出版記念講演はやらないの?518日間のはい上がり(1/2 ページ)

なんと出版社の目に留まり、悪習慣改善をテーマにした書籍を出版することになった金田。とはいえ初めてのことで執筆は難航。しかも販促のためにブログを書け、出版記念パーティーをやれと仕事は増える一方であった。

» 2012年02月10日 16時51分 公開
[森川滋之,Business Media 誠]

連載「518日間のはい上がり」について

 この物語は、マイルストーンの水野浩志代表取締役の実話を基に再構成したビジネスフィクションです。事実がベースですが、主人公を含むすべての登場人物は作者森川滋之の想像による架空の人物です。

前回までのあらすじ

 主人公の金田貴男は起業したが倒産し、1500万円の借金を負う。一念発起して禁煙に“成功”。意外なビジネスチャンスを感じ、禁煙セミナーを開催するも緊張して大失敗してしまった。失意のどん底にあったが、週1回セミナーをやり続けることを決めて金田自身も変わった。「今のとうちゃん、カッコイイよ」――。そんな妻の一言で大いに励まされる金田。大失敗の禁煙セミナーから立ち直り、週1回のセミナー開催を自分に課して継続していたところ、なんと書籍化の依頼が舞い込んできたのである。



 執筆に専念するためにバイトは辞めた。表彰はされなかったけど、自分ではよく頑張ったと思う。出版の話は表彰の代わりだったんだろう。

 本を書くなんてはじめてのことだったので、どう書いたらいいかさっぱり分からない。自分では作文は得意だと思っていたけど、そうでもなかったようだ。進まないうえに、さっき書いたところがすぐに気になる。

 編集の三田さんはある程度書いてからまとめて見直したほうがいいとアドバイスをくれたが、あまりにもひどい文章なので、まとめて直すなんてとんでもないと思えてくる。1日5ページずつ書き、推敲も入れて2カ月で書き上げようと思ったんだけど、1日2ページも書ければいいほうだった。1ページも書けない日もある。

 これじゃあ、いつ書き終わるんだろう。200ページも300ページもあるものを書けるなんて、やっぱり特殊な才能じゃないのか? 書くのが遅いだけならいいが、毎週のセミナー開催とセミナー通いで書けない日もある。本当に本を出すやつらってどうなってんだろう。みんな、あれか? ゴーストライターってやつか?

 なんて妄想している暇があればどんどん書けばいいんだろうけど、行き詰まるとアホなことばかり考えるようになる俺もいて、けっこう落ち込んでしまう。こうなるとまたモチベーションが低下するんだよなあ。

 ということで、本を書けども遅々として進まないというのが最近の状況だ。そんなときに三田さんから、さらに忙しくなるようなことをお願いされてしまった。

 「金田さん。ある程度売れるほうがいいですよね?」

 「本ですか。もちろんです」

 「それならね、ちょっとお願いがあるんです。爆転ブログはご存じですか?」

 最近(2003年ごろ※編集部注)ブログというのが流行りだしたので、一応チェックはしていた。爆転ブログは、ネット上のショッピングモールである爆転マーケットが運営しているブログだ。元々はネットショップの店長用だったのが、今では一般人にも開放している。ただ元が元だけに店長や社長、あるいは自営業者のブロガーが多いようだ。そこにブログを書いて知名度を上げて欲しいというのが三田さんのお願いだった。

 「でも、本の執筆も進んでないんですけど……」

 「その辺は、本に書く内容、例えばコラム欄に載せたいようなものを書いてもらえればいいです。逆にコメントなんかがヒントになって進むかもしれませんしね」

 「なるほど」

 「でね。ぜひ、他のブロガーでね、これは思うような人にコメントを入れて仲良くなって欲しいんですよ」

 「どうしてですか?」

 「本が出たときに、そのブロガーに応援を頼むんです。中には毎日数千から数万アクセスあるブログを書いている人もいるので、結構な宣伝効果があるんですよ」

 三田さんは、できればメルマガもリニューアルして、悪習慣改善をテーマにしてほしいと付け加えて電話を切った。本を書くのも大変だけど、売るのはもっと大変そうだ……。

 ということでメルマガをリニューアルして、ブログをやり始めた。メルマガはいいのだけど、ブログのほうはネタがなかなか見つからずに困っていた。人のブログを参考にしたところ、いろんなタイプがいたが、なんとなく自分をさらけ出している感じのものが好感が持てた。コメントもそう記事のほうが多いようだ。

 さらけ出すだけなら、俺にもいっぱいあるよなあ。ただ、どうなんだろう。俺の話なんかうけるんだろうか? と思っていたら、たまたま読んだ爆転ブログの記事にこんなのがあった。

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