覚えなければいけないことの多さに、疲れてしまっていませんか?説明書を書く悩み解決相談室(1/2 ページ)

「説明書を書く」のは、その分野をよく知っている人とは限りません。「雑多な情報を取捨選択し構造化して自分の言葉で表現する」ことは、自分自身の理解を深めるためにも非常に役に立ちます。今回はそんな「自分が理解するために説明書を書く」時のコツを考えてみましょう。

» 2012年07月04日 11時00分 公開
[開米瑞浩,Business Media 誠]

 アイデアクラフト・開米瑞浩の「説明書を書く悩み解決相談室」第34回です!

 この連載は「説明書を書く」というシーンで遭遇する悩みを解決することを目指していますが、最近ふと思い出したことがありました。それは、説明書は必ずしも知識のある人が書くとは限らないということです。

 よく言われる話ですが「人に教えることは、自分にとって良い勉強になる」のは確かに事実です。人に教えるためには、見聞きする雑多な情報をいったん自分なりに理解して整理しなければなりません。

 それが、単に覚えようとするよりもはるかに学習効果が高いために、教えることが自分の勉強になるわけです。そしてそれは説明書を書くときにやっていること、そのものなんですね。

 ある分野の知識をよく知らない人向けに説明書を書くためには、雑多な情報を取捨選択し構造化して自分の言葉で表現する必要があります。これをすると、書いた本人の理解が進みますから、自分が勉強するためにだけ書く、という人がいてもおかしくありません。実際、私はよくそういうことをやっていました。

 そこで今回はそんな場面、つまり「自分が理解するために説明書を書く」時のコツについて考えることにしましょう。現在は仕事が複雑化して覚えなければいけないことが昔よりも増えているために、それを負担に感じて疲れてしまっている人も多いはずです。そんなときに、「頑張って覚えよう」とする前にこの話を読んでみてください。

いかに少なく書くかが勝負!

 「自分がまだよく分かっていないことについて、自分自身の理解を深めるために書く」場合に大事なことを2つ挙げると、

  1. いかに少なく書くかが勝負
  2. 間違ったことを書いても構わない

 となります。一見すると「えっ?」と思われるかもしれませんが、どちらも理由があります。

 そもそも、よく知らない分野の勉強を始めたばかりの時というのは、膨大な情報量に圧倒されるのが普通です。これを全部覚えなければいけないのか……と気が遠くなりそうになった記憶のある人も少なくないのではないでしょうか。そんなとき「よし、全部覚えよう」とする前に「取捨選択、要約」をしてほしいのです。

 「要するにこういうことだろう!」と要約を書くためには、膨大な情報量の中からいらないものをバッサバッサと切り捨てる必要があります。この「いらない」という判断をするためには真剣に考えなければなりません。つまり「少なく書こうとすると、その分深く考えなければならない」ので、理解が進みます。

 全部覚えようという姿勢ではこの効果は望めません。丸暗記は何も考えない勉強法の象徴としてよく批判されますが、つまりはそういうことなのです。細かな情報を大量に覚えることが必要なときも間違いなくありますが、それだけでは「理解」したことにはなりません。いかに少なく書くか、が勝負です。それも、自分で考えることに意味があるので、誰かに要約してもらったものを書き写しても無駄、自分自身で要約することが大事です。

 ただ、よく分かっていない段階で要約をしようとすると、どうしても「これでいいのかなあ……」と不安になります。でも、安心してください。人に教えるためではなく、「自分自身の理解を深めるために書く」ものであれば、間違ったことを書いても大丈夫です。

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