名刺には“戦闘力”がある――ビジネスを変える名刺手帳名刺は99枚しか残さない

名刺を99枚まで絞り込むと、驚くほどにビジネスを回せるようになる――。そんな名刺活用術を詳細に解説したのが書籍『名刺は99枚しか残さない』。本連載ではその中から一部を紹介する。

» 2012年04月23日 10時00分 公開
[荒木亨二(荒木News Consulting),Business Media 誠]

連載「名刺は99枚しか残さない」について

 名刺を99枚まで絞り込むと、驚くほどにビジネスを回せるようになる――。本連載は4月27日発売のメディアファクトリー新書『名刺は99枚しか残さない』から、序盤の一部を転載したものである。

 「ビジネスの本質はいたずらに名刺を増やすことではなかった。名刺を減らすという“逆転の発想”こそが人脈を呼び込み、ビジネススタイルを劇的に変えた」。本書は、十数年にわたってコンサルティング業を手掛けてきた著者の経験に基づく、実践的なビジネス書である。

 名刺を99枚に絞り込む「9つの法則」、名刺を人脈やプロジェクトごとに収納する「4つのファイリング法」など、まずは「99枚名刺手帳」の作り方を詳細に解説。さらには、ビジネスアイデアに効果的な発想をもたらす「名刺サーフィン」や「名刺マインドマップ」など、著者が編み出したオリジナルの名刺活用テクニックを初公開する。

 おそらく世界でも類を見ない名刺活用法となるだろう本書。ぜひとも実際に本書を手に取り、世界に1冊しかない「あなただけの名刺手帳」を作っていただきたい。



 名刺交換で受け取った膨大な数の名刺を99枚にまで絞り込み、専用のホルダーに収め、最強の発想支援ツールとして日々のビジネスに活用する。これが「名刺99枚法」の基本的な考え方です。そして、99枚の名刺を収める専用のホルダーを「99枚名刺手帳」と呼びます。

デスクの上には常に「名刺手帳」

 名刺手帳は、ただの名刺ホルダーのように見えながら、あなたの日々のビジネスに驚くほどの効率化をもたらし、同時に柔軟な発想力を付与する、いままでにないビジネスツールです。ここでは、名刺手帳とはいったいどのようなものなのか、そして、活用することで具体的にどんなメリットが得られるのかを解説していきましょう。

「システム手帳+名刺リフィル」で構成

 百聞は一見にしかず。まずはこちらにある、私が現在愛用している名刺手帳の写真をご覧ください。

名刺手帳とは、バイブルサイズのシステム手帳に、透明ビニール製の名刺リフィルだけを収めたもの。名刺リフィルには表(右)側だけに名刺を収納します
外見はちょっと変わったヘビ革だが、一般的なバイブルサイズのシステム手帳

 外見はちょっと変わったヘビ革ですが、一般的なバイブルサイズのシステム手帳です。しかし中を開いてもスケジュール表、ダイアリー、アドレス帳、ToDoリスト、メモパッドなどの一般的な紙のリフィル(システム手帳用カード)は一切入っていません。ヘビ革のバインダーに収められているのは、透明ビニール製の名刺リフィルだけ。

 バイブルサイズ用の名刺リフィルだと、横向きにした名刺が縦に3枚入ります。リフィルは透明なポケットのため、本来はリフィル1枚に表裏で名刺6枚が収納できますが、私はあえて表側にしか収納していません。裏側は、ポストイットを貼る「メモスペース」として使うためです。名刺を見ていて思いついたビジネスアイデアは、すぐにポストイットにメモして、名刺の裏に貼っておくのです。名刺の裏(正確にはリフィルの裏ページ)にポストイットを貼るのは、「どの名刺」に触発されたアイデアか? を明確にするため。名刺とメモがリフィルの表・裏になっていれば、バインダーからリフィルごと外して移動させるときも、メモが迷子になりません。

戦いを勝ち抜くための精鋭を選ぶ

 ひと口にいって、名刺手帳とはいったいどんなビジネスツールなのか。

 1970年代生まれの私には名刺手帳を「トレーディングカードゲームの最強のデッキ」にたとえるのがわかりやすいのですが、ご存じない人のために、まずはこのゲームのことからご説明しましょう。

 トレーディングカードゲームとは、あるシリーズになったカードを使ってプレイヤー同士が1対1で対戦するカードゲームのこと。トレーディングカードは日本では「トレカ」とも呼ばれ、コレクター同士のあいだで交換(トレーディング)も盛んに行われています。つまりゲームに使われるだけでなく、コレクションの対象にもなっているわけです。

 トレーディングカードゲームが大きなブームになったのは、アメリカで93年に「マジック:ザ・ギャザリング」というゲームが誕生してから。その後わが国でも「ポケモンカードゲーム」「遊戯王デュエルモンスターズ」「デュエル・マスターズ」などのカードゲームが登場し、それぞれ大ヒットしました。

