしまい人々とのかかわりのみからしか得ることができないと、1+1=2以上の効果を得ることは不可能になってしまいます。

「人」が第1、「モノ」はその次

 詳しくは後述しますが、私たちにとって重要なこととは、実は「人」について考えることが多く、ある意味、本質的に相乗効果的であると言えます。

 例えば、あなたが重要な仕事をこなさなければならず、締切りも近づいているとします。通常ならどのような計画をたて仕上げようかと、いわゆるタイムマネジメントを行うと思います。しかし、次のように考えることはできないでしょうか。

 「仕事を効率的にこなす方が重要か、今後一緒にうまく仕事ができるように従業員の力を伸ばすことに時間を割くほうが重要だろうか」

 緊急性ではなく物事を重要性の観点から見たとき、私たちのパラダイムは大きく変わります。つまり、人の観点から眺め、相乗効果的な発想になるのです。他にも、相乗効果を発揮するために、次のような問いかけを自分自身にしてみてください(キングベアー出版『7つの習慣 重要事項を優先する』より)。

  • 他人を監督、管理することに時間を割く方が重要か。彼らの創造力を活かして、自己管理能力を身に付けさせる方が重要か
  • 問題解決のために、自分の時間をスケジュールする方が重要か。あるいは他人と一緒に取り組み、互いの期待を明確にする時間を取る方が有効か
  • コミュニケーション不足によって生まれた問題の解決に時間を費やすことが重要か。効果的なコミュニケーションができるような人間関係づくりのほうが重要か

 相乗効果的タイムマネジメントの考え方は、「人」が第1であり、「モノ」は第2です。リーダーシップが先で、マネジメントは後です。さらに効果性が第1、効率性は第2、目的が第1、方法は第2なのです。

 この相乗効果を発揮するためには、相乗効果を発揮するチーム間、あるいは人間関係において、信頼関係が不可欠です。リーダーシップ教育の権威であるリチャード・クーゼスは、『リーダーシップ・チャレンジ』(海と月社)の中で、リーダーとして信頼関係がいかに重要かについて、次のように述べています。

 人々が最も求めているのは「信頼できるリーダー」なのだ。リーダーシップの基礎は信頼にある。リーダーは何よりもメンバーから信頼されなければならない。あのリーダーの言葉は信頼できる、組織の仕事に熱心に取り組んでいる。人を導くための知識やスキルを備えているとメンバーに信じてもらえなければならない」

 また、スティーブン・M・R・コヴィーは、著書『スピード・オブ・トラスト』(キングベアー出版)の中で、「信頼は全てを変えることができ、成果を出すためには、信頼ほどスピードが早いものはない」と語っています。

 私たちは、周囲の人たち、社会との関係の中で生きています。そして信頼に基づいた強い関係の中で、お互いの力の和を上回る相乗効果を発揮していくことができるようになります。タイムマネジメント4.0は、自分1人で完結するのではなく、周囲の人との相乗効果を発揮することを目指すのです。

連載『ソーシャル時代の時間管理術』について

 本連載の内容は、2011年12月に発売された『タイム・マネジメント4.0―ソーシャル時代の時間管理術』(竹村富士徳・著、プレジデント社・刊、255ページ、1680円)をもとに作成しています。

 フランクリン・プランナー・ジャパンは、この「タイム・マネジメント4.0」を実践するための、第4世代時間管理ツール「フランクリン・プランナー」を提供しています。


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