誰でもジョブズになれる「常識のはずしかた」 新規事業アイデアの授業

新規事業の開発に携わってきた筆者がこれまでのノウハウをまとめたのが今回の集中連載「新規事業アイデアの授業」です。初回は「常識のはずしかた」。

» 2012年12月13日 17時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 長らく新規事業の開発に携わってきた筆者ですが、新しい製品やサービスの優れたアイデアを効率的に生み出すためのアプローチ方法をまとめました。この集中連載は、そのエッセンスを抜き出したものです

“Think Different”になるための準備運動

 誰もがジョブズのようなイカした製品や事業アイデアを作る才能を欲しいと思っています。しかし、ジョブズが特にビジネスの英才教育を受けたかといえば「NO」です。大学を中退し、禅寺で暮らし、コーラのキャップを拾い集めて生活していたくらいですから、いわゆるエリートとは程遠いでしょう。

 では、ジョブズのアイデア力と私たちの間にある境界はなんでしょうか? それは、アップルが1997年に全世界で放送したテレビCMキャンペーンのスローガンそのものです。「Think Different」――。


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 つまり、従来の固定観念や古いルールにとらわれない自由で新しい考え方ができるか、どうかということなのです。ジョブズのすごいところは、それによってイノベーティブで野心的な製品アイデアを思いつき、業界のしがらみや慣習にとらわれることなく、最後まで成し遂げるタフさなのだと思います。

あなたの頭の硬さを知るテスト

 自由な発想のためには、頭を柔らかくしておく必要があります。まずは、肩慣らしとして、あなたの頭の柔軟性を見るテストをしてみませんか? 次のロゴを見てください。さあ、有名な国際運輸会社のロゴに何かほかのものは見えませんか?

 このテストをやると半数くらいの人は一瞬で「コレ!」と分かるのですが、そうでない人は何分かかっても、気づきません。答えは、そう「矢印」です。

 FedExという会社のロゴにとらわれない小さな子供に見せるとすぐに答えが出ることが多いのは、会社のロゴという固定観念に縛られて、「余白の形」という別の視点で見ることができないからです。

 その証拠に、このテストの直後に、次のロゴを見せると、ほとんどの人がロゴに何が隠れているのかを言い当てることができます。

 なんだか見えてきました。山の中に「クマ」が隠れていますね。ロゴの形にとらわれず、余白の白い部分の形もとらえることができると、今までと違った風景が見えてきます。アイデアマンには、私たちには普通に見える日常生活の光景が、チャンスあふれる黄金の世界に映っているに違いありません。

「あたりまえ」リストを作れ!

 「これは、こうあるべきもの」「ルールに従うと、こうだ」といった古いルールや経験による近視眼的なものの見方は、自分自身が作り上げたものです。しかし、なかなか自分で気づくことはできません。だから、「意識的に」固定観念をとりのぞく必要があるのです。

 新規事業アイデアを考える人におすすめしているのは、自分の会社、自分の業界、自分のしごとについて「あたりまえ」リストを作ってもらうことです。

 例えば、出版業界であれば「本は返品が可能」「本は紙でできている」「本は定価販売」「本は著者が書く」「本はページ数が多い」「印税がかかる」などいろんな「あたりまえ」をピックアップするのです。

 あたりまえですから、なかなか最初はピンとこないかもしれません。しかし、他の会社や業界から来た人にはビックリするようなことって意外に多いものです。長い間過ごすとどんな環境にもなれ、世間で非常識なことでも常識になってしまうんです。私のアイデアの授業では、このリストに対して「逆」「異種混合」などのフレームワークによって、新しい問題解決アプローチを実践体験してもらっています。

 いきなり、頭をやわらかくしようとしても難しいもの。まずは、自分の硬い部分、すなわち固定観念や常識というものを「可視化」してみることです。そして、「なぜ、そうなっているのか?」「ほかに方法はないのか?」といった疑問を持つことが重要です。

 次回は「ふとした時にビッグなチャンスを発見する」です。


集中連載「新規事業アイデアの授業」について

 連載「新規事業アイデアの授業」は、5年にわたる人気講演「新規事業アイデアを生み出す実践フレームワーク」(講師:永田豊志、提供:Nアカデミー)から一部抜粋し、編集したもの。

 「図解思考」シリーズや「最強フレームワーカーへの道」でおなじみの著者・永田豊志が、新製品や新サービスなど新しいビジネスを生み出すためのアイデアづくりに役立つフレームワークを解説。映像学習にありがちな受動的な視聴ではなく、「発想シート」に視聴者がアイデアを書き込んで添削を受けるというインタラクティブなEラーニングになっているのが特徴となっている。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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