上司のやる気を高める方法――部下ができるいくつかのこと田中淳子のあっぱれ上司!(3/3 ページ)

» 2012年12月06日 09時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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分かってくれる人がいた

 そういえば、私が以前仕事でご一緒させていただいたある組織で、部下に怖れられている名物マネージャーのTさんがいた。部下がいつも「Tさんは、本当に怖い。ちょっとしたことでも細かく突っ込んで来て、ホッとする間もない。品質へのこだわりは一切妥協しないし、いい加減に許してくれと思うこともある」と嘆いていた。

 そのTさんとも親しかった私は、彼がどういう思いで仕事をしているか、よく理解していたので部下たちが上司についての愚痴をこぼす際、「そうはいっても、そのこだわりがあるからこそ、いつもよい仕事ができているんだよ」とフォローしていた。Tさんも自分がうるさいと思われていることは重々承知していた。それでもプロとして妥協したくないという一心で、自分にも部下にもかなり厳しくしていたのだと思う。

 何年かしてこのTさんはその組織を去ることになった。「あのマネージャーの元で働くのは大変!」と愚痴っていた部下たちや以前の部署の元部下たちが総出で送別会を開いた。その席で、隣り合った中堅リーダークラスの元部下がTさんにこんな風に語ったそうだ。

 「若いころ、Tさんと仕事していた時、正直言って細かいし、しつこいし、嫌だなと思っていた。でも、ああやって細かいことまで指導されたことが今の自分の糧になっていて、それに今思えばTさんと仕事をしていた時が一番楽しかったです」

 これを聞き、Tさんはいたく感動したという。「分かってくれる人がいたんだなと思って、ちょっと嬉しかった」と言っていた。

上司も褒められたい

 上司だって褒められたい。感謝もされたい。認められたいのだ。部下は上司に注文を付けるばかりではなく、「上司だからやって当たり前」と思うのではなく、上司がしてくれたことにもう少し目を向け、「助かりました」「ありがとうございました」と伝えてみてはどうだろうか。それだけで、上司も元気になり、勇気が沸き、自信を持てるようになる。

 どんなに自信満々に見える上司でも、たいていの場合、内面はそれほど自信を持っていない。もし他者からの承認も得ていないのに自信満々の上司がいたならば、それは「根拠のない自信」である可能性がある。「根拠のある自信」は、他者からの承認によって得られるものだ。上司のさらに上司も部下である「マネージャー」をもっと意識的に褒めてやってほしいと思うが、より身近で褒めることができるのは、実は部下なのである。

 人間が一番がんばれるのは、他者から褒めたり認められたりした時だと思う。それは部下も上司も同じなのである。

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著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


  • 著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など
  • ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!
  • Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko

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