コラム
» 2012年06月26日 17時30分 UPDATE

正しく怖がる第一歩:人手が足りない!――震災直後と変わらぬ“警戒区域”

4月16日に福島県南相馬市、双葉町など、福島第一原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」(=立ち入り禁止区域)が解除。筆者はさっそく警戒区域内のボランティアに参加してきた。

[まつもとあつし,Business Media 誠]
st_bv01.jpg iOSアプリ「震災記憶地図」で南相馬市沿岸部の津波直後の地図を表示したところ

 4月16日に福島県南相馬市、双葉町など、福島第一原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」(=立ち入り禁止区域)が解除された。こちらの記事で紹介したように、飯舘村など引き続きホットスポットが点在し放射線量が高い地域は「帰宅困難区域」として立ち入りを制限している。しかし沿岸の一部地域は「居住制限区域」ではあるものの、立ち入り許可は不要になった。

 筆者が南相馬市を訪問したのは2011年8月以来。立ち入り許可が不要になったこの地でボランティアに参加した模様をお伝えする。

放射線量は下がっている

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 2011年5月、連休を利用して被災地にボランティアに向かったという人は多い。筆者もその1人だったが、4月に立ち入り禁止が解除されたばかりのこの地域は、写真のようにそのころの状況とほとんど変わらない。津波で大きな被害を受けたこれらの地域。最近まで立ち入りを制限していたということは、被害を受けた建物の修復やがれきの処理はもちろん、行方不明者や遺体の捜索もなかなか進まなかった――ということを意味する。

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 福島第一原発から20キロ圏内ということで「放射線量は大丈夫なのか?」と心配する向きもあると思うが、取材の際携行している線量計(radTEST)では都内と変わらないレベルの放射線量だった。iPhoneと接続してGoogleマップに計測値を記録できるradTEST。今回計測した値はこちらのマップに投稿。ただし、当日が雨だったこともあるが、1分間計測したところでは、0.45マイクロシーベルトという値を計測した

 警戒区域を解除した場所ではいくつかのボランティア団体が活動しているが、今回は「福興浜団」に同行した。南相馬市沿岸部の地元消防団を中心に結成したこちらの団体は、警戒区域解除後すぐ同地区での捜索やがれき撤去などの活動を開始。Facebookページも開設し、広くボランティアへの参加を呼びかけている。

記事修正 6/28 2:00 記事初出の見出しは「放射線量は都内と同等」としておりましたが、紹介しているエリアでの線量は約0.45マイクロシーベルトと比較的高い値でした。そこで見出しを修正し、写真のキャプションに「当日が雨だったこともあるが、1分間計測したところでは、0.45マイクロシーベルトという値を計測した」を追記しました。(編集部)

電気の通じていない場所でのボランティア

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 朝9時に南相馬市原町区にある道の駅に、県内外から集まった約40人のボランティアは、車で移動し、海岸の捜索を始める。海岸には今も津波の“痕跡”が打ち寄せており、そこに遺骨や遺品などが打ち上げられていないか、養殖網の残骸などを取り除きながら、目をこらして歩くのだ。

 1時間ほどの捜索の後、いくつかの班に分かれ福興浜団に依頼のあったお宅へ。倒壊を免れた建物も1階部分や庭には津波によって運ばれた土砂やがれきが積み上がっており、それを取り除く作業に追われる。警戒区域の中のお宅はこのような状態に1年以上あったのだ。当然ながらこの状態のお宅には電気は通じていない。作業は人力と発電機などを伴った機械によるものだ。

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 スコップで土砂やがれきを取り除き、一輪台車で屋外に積み上げて行く。庭では伸び放題になった雑草をガソリンエンジンの芝刈り機で刈り取っていく。拭き掃除ができるようになった屋内からは、発電機につないだ掃除機で砂埃を吸い取っていく。10人ほどがかりでも1軒の清掃を終えるには1日を費やすことになる。

 室内のがれきや土砂を取り除いていくと、食器や写真などの品々が姿を現す。こういったものを、自宅に戻った人が扱いやすいように洗浄したり整理したりするといった細やかな作業も必要だ。

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st_bv09.jpg 大阪でデザイナーをしているという森川さん

 福興浜団の活動は基本的には力仕事だが、参加者には女性の姿も目立つ。その中の1人森川千依(ちい)さんは、普段は大阪でデザイナーとして活動している。震災直後から避難所などでのボランティアを続けてきたが、今回はじめて福興浜団の清掃活動に参加したそうだ。

 デザイナーの彼女は福興浜団Webサイトのロゴの制作も手がけている。先の記事のように、ビジネス展開を視野に入れたものもあれば、Facebookを通じて支援活動のマッチングを行う「skill stock」といったサービスも登場したりと、支援活動もさまざまなバリエーションが登場してきている。


st_bv10.jpg 福興浜団の上野団長

 「警戒区域が解除されてから物見遊山のようにやってくる人もいるが、実際人手はまだまだ足りていない」と福興浜団の「団長」上野敬幸さんは話す。活動に参加したボランティアも現地の状況を見て、繰り返しこの地に足を運んでいる人も多い。

 福興浜団では現在9月30日までの土日(延長の可能性あり)に活動を行っている。震災直後は交通網が寸断され、陸の孤島となっていた南相馬市だが、修復が進み車や代行バスなどによって以前よりも現地入りしやすくなっている。前述の通り、放射線量についても全く問題のないレベルだ。ボランティアマニュアル(PDF)などに目を通し、保険に加入するなど準備を整えたうえで足を運んで欲しい。

著者紹介:まつもとあつし

 ジャーナリスト・プロデューサー。ASCII.jpにて「メディア維新を行く」ダ・ヴィンチ電子部にて「電子書籍最前線」連載中。著書に『スマートデバイスが生む商機』(インプレスジャパン)『生き残るメディア死ぬメディア』(アスキー新書)、『できるポケット+ Gmail 改訂版』(インプレスジャパン)など。取材・執筆と並行して東京大学大学院博士課程でコンテンツやメディアの学際研究を進めている。DCM(デジタルコンテンツマネジメント)修士。2011年9月28日にスマートフォンやタブレット、Evernoteなどのクラウドサービスを使った読書法についての書籍『スマート読書入門』も発売。


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