高級フレンチより「俺のフレンチ」が儲かるってホント?トップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/2 ページ)

» 2013年01月16日 10時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]
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ハイ・ロー戦略VSエブリデー・ロープライス(EDLP)戦略

 ここで、2つの価格戦略を説明しておきましょう。

・常に価格を変動するハイ・ロー戦略

 1つは「ハイ・ロー戦略」。キャンペーンや特売セールなど、目玉イベント時にチラシやクーポンなどを大量配布して集客する価格戦略です。通常時とイベント時の価格が異なり、常に値段が上がり下がりするためにそう呼ばれています。

 デメリットは、値段の下がるタイミングをその都度知らせる必要があるので、別途PRコストが掛かる点です。また通常価格販売時は利益が大きいとしても、特売などの集客時は利益率が下がる(もしくは赤字になる)ため、トータルの利益率は定価販売に比べてずいぶん低くなります。

 身近な例としては、通常は高級レストランなのにお得なクーポンなどを発行して新規顧客を開拓し、その後は常連にして通常料金で利益を回収していくようなイメージを思い浮かべるといいでしょう。

 しかし、実際には顧客にとって飲食店の選択肢は山ほどあります。クーポンを使っても通常時に訪れない客も多く、その点からもハイ・ロー戦略はなかなか簡単ではありません。

・常に安い価格で提供するEDLP戦略

 もう1つは、俺のフレンチのように常に安い価格で提供する「エブリデー・ロープライス(EDLP)戦略」。この価格戦略は米国のウォルマートが採用したことで知られています。「いつ来ても安い」ブランディングで宣伝にお金をかけなくとも時期に関係なく安定的に集客できるので、PR効率がよいとされています。

 この価格戦略は、日本国内でも100円ショップ、ディスカウントストア、低価格のファミリーレストランやファストフード店など、いつ来店しても安い価格で商品やサービスを購入できることをアピールしたいビジネスで採用されています。

 ただし低価格でも収益率を確保するために、安く商品を仕入れ、低コストでオペレーションを行うことが必須となります。100円ショップは中国から、ディスカウントストアはメーカーや倒産企業などの余剰在庫を、低価格のファミリーレストランは、契約農家や海外からの大量仕入れで商品原価を抑えています。

 俺のフレンチでは、商品原価は戦略的にケチらない方針ですが、オペレーションコストを抑えるために居抜き物件で開店し、たいした装飾もせず、立食形式で顧客をラーメン屋なみに高回転させています。

 ところで、これまでEDLP戦略はディスカウントストアのような一部の業態、業種の価格戦略と思われてきました。しかし、今後は違います。俺のフレンチのように、今まではEDLPの存在しなかった領域や業界でも、新たなイノベーションによって次々にEDLP戦略のビジネスが誕生してくるはずです。

 もし、あなたが客単価1万円の高級フレンチのオーナーで、隣に俺のフレンチができたら、おだやかではないでしょう。恐らく質の面での一層の差別化をするか、値段を下げるなどの、対抗策が迫られるはずです。

EDLPと戦うために1000円でも売れるコーヒーを考える

 価格競争に巻き込まれないビジネスを作りたければ、機能ではなく、付加価値に着目すべきです。どうすればコーヒー1杯に1000円を払ってもらえるか? を考えるべきです。

 どこでコーヒーを頼んでも、コーヒー豆をひいてお湯を注いで得られる「機能」は同じです。しかし同じコーヒーであっても、マクドナルドで100円、ドトールで200円、スターバックスで300円、高級ホテルでは1000円くらいします。

 どんな風に、どんなタイミングで、コーヒーを提供すれば、顧客にとって価値が高まるのか? それを考えることが重要です。

 それに明確な回答ができるのであれば、価格競争だけではない自分なりのビジネスが成立する可能性はまだまだあるでしょう。

 いずれにせよ、中途半端が一番いけません。誰もが認めるエブリデー・ロープライスの100円コーヒーか、究極のクオリティやサービスに喜んで払う1000円のプレミアムコーヒーか。機能と価値、これをしっかり見直してどちらの戦略でいくのかを決めることが必要です。

ビジネスプロデュース力のヒント

  • これからは、いろんな業界で、驚くような価格で、高品質なサービスを提供する企業が増えていく。そんな中、あなたはどのような価格戦略をとるべきだろうか? あなた自身も革新的な方法で低価格戦略をとるのか、それとも、高付加価値で価格競争が気にならないようなハイクオリティサービスを提供するのか?

 なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグル、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。

集中連載『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』について

 本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。

  • なぜ、Amazonは「大量の小口注文」をさばけるのか?
  • なぜ、Googleは「独自の検索システム」を編み出せたのか?
  • なぜ、ディズニーランドは「夢」を売ることができるのか?
  • なぜ、ダイソンは「羽根のない扇風機」を開発できたのか?

 本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。

 「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

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