成功している投資家に共通するのは、自分なりの明瞭な投資哲学を持っているということ。マスメディアなどの声に左右されず、自分の足で歩いて情報を探し、自分自身の判断基準に従って投資を判断することが重要なのです。
本連載は『人生の大問題を図解する!』(光文社)の内容からポイントだけをピックアップしています。読者の皆さんのライフプランを見直し、後悔しない人生を送るための手助けになればと願っています。
人生の重大事の中から、「お金」「語学力」「仕事」「家族」「思考力」という5つのテーマで衝撃的かつ客観的なデータをいくつか紹介します。
第8回は「理解していないものには、手を出さない勇気」です。
日経平均株価が7カ月ぶりに9800円台――株価に代表されるように、金融業界の指標は非常に移ろいやすいもの。欧州の金融危機はこれから正念場だというのに、短期的には市場が熱くなっているようです。
しかし、誠 Biz.ID読者の皆さんは、決して雑誌や新聞の「この銘柄が熱い」みたいな記事をまともに考えてはいけません。誰もが周知の事実を基に、他人を出し抜くなんてことはできないのです。投資の世界で勝ち抜く人は、他人の持っていない情報を持っているか、自分なりのぶれない投資の軸を持っているかのどちらかです。かの有名な投資家バフェットも言っています。「リスクとは、自分が何をやっているかよく分からないときに起こるもの」と。
例えば私たちは、株式、債券、不動産、投資信託、先物、商品取引、保険などの金融商品のことをどれだけ理解しているでしょうか? 「W杯もあるし、資源大国だから、これからはブラジルレアルだ!」という記事などに惑わされて、何の調べもせずに、レアル建ての債券などを購入している、そんな具合ではないですか?
もしも自己資金の多くをブラジルに投資するのであれば、ブラジルの情報をもっと収集したり、場合によってはブラジルを訪れて、肌身でその発展を感じるかどうかということをやってもよさそうです。しかし、多くの人がそうした一時情報を取らずに、マスメディアや金融機関のプレゼンを信じて投資先を決めてしまいます。
11歳で初めて株を購入し、現在では総資産470億ドルとなった類稀なる投資家バフェットという人がいます。彼が投資する際の基準としている4つのポイントを紹介しておきましょう。
「流行というだけで投資したらバブルがはじけた」「経営者が誰かも知らずに株式を買ってその後不正経理で倒産した」そんな話を思い起こしてみると、バフェットの持つこうした軸が私たちに欠けている、そんな気がします。
マスメディアやインターネット上の情報よりも「自分自身が見た、聞いた、行ってみた」一次情報を大切にしましょう。バフェットと並ぶ著名投資家のジム・ロジャーズは、ジョージ・ソロスとともにクオンタムファンドを立ち上げ、10年で4000%というリターンを稼ぎだし、37歳で引退した天才投資家です。
別名、冒険投資家の異名を持つジム・ロジャーズは、ガールフレンドとバイクや車で世界を一周。発展性を見込める街を見つけると口座を開設して、投資を行います。旧ソ連時代にバイクで横断するために何十回と政府に掛け合って渡航許可をもらったり、立ち往生すると死を意味するような荒野、砂漠、盗賊やテロリストの街もバイクや車で走り抜けたり。文字通りの冒険家です。
私も沢木耕太郎に感化されて諸外国を旅した輩ですが、ジム・ロジャーズほどの手間、暇、生命のリスクを背負って旅行したことはありません。
さらに彼は、旅で訪れた国で企業家や政府の役人に直接会い、その考えを聞き、また街を回って国民の考えに耳を傾けます。一般的な投資家が関心も示さないような未開拓な市場を先に発見し、何よりも自分の直接見聞きした一次情報を大事にすることが、いかに投資にとって大事なことかを気付かされます。そして、前述した投資家タイプに向いている「他の人を出しぬけるほどの情報」「他の人に負けない投資に関する知見」の両方を持ち合わせているということになります。
ウォーレン・バフェットにせよ、ジム・ロジャーズにせよ、成功している投資家は誰かのお仕着せではない、自分なりの明瞭な投資哲学を持っています。そして、自分の足で歩いて情報を探し、自分自身の判断基準に従って投資を判断する。あなたも投資で生き抜くのであれば、そうあるべきです。世界中をバイクで旅する途中で村上龍に東京で出会ったときに、ジム・ロジャーズが色紙に入れた言葉が彼の投資哲学を物語っています。
「人生は短い。遠くまで行け。そして深く考えよ」
本連載の内容は、2011年12月に発売された『人生の大問題を図解する!』をもとに作成しています。
「図解思考」シリーズでおなじみの著者・永田豊志が、これから始まる“とんでもない未来”に、私たち日本人が生き残るための「5つの戦略」を、豊富な図解で解説します!!
本書は、これから生き延びていくために重要な5つのテーマ、すなわち「お金」「英語(語学力)」「仕事」「家族」「思考力」のそれぞれについて、ショートストーリー、関連データ、アクションプランの3部立てで図解し、一緒に考えてもらう構成になっています。
「何となく危ないのは分かるけど、本当のところはよく分からない」という問題も、できるだけ分かりやすく描いてみました。 (冒頭の挨拶文より)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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