こんな文具が欲しい――過去に出たアイデアをPUSHするノートアイデア発想実践記(2/2 ページ)

» 2012年06月06日 18時20分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]
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 結果として出せたアイデア数には不満はあったものの、シェアしてみると盛り上がったアイデアもいくつかありました。アイデアを出すという記事の目的は崩壊してしまったのですが、今回は議論から発想が生まれた、言い方を変えれば、応用力が身についてきたのだとポジティブに考えることにします。以下、評価の高かったアイデアと盛り上がった内容について列挙していきます。

アイデア1:過去にしたためたアイデアを無駄にしないよう、PUSHしてくれるノート

 1つ目は、鷹木さんが考えた「過去にしたためたアイデアを無駄にしないよう、PUSHしてくれるノート」です。これは「仕事がデキる感」×「繰り返し使える」のマトリクスから生まれました。

 このアイデアについては「Evernoteで事足りるのでは?」という意見も出たのですが、「でも、Evernoteでは今取り組んでいる課題に連動したアイデアをプッシュしたり、リコメンドしてはくれない。欲しいのは、過去のアイデアの中からハマるものを通知してくれる機能(とか仕組み)的なもの」という説明で、一同納得しました。

 デジタルかアナログかの方法論は別として、日ごろアイデアを出しては寝かせておき、いつか使おうと思いつつも結果お蔵入りさせてしまう全員から深い共感を得ました。

アイデア2:名刺の立体駐車場

 2つ目は、名刺の立体駐車場。発案者は上口さんです。「仕事がデキる感」×「倒れない」で考えたアイデアでした。

 本人いわく、大量の名刺をセットできるタワー型名刺入れのようです。単に保管できるだけでは面白くないので、検索もできるとよい。検索すると、名刺の束が音を立てながらグワーッと回転して、何となく仕事できる感を演出できそうとのこと。

 名刺はデータ(もしくはクラウド)で管理する時代になりつつあり、時代に逆行しているし、実用性もやや疑問ではあるけど、豪快なアイデアということで高評価でした。

アイデア3:デスク上のお菓子をすっぽり隠せる「オトコの菓子箱」

 続いては中山が考えた、デスク上のお菓子をすっぽり隠せる「オトコの菓子箱」。「仕事がデキる感」×「ゴミが出ない」という発想です。

 デスクでお菓子を食べるとき、パッケージがデスクにドーンと置かれているのは子供っぽいというか、プロらしくない。ビスケットやガムなど、パッケージから取り出して、しまっておけるケースがあると、心置きなく食べることができる、というものです(もはや文具じゃないけど……)。

 一見、お菓子が入っているとは分からないし、ビジネス文具っぽい見た目のケースなら。人目を気にしてデスクで食べることをためらっていた人を新たに取り込めるのではないかという狙いもあります。名付けて“オトコの菓子箱”(命名者:鷹木さん)。オフィスグリコや、販促グッズに検討したらよさそうです。

アイデア4:タスクを書き込める(ジェンガのような)積み木式ToDoリスト

 4つ目は、こちらも中山の案で「タスクを書き込める(ジェンガのような)積み木式ToDoリスト」。「遊び心&オシャレ」×「繰り返し使える」から考えました。

 ToDoリストは紙に書く場合が多いですが、それを立体化してみた案です。書いては消せる素材で表面加工すれば、繰り返し使える。その日のタスクを書き込んで、デスクに積み上げておき、終わったらだるま落としのごとく1つ1つ取り壊していく……。達成感をビジュアルで感じられるToDoリストですね。

 部署単位で使えば、誰が何をやったかすぐ分かるし、ゲーム感覚で取り組めそうです。極めてアナログだけど、遊び心があっていいかなと思い発案しました。鷹木さん、上口さん両方から「欲しい」という声をもらえたアイデアです。

無理に2要素を組み合わそうとせず、他の手法も使ってみては?

 最後に、今回のマトリクス法で学んこと2点と、各メンバーのコメントを書きとめておきます。

(1)2つの要素を同時に満たそうとするのはエネルギーの無駄?

