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» 2012年05月10日 12時00分 UPDATE

アイデア発想実践記・番外編:自分専用のアイデア発想道具を作る方法

「アイデア発想実践記」連載の番外編として、SCAMPERやTRIZなどの発想トリガーを取り入れた創造工学的な道具作りのアプローチ方法を紹介します。

[石井力重,Business Media 誠]
shk_idea01.jpg 発想力を引き出す新感覚トランプ「アイデアトランプ」。価格は3500円

 世の中にあるさまざまな発想メソッドを、実際に試して実験、検証していく連載「アイデア発想実践記」で監修役をしているアイデアプラント代表の石井力重です。

 先日、私が開発した発想力を引き出すトランプ「アイデアトランプ」を用いて、連載筆者の中山さんたちが「ソーシャルゲーム未体験者がやってみたくなるゲーム」のアイデアを発想していました。いつもはその後、私のコメントで締めくくっているのですが、今回は番外編として「アイデアトランプと同じような道具、しかも、自分だけの発想の道具として作るには」という切り口で、いくつかの創造工学的な道具作りのアプローチ方法を紹介します。

 この方法に沿って進めれば、あなただけの独自のアイデア発想道具が手に入りますよ。簡単ではないのですが、原理的には誰にでも可能です。

(1)たくさん集めて、網羅性を高めるカード

 アイデアトランプは、いくつかの発想トリガーを取り入れています。ベースにしている発想トリガーは「SCAMPER」で、そこに「TRIZ」(工学的な発想の手法)のエッセンスを追加し、トランプの枚数である52個の発想トリガーにまとめました。

 SCAMPERやTRIZは(1)ビジネスや生活系のテーマ(2)製品や技術系のテーマに対して、高い網羅性を持つ発想観点セットです。その中から、アイデアトランプに含むトリガーも、高い網羅性を持つようにトリガーを選択しました。

shk_idea03.jpg

 さて、ではこのアイデアトランプのような発想道具を自分オリジナルで作りたい人はどうすればいいか。「自分の領域は、ビジネスアイデアでも技術アイデアもないからなあ」という人もたくさんいます。そういう専門性の高い領域でのブレストをする人は、次の手順で独自のものを作るといいでしょう。

  • 面白い事例や切り口を大量に集める。目標は200個

 例えばゲームであれば、まず面白いゲームのどこが面白いのかを書き出します。1人で考えるのにいきずまったら、人に聞いたり、1つの要素を1つのカードに描いていって布袋にほおり込んだりするのもいいでしょう。あるいは例えば飲食店のメニューを考案する人ならば、外で見つけたいろんな「はっ」としたおいしいものから、同じようなものができます。塾の先生であれば、面白い指導方法、街中で見かけた面白いい知識の伝え方、というものを集めれば同様にできます。

 それが200個を超えたら、次は分類です。今出したものの中には、本質が似ているものも複数あるはずです。そうしたものを束ね、最終的には束が40〜50ぐらいになるようにします。

 その後、それらを代表するコンセプトをできるだけ平易な言葉で(できれば20文字以下で)表現します。そのカードを一番上にして輪ゴムで止めておきます。見た目は手作り感満点ですが、あなただけのオリジナルの発想の切り口になります。

 なお、発想の切り口を分類する場合「もれなく、ダブりなく分けたい」と思いがちですが、それはある程度配慮しつつもぐっとこらえて、むしろ「発想しやすい切り口」という観点で、分けていきます。できる限りダブりをなくす作業は分類学的に正しいですが、着想を引き出す道具としてはそそりが鈍くなってしまいます。

(2)リストではなくカード、文字数は20文字以下を

 「発想を助ける道具」というのは、表し方や形状によっても発想の効果が変わることもあります。もちろん完全には言い切れないので、以下は1つの目安として聞いてください。

 例えば(1)でまとめた50を書きとって「リスト」にして持っておく、というのは、何もないよりはずっとよいです。しかし、できれば「カード」にしてください。発想トリガーが発想を引き出す力は「全部がぎっしり乗っているリスト」よりも「1カード1フレーズ」の方が、強いです。

 より簡単に集中でき、発想作業がはかどります。通常私たちの頭は、ずらっとならぶ文章の中で、目的の部分以外が目に入っても処理を行わないように頭の中で情報処理を抑制しています。発想の際に、1カードに1フレーズならば、非常に少ない選択的注意ですみ、発想作業にすっと入れるのです(もちろんこれは個人差のあることで、1つの経験則であるというべきですが)。

