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» 2012年10月10日 18時00分 UPDATE

文具書評:映画『天地明察』原作者が使う手帳も――JMAMの『手帳活用パーフェクトBOOK』

日本能率協会マネジメントセンターから『手帳活用パーフェクトBOOK』が登場した。手帳のガイドブックという基本コンセプトをそのままに登場した今回の本は同社の既刊とはどのように違うのだろうか。

[舘神龍彦,Business Media 誠]

 日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)は、いわずとしれた「能率手帳」の発売元だ。とじ手帳の代名詞ともいえる製品の発売元である同社はまた、手帳のガイドブックも発売している。例えば『手帳200%活用ブック』(2004年)であり『手帳300%活用術』(2009年)だった。

 そして3年ぶりに今年登場したのが『手帳活用パーフェクトBOOK』(1365円)だ。結論から言えば既刊とは異なる読みどころがあった。手帳の基本情報にフォーカスしつつ、時勢に合わせた活用方法を紹介したり、それまであまりフォーカスが当たらなかった基本的な事柄をきっちり解説している。通底しているのは、メーカーとして手帳に関する基本情報を、ユーザー側の手帳活用事情の変化に合わせつつ伝えようとする姿勢だろう。

時間管理だけじゃない、「手帳のメンテナンス」も

st_jm01.jpg 58〜59ページ。バーチカル式の記入方法実例。雑誌などの特集とは異なり、まずはオーソドックスな方法を紹介しているあたり、メーカーとしての自負を感じる
st_jm02.jpg 118ページにはおすすめアイテムも。「ココフセン」(カンミ堂)など、自社製品以外のものも積極的に紹介

 構成は、第1章「手帳を選ぶ前に」で、なぜ手帳を使うのかの必然性を再検討し、第2章「手帳を選ぶ」で、仕様やサイズ、レイアウトについて解説し、選び方を示す。そして第3章「手帳を使う−基本−」と第5章「手帳を使う−応用−」の2つのパートで具体的な記入方法や、応用方法を提示している。

 例えば、バーチカルタイプや月間ブロックタイプのの記入の実例だったり(58〜59ページ、60〜61ページ)、付せんとの組み合わせ活用だったり(114〜115ページ)といろいろだ。さらに第7章では予定管理以外の自己啓発や、コーディネイト管理、婚活、アイデアだしなどに活用する事例を紹介している。

 第4章は「手帳のメンテナンス」として、見直しや整理の効能、そして中に挟まれた物の整理や外見のきれいさを保つことも提案。この辺も時間管理を主軸とした本にはあまり見られないアドバイスだ。

 またこの種の本にはかかせない、有名人の活用事例も登場する。それがカラーページ「手帳と私」だ。例えば“戦場カメラマン”渡部陽一氏の手帳は、戦場の過酷な環境に耐えるべく、木の皮で補強しレンガやタイルでコーティングした米俵のような自家製のものだ(91ページ)。この写真だけでも一見の価値がある。

 元プロテニスプレーヤー杉山愛氏(99ページ)は、試合中、90秒の休憩時間に見返す“テニス専用手帳”が登場する。これなども、単に予定を記入するだけでなく、過去に気になったことを記入してチェックする、いわば見返しの効能の実践例だ。


st_jm03.jpgst_jm04.jpg 91ページ。こちらは渡部陽一氏の手帳。コーティングし、レンガなどを使って強化した特製の手帳は、確かに米俵のようだ(左)。99ページには杉山愛氏の手帳。試合中に見返すテニス専用のもので、これが試合に大いに役立ったという(右)

手帳と暦の関係――『天地明察』原作者・冲方丁と「能率手帳クレスト」

st_jm05.jpg 7ページにある冲方丁氏の手帳。「能率手帳クレスト」を使っている
st_jm06.jpg 公開中の映画『天地明察』(岡田准一、宮崎あおい主演、角川映画/松竹)江戸時代の暦を作った実在の人物、渋川春海の生涯を描く

 注目すべきは、手帳に関する知っているようで知らない基本情報も「手帳のことがもっとわかる」というコラムで、きちんと解説しているところだ。例えば143ページで仏滅や友引などの六曜の法則性と由来をはじめ、干支や二十四節気、雑節、七十二候についてもそれぞれ詳しく説明。これらは、手帳の重要な役割である予定管理には直接関係ないが、冠婚葬祭は六曜に大きく左右されることなどを明記している。この辺も、有名人の手帳活用書とは違い、メーカーとしてのスタンスが現れているところだ。

 単に手帳活用ではなく、その根底にある暦にもきちんとフォーカスを当てて解説する手帳メーカーとしてのスタンスが現れているのはそこだけではない。カラーページ「手帳と私」の最初に冲方丁(うぶかた・とう)氏と「能率手帳クレスト」が登場するのもその現れだろう。

 公開中の映画『天地明察』の原作者である同氏は、幼少時代を海外で過ごした経験から、中学時代に暦に興味を持つようになり、やがて『天地明察』の主人公である渋川春海(しぶかわ・はるみ/しゅんかい)を知り、その生涯を書きたいと思うようになったという。

 こうした作家の心情にフォーカスしているのは、冲方氏が公開中の映画の原作者だという以上に、手帳の根本には暦とそれに従って生きる人々の生活があることを、JMAMがメーカーとしてきちんと見据えていることの証左だ。

デジタルとアナログの使い分けはオリラジ・中田も悩み

 最近の手帳を使っている人の悩みは、デジタルツールとの使い分け。この問題にも同書はきちんと答えを用意した。やはり「手帳と私」に登場する中田敦彦氏(オリエンタルラジオ)は、デジタルなツールを一年ほど試した後に、一覧性や書いたときの感情が残るという手帳のメリットを再認識し、最終的に手帳に戻った旨のことを述べている。

 中田氏はまた、ノートはミドリのMDノートを、ペンは三菱鉛筆のジェットストリームを使用。書き込みが好きだとも書いてあり、お笑い芸人も、ネタ帳という仕事道具を真剣に選んでいることが察せられる。このほか本文の第6章でもデジタルツールとの具体的な使い分けの考え方が紹介されている。


 このように手帳の基本的な活用や周辺情報から、デジタル、アナログの各種ツールとの使い分けまで同書は手帳関連で知っておくべき情報をきっちりまとめてある。手帳に関する悩みがあれば、最後の第8章「手帳お悩み相談室」を参照すればいいだろう。

 惜しむらくは、参考文献リストがなかったことだろうか。手帳を活用しようとする人ならよくご存じのように、手帳関連の書籍にはたくさんの既刊がある。そして『手帳活用〜』もそれら既刊からの影響がそこここに見える。

 であるのなら、同書を読んだ手帳初心者の人々がよりディープな一次情報にアクセスできるように、それらの手帳関連書やそれ以外の本(例えば暦関連のもの)などのリストがあればより役立つものになったのではないだろうか。

 ともあれ、現時点での手帳活用に関するいろいろな情報が得られる。その意味では同書はまたとないガイドブックだと言えるだろう。

著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

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 手帳評論家・デジアナリスト。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売


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