“昭和上司”にならないために、彼らから学ぶべき3つのこと若手社員のうちに学びたい、「上司力」入門(2/3 ページ)

» 2012年12月13日 08時00分 公開
[吉田実,Business Media 誠]

「対話」が組織にもたらすもの

 この「巻き込み対話力」が高い上司がいる組織は、組織メンバーの関係性が良い。お互い「ぶっちゃけ話」ができる関係がある。「こんなことを言ってもいいのだろうか?」とヘンに気を使いあうことがなく、職場の問題やお互いの至らぬ点も気軽に伝えあえることができるのだ。そして社員同士が助け合い、結果として組織としてのパフォーマンスが上がっていく。

 先日、あるIT関連の企業の新入社員のOJTトレーナーを担当している人を対象にした研修の講師を担当させていただいた。驚いたのは、朝、集合してきたときにお互いに全くあいさつをしない。休憩時間になると、皆が一斉にPCを開いて仕事を始める。昼休みも同様である。仕事熱心なのは、素晴らしいのだが、誰も研修で一緒になったメンバーとコミュニケーションを取ろうとしないのである。

 このような会社の社員に限って、職場の問題を上げてもらうと「情報共有ができていない」とか「人間関係が良くない」という問題意識が出てくる。当然である。誰も周囲の人とコミュニケーションを取ろうとしないのだから。

 最近、職場での席が隣同士であるにもかかわらず、その人とメールでコミュニケーションを取る人がいる。一緒に働く人と、自ら壁を作り、心のつながりを断絶してしまっている。効率的には仕事が進むかもしれない。しかしながら、対話が失われた職場においては、お互いのつながりを感じることができずに、結果的には生産性が落ちていくことになる。

 米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)の教授にダニエル・キム氏が提唱している「組織の成功の循環」をご存じだろうか? 「関係の質」を高めると「思考の質」が高まり、思考の質が高まると「行動の質」が高まり、行動の質が高まることで「結果の質」が高まるという考え方である。結果の質が高めることで、また「関係の質」が高まるという循環が生まれるというものである。

 好循環は、以下の5つの流れでつくられる。(1)お互いの関係性が良く、認め合っている→(2)対話を通して良いアイデアやお互いを助け合う思考が生まれる→(3)新たな挑戦や助け合う行動が生まれる→(4)売り上げや成績が向上する→(5)さらにお互いの関係が良くなる、という循環である。

 結果を出すには「関係の質」を高めることが重要で、関係の質を高めるには周囲を巻き込む対話力が不可欠なのだ。

仕事の中にコミュニケーションの場を埋め込む

 対話を推進していくことで、結果が向上していくのだから、上司は積極的に対話を推進していくことが求められる。とはいっても、忙しいのが世の常。できれば、対話が生まれる仕掛けを仕事の中に組み入れていくことが望ましい。

 例えば、会議の開始のタイミングに5分ほど「チェックイン」の時間を設けることをオススメする。「チェックイン」とは、今の状態や感じていることを素直に共有しあうコミュニケーションである。「昨日、お客さまにほめられた」といった話でも「家族でケンカをして気分が悪い」といった話でもいい。お互いの感情や背景を知っているだけで、コミュニケーションが円滑になる。「なぜ暗い顔をしているのだろう?」と変に勘ぐる必要がなくなるからだ。

 別の仕掛けとしては、毎月、誕生日を祝うような場を設けることも有効だ。誕生日をお祝いされることは嬉しいものである。祝われる方も嬉しいが、祝う方も楽しい気持ちになるものだ。このほか、月曜日の朝、10分間だけでもいい。全員で職場の掃除をする時間を設けることも一案である。掃除をしながら、ちょっとしたコミュニケーションを推奨する。週末にあったことなどを少し共有するだけでも、お互いの距離感が近づくものだ。

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