“言うことが変わる人”へのいなし方とキレ方出世するキレ方(3/3 ページ)

» 2012年10月31日 09時00分 公開
[楠元博丈Business Media 誠]
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キレ方:前の意見をボロカスに言う

 振り回される側の気持ちを考えない島岡さんに最も困らされてしまうのは、意見が二転三転したのちにまた元の意見に戻ってくるときです。この虚無感は計りしれません。

 そんな事態を回避するのに有効なのがこのキレ方です。決定が変更された瞬間、前の意見をボロカスに言って、意見を戻しづらくさせましょう。強く言い切れば言い切るほど島岡さんは意見を戻しづらくなるのです。

 ボロカスに言われているのが、過去とはいえ自分の決断なので、島岡さんが怒ってしまうのでは、という心配については、現在の意見に強く賛同しているがゆえというスタンスさえ貫き通せば問題ありません。

 振り回される側を代表してこれをすることで、周囲はあなたを頼れる人だと感じることでしょう。

島岡 実際に舞台下見したら思ったほど広くなくてさ。舞台監督もボディボードくらいがいいんじゃないか、って言ってたからボディボードにしてくれない?

 そうですよね! やっぱりボディボードだと思うんですよ!

 サーフボードだと明らかに大きすぎて出演者も動きづらくて面倒くさそうですもん! しかもサーフボードである必要性は皆無ですもんね〜。考えてみればサーフボードという選択肢自体がやはりあり得ないですよね〜。

 まずは「やっぱりボディボードだと思うんですよ!」と、島岡さんの意見に強く同意しています。これによって「私は島岡さんの味方ですよ」と表明しているのです。

 それから「サーフボードが大きすぎる」「サーフボードは出演者に迷惑をかける」「サーフボードである必要性は皆無」「サーフボードという選択肢自体がやはりあり得ない」と次から次にサーフボードのことをボロカスに言っています。

 最初に強く賛同してもらった手前、島岡さんは面と向かって腹を立てることもできず、何とも言えない気持ちになることでしょう。

実用例(島岡上司が社員旅行の行き先を変えたいと言い出した)

島岡 今度の社員旅行の件なんだけど、韓国じゃなくてやっぱりベトナムにしよう!

 ベトナム! いいですね!

 韓国はちょっとベタすぎますもんね。思えば韓国に行こうという発想はやっぱちょっと面白味がない人の発想ですもんね。

 みんな言ってましたもん。社員旅行で韓国は芸がないって。

 ここでもまずは「いいですね!」と強く賛同してから、賛同し過ぎるがゆえに過去の意見をボロカスに言ってしまう、というスタンスを貫いています。「ベタすぎる」「韓国という発想はやっぱちょっと面白味がない人の発想だ」とあの手この手でコケにしていますが、例によって島岡さんは面と向かって腹を立てることができないのです。

 最後には「みんな言ってました」と、大勢の意見をバックに「韓国という選択肢は芸がない」と言っています。「実は陰でみんなが言ってた」と言われることで島岡さんのプライドが傷付くことは間違いありませんが、その怒りの矛先がこちらに向くことはありません。

 ほかにも、

  • 正直、悪い意味で想定外の決定でしたもん。
  • 前の決定でいこうと思ってたなんて今思うと笑えてきますね。
  • あの決定はもう少しで島岡さんのブランドを著しく汚すところでしたよ(笑)。

 なども上手なボロカス表現です。

出世するキレ方』(楠元博丈著)

出世するキレ方

 ビジネス現場で使える「スマートで賢いキレ方」(怒り方)を実践会話例を交えて紹介したビジネスコミュニケーション実用書。『夢をかなえるゾウ』の著者、水野敬也氏による初の編集本。

 人生で一度はキレたいと思ったことが誰にでもあるはずです。ただキレるという行為はさまざまな意味でリスクを伴い、一歩間違えれば致命的になりかねません。本書では代表的な『嫌な人』を21のタイプに分類し、彼らに対して、自分の立場を危うくするどころか周りを味方につけ、それでいながら自分のストレスも発散できる、そんな「スマートで賢いキレ方」を紹介しています。さらに、『キレる』ことにそれでも抵抗を感じる人が使えるように、『キレ方』と同時に『いなし方』も紹介してあります。


楠元博丈(くすもと・ひろたけ)

鹿児島県生まれ。大学卒業後、バラエティ番組の構成を手がける構成作家、舞台の脚本を手がける脚本家として活動。Twitter:@September0727


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