 今回、最大の誤算だったのが「2つの要素を同時に満たすことにエネルギーを使い過ぎてしまった」だと思います。異質の要素がぴったりはまる回答なんて、そうそうとっさに出てくるものではありません。2つ満たせないなら、潔く1つの要素だけに集中すればよかったとちょっぴり後悔しました。

(2)やってダメなら他の手法と組み合わせてしまえ

 私と鷹木さんがそうだったのですが、マトリクス法でアイデアが出なくなってしまったとき、その手法にとらわれず、SCAMPER法とTRIZ法の要素を取り込んで(何を代わりに使うことができるか? とか何か他に、これに似たものはないか? など)という質問項目を勝手に脳内再生しながら、取り組みました。

 もうこの時点で今回の記事の目的が崩壊してしまっているのですが、アイデアが出ないことには(議論が)始まらないので、こうしました。まあ、言い方を変えれば、応用力が身についてきたのだとポジティブに考えることにします。


中山

やってみて感じたのは、マトリクスの軸となる組み合わせの要素がキモになるということです。発想前は「いける!」と思っても、実際に試してみるとそうでもなかったり。軸がおざなりすぎると組み合わせもありがちになるでしょうし、かといって斬新すぎてもそもそもの発想が難しくなる……という葛藤を感じました。


鷹木

「心理」と「機能」で5×5のマトリクスから考えたわけですが、思った以上に難しかった! いきなり「Web連携×PCを壊したくない」って出た時、「うーん、クラウド型のオンラインバックアップサービス?」ぐらいしか浮かびませんでした。組み合わせからして悩んじゃうので「時間制限なしでぼんやり考えながら」の方がアイデアを深められるかもしれませんね。


上口

2つの要素をうまく絡めようとして行き詰ってしまった感があるので、他の2人のように過去にやった発想法からアイデアを考えてみる、のもやってみればよかったと反省です。マトリクス法自体は最初の要素決めが結構重要になる気がしました。


石井さんコメント

 マトリックス法の本質は、創造工学的に言えば「アイテマイズレスポンス(項目立てて対応すること)」です。発想に関する特性の1つに「頭は広すぎるテーマでは発想力を働かせにくい」というものがあります。皆さんも、ビジネスやWebサービスを考える時に、対象の範囲をある程度、小さく区切ると具体的に発想も湧いてくる、そういう経験ありますよね。

 例えば、新しいアプリの企画を練る時に「同じようなサービスは既存にいくつかあるけれど、どうもまだ未充足というか未踏エリアとアイデアがありそう……」そんな時です。

 これをマトリクス法で解決する場合、まずは必要な2軸を選びます。例えば、1軸はユーザーの利用時間帯(早朝/朝通勤/オフィスタイム/昼休み/飲み会/帰宅/自宅リラックス時)、もう1軸は、1回の利用時間(3秒/20秒/3分/10分以上/1時間以上)です。どういう軸を選ぶかは、その人のセンスがかかってきますよ。

 そして上記2軸をマトリクスに書いてみると、意外なセルがあることに気付くでしょう。それらに自分たちの初期のコンセプトを当てはめてみて、具体的に書いていくと、いろいろな形の具体的なアイデアに分化するでしょう。

 「あれ、このオフィスタイム×1時間ってところに俺たちのアプリのコンセプトを当てはめると、逆にさ……」「自宅でリラックスしているときに、3秒かあ。忙しい操作じゃダメなはずだから、だとしたらこのアプリは1操作しか受け付けない形で具現化するべきだから、例えばさ……」のようにです。

 発想の軸を小さくちぎると、具体的に考えられるようになる。それは、発想会議や1人ブレストでも、アイデアマンは無意識のうちにしていることです。

 マトリクス法の本質はそうした「小さい箱に押しこめると、人間の想像力は爆発する」ところにありますので、気楽に使ってみてください。

 今回の記事では、心理、機能などを軸の候補としていました。それは、軸をうまく選べないときには選定ガイドになるでしょうけれど、発想法というのは本来あなたの使いたいように我流に変えて使うほうが良いので、「参考にする」ぐらいにして、わがままに使ってください。私が先に挙げたケースでは、2軸ともある意味「時間概念」です。対象物をちぎりるやり方は「これはこうちぎりたい!」と思えばそれが正解でいいんです。

 例えばこんな使い方も――。マトリックス法を高度に発展したある創造技法専門家にレクチャーをしてもらった時の話を紹介しましょう。彼は、1軸を、普通のマトリクス法と同じくしていて、もう一方の軸には、ランダムな「画像」を5枚ほど選んで入れる方式をとっていました。記事で言えば、一方の軸は「心理」で、もう一方の軸には「白クマ/やきそば/飛行場/炭酸水/風船」の写真を例えば入れます。このマトリクスで発想すると、かなり楽しい感じでアイデアが出ます。

 また別の方法として、私からも提案したいのは、1つの軸には「心理」を入れ、もう1つの軸には「逆にしたら/拡大したら/……」というSCSMPER法の問いかけ、あるいは「片手で使える/間違っても戻せる/……」など、ユニバーサルデザイン要素を入れるスタイルもいいでしょう。ぜひ機会があれば試してみてください!


 次回は「こんなスマートフォンアプリが欲しい」というテーマでアイデア発想をしていきます。ぜひお楽しみに!

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