未来の歴史学者は「21世紀の最大の悲劇は、人類の大半が嫌いな仕事にしがみついていたことだ」と分析するだろうと、私は考えています。未来の人は、私たちが好きでもない仕事のために縛られている姿が理解できないでしょう。ですが、そんな理不尽は身近にいっぱいあります。
私たちの祖父の時代、大人の男性は徴兵制によって戦争に行き、知らない人を殺すように命令されていました。いまの感覚では信じられないことです。
私が小さい頃、戦争を体験した叔父に「なぜ、行ったのか」と聞いたことがあります。彼は、ただ「みんな行ったから、しかたなかったんだ」と苦しく、寂しそうに語っていました。そんなに恐ろしい戦場にみんなが行くからという理由で行っていたのかと、ショックを受けたのを覚えています。
私たちの孫の1人が、聞くでしょう。
「どうして、おじいちゃんの時代は、過労死のリスクもあるのに1日何時間も満員電車で通勤して、嫌いな仕事をやっていたの?」
そう聞かれて、あなたは何と答えるでしょう? 冷静に考えれば、自分のやりたくないことを長期間やるのはあまり健康的ではありません。一種の精神的虐待だともいえるでしょう。
もし、自由意思に反して、誰かを監禁して無理矢理労働させていたら、それをした人は監禁罪で逮捕されます。しかし、本人が自分の大嫌いなことを長時間やっていても、それは犯罪にはなりません。加害者と被害者が同じだと犯罪が成立しないのは、よく考えると不思議です。
私は、嫌いな仕事をやるのは自分への虐待だと考えています。あなたはどれだけ、自分を大事にしているでしょう?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.