 よって正確に言えば、カードでなく、A4紙の中央に1フレーズでも結構です。文字の極端に少ないスライドを見たときに、ふっとそこからイマジネーションを引き出されるようなことがありますが、1つにはこういう側面もあります。

 なお、文字数は20文字以内を目指します。これはいろんな発想カードを作ってきたか中で得た1つの経験則です。人が一目でぱっと瞬間に読み取れるようにするには、このぐらいの文字量までが頃合いがよいようです(発想の道具に限っての話ですが)。

(3)常に“新種”を発見する

 発想の素材は常に集めます。新しい要素が増えてきたら、50個に束ねたものに無理なく入るなら入れていき、どれにも含まれない発想の切り口(※)が見つかれば「新種発見」として51番目のカードにします。新しいカードが増えてきたならば、全部をばらし、組みなおして40〜50の間に再度束ね直します。

 なお、常に50前後に保っておくのは認知飽和という問題があるからです。一度に頭が別のものとして理解できる観点はそのぐらいが上限で、それ以上にしても「他に見た観点に似ている」として、別の観点を形成しなくなります。

(※)なお、本記事の編集時に担当の上口さんから「どれにも含まれない発想の切り口」について「具体例があれば教えてください」と言われました。

 これについては、アイデアトランプと同じ水準で、もう1枚私が加えられるならば「それは初めから製品に入れておけよ」とユーザーから言われるでしょうし、実際、今の時点では私にはありません。

 アイデアトランプは「ビジネス系のSCAMPER」と「技術系のTRIZ」を組み合わせて作っていますので、ある種のレイアーにおいては、発想の切り口という概念空間においてかなり網羅性が高い状態になっています。

 ユーザーが自分で加えるカードがあるとすると、その人の普段の考え方が強く反映されているものになるでしょう。トランプの中には似たカードがあるものの自分のエッジが立っている切り口はこうなんだよな、という感じに例えば「減らす」じゃなく「3分の1にする」。また例えば「誰かと一緒にやる」じゃなく「異なる職能の人同士を組ませる」など。

 「なんだ、それじゃあ新しい観点じゃないじゃないか」と別の人は思うかもしれませんが。しかし先に述べたように、発想の引き出しとしてそそりがあるように作ることが重要であり、それでいいのです。

 あるいは、全く新規に作るならば「極端な使い方をしている人から示唆を得る」でも「競争の要素を取り入れる」でもいいでしょう。それぞれ、エクストリームユーザーやゲーム化要素パターンなど、発想の引き出しとしてレイヤーが違いますが、どうしてもこれは入れておきたい、というのは知的道具を好む人であれば、1つや2つあるでしょう。それを子供で分かる言葉へならして書き込んでください。あなたと一緒にそれを使う人は自然とその概念を親しむようになるでしょう。



 以上です。私が所属するアイデアプラントでは、ビジネスパーソンの発想を支援する道具を作るチームとして、なるべく多くの人が発想をより良い体験にできるようにする道具を作っています。

 ただ道具というのは、使い込み熟達すればいずれ標準仕様では窮屈になり、また、物足りなくなります。ぜひ自分しか持っていない武器を作り、企画的な仕事を力強くより短時間で駆け抜け、どんどん先へ進まれることを心から祈っております。

(補足)なおアイデアトランプには、2枚のジョーカーがあります。使い込んでいくうちに「トランプにはないが、この観点はすごく重要なのでセットに入れたい(=その人にとっての新種発見)」というときに書き込むためのものです。自分の重視する発想観点を書き込んでオリジナルセットとして使ってもらえたら何よりの幸甚です。

石井力重(いしい・りきえ)さんプロフィール

st_ishiirikie.jpg 石井さん近影

 1973年、千葉県生まれ。東北大学大学院理学研究科修士課程卒業。技術系商社から東北大学大学院博士課程(MOT専攻)、独立行政法人のフェローを経て、2009年4月にアイデアプラントを設立。現在は「ブレスター」「智慧カード」などアイデア創出支援ツールの企画開発、企業・団体向けの新事業・新製品開発支援、さまざまな創造技法を紹介するワークショップなど、多彩な活動を展開している。2011年6月には、東北地方のビジネス活性化と震災復興を目指す「Fandroid EAST JAPAN」を設立、同理事長に就任。仙台を拠点に、Androidアプリ開発技術者の育成と能力向上、アプリ関連ビジネスの活性化に尽力している。Webサイトは「石井力重の活動報告」


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