会社に初めて就職したときのことを、思い返してみてほしい。年代によって就職活動そのものは性質が異なっているものの「ずっとこの仕事をやるためだけに生きてきた!」なんて就職する人はいないはずである。
誰しも「やってみたい」「面白そう」なんていう気持ちで面接を受け、内定をもらって就職していく。ではこの「やってみたい」「面白そう」という気持ちは、どこからくるのか。それは目や耳に周囲から入ってくるイメージだ。
私が人材コンサルタントをしていたとき、離職理由のNo.1はイメージギャップだった。
そんなことを口々に言いながら、仕事を辞めていく。しかし、これは当然といえば当然だ。なぜなら表面的なイメージ(企業・業界研究の深さによるが)だけで、数え切れないほどの企業(あるいは業界・職種)から1社を選んでいるのだから。それこそ宝くじを当てるようなものである。
もちろん賛否両論だと思う。自分に合わないから辞める……というのは、単純に決断して良いことではないのかもしれない。しかし場所を変えて「やりたいこと」が見つかるのなら、トライしてみる価値はあるのではないだろうか。
楽器が面白そうだと思って吹奏楽部に入ったら全くダメで、運動部に転向したら一躍スーパー選手として大活躍! なんてことだって、あり得ない話ではない。仕事だって、何が自分に合っているのか、自分が「やりたい」と思えることなのかは、実際に足を踏み入れてみなければ分からないだろう。
「面白そうだから、やってみる」
十分な理由じゃないか。そう思うなら、やってみれば良い。たとえ実際にやってみてダメでも、やりたくないことを惰性で続けているよりはずっと価値ある時間を過ごせると思う。なぜなら多くの選択肢の中から「選ぶべきではないもの」を1つ知ることができるのだから。
実は私には今年5歳になる長男と2歳になる次男がいる。フリーランスという仕事柄から子供たちと過ごせる時間は多いのだが、私は彼らの行動を密かに手本にしているのだ。お子さんのいらっしゃる読者は、1日子供を外に連れ出して、よく観察してみるといいだろう。
子供たちは、実に果敢にいろいろなことへチャレンジする。大人から見れば無理と思えることだって、恐れることなく挑んでいくのだ。しかしそこから喜びや楽しみを得て、子供は成長していくのではないだろうか。
うちの長男はとにかくエレベーターのボタンを押したがるのだが「開く」を押して他の人が乗るのを待っていると、高確率で「ありがとう」と言ってもらっている。そのときの得意げな顔を見ると、彼にとって「エレベーターのボタンを押す」という行動はとてもやりがいのあることなのだと感じる。
公園でお兄ちゃんたちがボールを蹴っているのを見て「僕も蹴りたい」と言うとしよう。そのことがキッカケで、もしかしたら息子がサッカー選手になるかもしれない。8月はロンドンオリンピックが注目を集めたが、世界で活躍するオリンピック選手たちだって、きっかけはそんな「興味」からのチャレンジなのではないだろうか。
大人になると、人は勝手に自分を拘束してしまう。リスクを恐れ、一歩が踏み出せない。どこに自分にとって「やりたいこと」「楽しいこと」が待っているか分からないのに、これは非常にもったいないと思う。
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