パケット定額ではない生活を3カ月過ごしてモバイルネイティブで行こう(2/2 ページ)

» 2012年03月26日 12時30分 公開
[松村太郎,Business Media 誠]
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結論から言うと3G回線のデータ通信を「気にしすぎていた」

3カ月で送信は293Mバイト、受信も1.5Gバイトしか使っていなかった

 結論から言うとVerizon Wirelessで契約したiPhoneでは、気にしすぎて3G回線のデータ通信をあまりに使っていなかった。3カ月で送信は293Mバイト、受信も1.5Gバイトしか使っていなかったのだ。

 キャプチャは、iPhoneを手に入れた2011年11月15日から、2012年2月14日までリセットせずに使っていたモバイルデータ通信量の累計の画面だ。モバイルデータ通信とは3G回線でのデータ通信利用。このカウントが前述のデータ通信プランにカウントされる分になる。

 つまり月間2Gバイトまで使えるところを800Mバイト弱しか通信しなかった――ということになるのだ。散歩中に撮影した写真やビデオをInstagramやPathなどでアップロードしたり、アプリのアップデートをしたり、地図の検索だって毎日のように使っていた。時々、音声のSkypeやViberの通話もしていた。しかし、結果的にはこの数字。あと1.2Gバイトも余裕があったのだ。

 だからといって「何か無理をしていたか」と言うとそういうわけでもないし、不自由があったかと言いうとそれもまた違う。ユーザーとしては安心感が強いパケット定額料金にこだわっていたのは一体何だったのか。同時に、日本のパケット定額料金より少し安く、2Gバイトプランが合ったら、むしろこちらで十分ちゃんと使えているのではないか、とすら思ったほどだ。

極度のWi-Fi化が勝因

 改めて、なぜこの程度の通信で十分だったのかを考えてみると、街中が極度にWi-Fi化されているということがある。

 米国の西海岸らしいインフラの整備具合だと思うが、カフェやレストラン、学校や図書館などの公共施設、そしてもちろん自宅もだが、しばらく留まる場所には必ずといっていいほどWi-Fiを配備していて、もちろん簡単に利用できる。そして、米国の固定ネット回線も遅いとはいえ、3G接続の回線よりは速く、Wi-Fiを利用するインセンティブは十分に大きい。

 これらの要素から街を歩いていたり、公共交通機関や車などで移動したりしている以外の時間帯はほぼ常時Wi-Fi環境下にあるわけだ。前述の3Gモバイルデータ通信のカウントに影響を与えずインターネットにアクセスできるようになっていた。そのため、腰を据えて大きなデータ量の通信を行うときには、ほぼ必ずWi-Fiでのアクセスになっていたのだ。

 Wi-Fi環境は日本でも徐々に整備が進みつつある。郵便局や市役所などの公共機関のWi-Fi環境は遅れているようだが、カフェ、大学、地下鉄の駅、新幹線の中など、都市部を中心に多くの場所で携帯電話会社あるいはその他の会社が提供しているWi-Fiを利用でき、お店自身が用意している回線も増えている。

 ソフトバンクのやauのWi-Fiスポット、NTTドコモが提供する「Mzone」なら、一度設定すればいちいちアプリを立ち上げたりブラウザアクセスでパスワードを入力せずに自動的にログインできる仕組みが備わっており、使い勝手もいい。都市部であれば、日本でも同じような状況を体験できるはずだ。

 1点状況が変わってきたのは、米国では4G LTE、日本ではWiMAXやXiのような次世代の高速通信の普及だ。場合によっては自宅の回線と同等か、それより速い場面すらあり、速度と料金でWi-Fiの優位性が崩れるかもしれない。米国や日本でのLTEなどの使い方をもう少し観察して、また紹介したいと思う。

行動の変化に着目

 元はと言えばデータ通信の料金が定額でないことから始まった、スマートフォンでのデータ使用への注目だったが、段々普段の何気ない行動への影響に注目すると、街の使い方、あるいはビジネス、人の習慣を活用したアイディアの元になるのではないだろうか。

 例えばケータイやWi-Fi以前は、ネットにアクセスしてメールを読み書きするのはパソコンの前と決まっていた。しかしこれが解き放たれたインパクトがあった。しかし長いメールを書こうとしたり、大切なメールを送ろうとするときは、歩きながらではなく、やはりどこかのカフェに座ったり、自宅のソファでメールを書くだろう。通信の場所が自由になったからといって、全ての行動が場所からフリーになったわけではないのだ。

 ノマドワークの文脈で日本ではスターバックスが仕事の場所として活用されるようになった通り、例えば映画を観る場所、YouTube動画を撮影してアップロードする場所、ビデオチャットをやる場所みたいなものがWi-Fi環境下に特別に用意されてもいいわけだ。

 個人の行動を振り返ってみても、場所が選べるからこそ、最適な場所を選ぶことができるようになったはずだ。もちろん自由にどこでも通信ができることがモバイルの良さであり、場所を越えて仕事をしたり、コミュニケーションを取ったりできるようなったことは価値だった。

 しかし一方で「何かをする場所」の再定義が始まっているように感じる。カレンダーや自分の行動パターンから、目的と場所の選択の関係性が最適かどうか、チェックしてみるといいだろう。

筆者プロフィール:松村太郎(まつむら・たろう)

東京、渋谷に生まれ、現在は米国カリフォルニアのバークレイで生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年ごろより、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(Web/モバイル)の関係性について追求している。


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