 トレーディングカードゲームの特徴は、プレイヤーが自分だけの「デッキ」を作ってゲームに臨むこと。デッキとは、プレイヤーがゲームに使える、ひとそろいの手持ちのカードを指します。デッキの枚数はカードゲームごとに30枚、40枚、60枚と上限が決めらており、限られた枚数でいかに最強のデッキを作るかが、プレイヤーの腕の見せどころ。この、自分なりにカードの組み合わせを考えるところが、カードゲームの醍醐味の1つになっています。

 それぞれのカードゲームには数百〜数千種類のカードが用意されていて、攻撃力の高いカード、防御力の高いカード、魔法が使えるカードなど、1枚1枚に特色があります。プレイヤーはカードを購入したり、仲間と交換したりしながら、自分で「最強」だと思える自分だけのデッキを作っていくわけです。

 名刺手帳の作り方も、カードゲームのデッキを作る作業とよく似ています。数多くの名刺(カード)のなかから、99枚(「マジック:ザ・ギャザリング」は通常60枚)の精鋭を選び出し、自分が考える最強の戦闘集団を作っていく。この「戦いを勝ち抜くために、手持ちのカードのなかから限られた数の精鋭を選ぶ」という考え方が、「名刺99枚法」の基本理念であり、それを具体化したものが名刺手帳だといえるでしょう。

1枚1枚の名刺には戦闘力がある

 「名刺99枚法」の、「戦いを勝ち抜くために、限られた数の精鋭を選ぶ」という考え方の前提に、重要な基本理念があります。それは、「1枚1枚の名刺には、それぞれ固有のビジネス戦闘力がある」ということ。本書ではこれからも「最強の99枚を選ぶ」という表現をよく使いますが、ビジネスマンである私たちにとってその「最強」とは、「ビジネス戦闘力が最強」という意味だとお考えください。

 読者の皆さんもすでにお気づきだと思いますが、名刺1枚1枚に戦闘力があるという考え方そのものが、実はトレーディングカードゲームの発想とよく似ています。

 種明かしをすると、10年ほど前に私が「名刺99枚法」を思いついたとき、頭のなかにトレーディングカードゲームのイメージがありました。私自身にカードゲームで遊んだ経験はなかったのですが、どんなものかは漠然と知っていたので、気づかないうちに影響を受けていたのだと思います。

 もちろん、「名刺手帳」と「カードゲームのデッキ」とでは、似ている点もあれば、まったく違っているところもあります。

名刺手帳とトレーディングカードゲームの比較
比較ポイント 名刺手帳 カードゲームデッキ
戦場(フィールド) 現実のビジネス社会 空想科学世界
明確な敵はいない 相手プレイヤーとそのデッキ
カード枚数 99枚 30枚/40枚/60枚
カードの戦闘力 不記載 記載
カードの戦闘力アップ ある条件下で可能 特定のカードがあれば可能

 細かな違いは上記の表をご覧いただきたいのですが、最大の違いは、カードの戦闘力がカード自体に記載されているかどうか。名刺にはもちろん戦闘力などは書かれていませんから、持ち主であるあなた自身が評価・判定しなければなりません。

 また、似ていないようで少し似ている点もあります。それは、カードの戦闘力を大幅にアップさせる方法があるということ。

 カードゲームの場合、特定の場面や特定のカードと併用することで、あるカードの戦闘力を飛躍的に高めることができます。名刺についても、受け取った後のあなたの行動次第で、戦闘力を大幅にアップさせることが可能です。詳しくは後で述べますが、その名刺の人物とあなたが関係を深めれば深めるほど、名刺の戦闘力はアップするものなのです。

ビジネス戦闘力とは何か?

『名刺は99枚しか残さない』 本連載はメディアファクトリー新書『名刺は99枚しか残さない』からの転載です

 おぼろげながらイメージはしていただけたでしょうか。「名刺99枚法」では、99枚に絞り込んだ名刺をそれぞれの人物の象徴と見なし、名刺(の人物)の持つビジネス戦闘力を、自分のビジネスに積極的に活用していくことを目指しています。

 では、名刺のビジネス戦闘力はどのように判定するのか。ポイントは2つあります。1つは、その名刺の人物が実際に持っている、仕事上の能力やスキル。そしてもう1つが、その名刺の人物とあなたとの親密度。公式化すると、次のようになります。

  • 名刺のビジネス戦闘力=名刺の人物のビジネススキル×あなたとの親密度

 この公式にある「名刺の人物のビジネススキル」は、あなた自身で判定するしかありません。次回(4月25日公開)はこの判定の方法を紹介しましょう。

著者紹介:荒木亨二(あらき・こうじ)

 1971年、千葉県生まれ。ビジネスコンサルタント。荒木News Consulting代表。早稲田大学教育学部で心理学を学び、卒業後、帝人に入社。半年で退職。その後PR会社で働きながら独自のマーケティング理論を確立し、28歳でフリーランスとして独立。以降、全国展開する書店の経営企画室向けにマーケティングリポートの執筆やセールスプロモーションのプランニングなどを手掛ける。その他、PRコンサル、新規ビジネスのプランニング、カルチャースクールの企画開発など、業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う。


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