「上司なしの職場」から考える――ボスは本当に必要か未来の人事を見てみよう(2/3 ページ)

» 2012年08月27日 16時20分 公開
[調祐介,Business Media 誠]
誠ブログ

管理者としての上司は必要、必要悪かどうかはともかくとして

 この話を受けてUPennのWharton Business Schoolでも、上司不在の職場への疑義が取り上げられています。この論考は長いのですが、以下のHarvard Business Reviewに要約が載っています。

The Boss Is Dead, Long Live the Boss(上司は死んだ。しかし上司は居続ける)

 On the one hand, says Wharton professor Adam Cobb, hierarchy-free environments are "a very democratic way of thinking about work...Everyone takes part in the decisions.

 On the other hand, an office with no boss or manager overseeing the workflow can be disastrous.

 Whartonの教授、Adam Cobb氏によると、ある意味階層のない環境は“仕事についてかなり民主的に考える方法”であり、全員が意思決定に参画するという意味合いがある。(中略)しかし一方で、ワークフローを監視する上司やマネージャーのいない職場は悲惨な結果を引き起こすことにもつながりかねない。

 結局はそれぞれが気になってそれぞれを監視することになってしまう、という臨床実験を元に説明。そして悲しげな結論として、

 At a minimum, Cobb says, bosses do provide one valuable attribute: "They are a common enemy. Workers know the opposition. When employees become self-managed, it's hard to tell if you are all working together, or if everyone is working against you."

 Cobb氏によると、少なくとも上司というものは1つの価値ある要素を提供してくれていると言います。「彼らは組織共通の敵になる。労働者は相対する敵を認識することが出来る。もし社員が自己マネジメント化されたとすると、皆が一緒に協力して働いているのか、それとも皆が自分と敵対して働いているのか、判別がつかなくなるだろう」

 とまとめています。利点はそこだけ、ではないはずなのですが。とはいえ、組織として人をまとめて成果を出していくためには、指示命令系統としての上司は必要ですし、その重要性は疑いようがないのですが(組織論に興味のある人は、例えば『組織戦略の考え方』(沼上幹著)などをオススメします)、果たして上司とはどれくらい役立っているものなのか。

上司は組織の生産性を高める鍵

 Business Insiderに掲載された論考によると、Stanford UniversityとUniversity of Utahの研究によって、

Good Bosses Are Almost Twice As Productive As Their Employees(良い上司には社員の約2倍の生産性が)

 A good boss is 1.75 times more productive than the people he or she supervise.

 良い上司は彼もしくは彼女が管理する人々に比べて1.75倍生産性が高かった。

 ことが判明したのだそう。上司の人、よかったですね。具体的には、下位10%の上司と上位10%の上司とを入れ替えて、それぞれのチームの生産性を比べてみたところ、上位10%の上司が入ったチームの生産性が、9人のチームに1人のチームメンバーを加えたものと同じくらい上がった(つまり1.75倍になった)とのこと。

 さらに、良い上司は長く使えるスキルを教え、かつスキルの高い労働者のスキルをさらに向上させることに成功したということです。

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